「好き」と思う気持ちが一番の原動力

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

秋山 慧斗

1.現在、どんな研究をしていますか?

私は, 人工知能の一種として幅広く応用されるニューラルネットワークについて研究しています. ニューラルネットワークは, 多次元のパラメータを含むモデルであり, その目的はどんな入力を与えても期待する出力を示すようにパラメータを決定することにあります. 世界で撮られたどんな犬の画像を与えても, ニューラルネットワークがそれを「犬」だと判別できるようにパラメータを決定したい,といった具合です. このような良いパラメータの探索は, 「多次元パラメータの最適化問題」であり, 離散的で扱いづらい問題です. 近年では, 多体系を一体系とみなす理論(平均場理論)を用いることによって, 「パラメータ分布の最適化問題」という連続的で扱いやすい問題へと書き換える研究が展開されています. 私は, これらの離散的な問題と連続的な問題を横断して取り扱い, 最適なパラメータ分布を導くようなパラメータの決定則を見出そうとしています.

2.興味を持ったきっかけは?

もともと私は, 日常を過ごしている中で目にする技術を支える数学に興味がありました. 暗号技術の背景には整数論が隠れていたり, CT技術の背景にはフーリエ変換が隠れていたり, …こういった話が大好きでした. 大学院生になった頃, 人工知能の一種であるニューラルネットワークは, 非線形部分をわずかしか持たない, 簡素な構造をしていると知りました. 構造が簡素でありながら応用は幅広いというギャップに衝撃を受けたことを覚えています. このことがきっかけで, ニューラルネットワークを関数として数学面から理解したいと考えるようになり, 現在も研究しています.

3.メッセージ

自分が好きなことや, やりたい・楽しいと思うことを, ただ純粋に追いかけ続けて欲しいと思います. 今の東北大数学科で, ニューラルネットワークの数理を専門としている方はほとんどいません. そのため私の中で解決できない疑問が生まれても, 他の誰もわからないということがあります. この期間はとても苦しく, 悲観的になることだってあります. ただそれでも, この研究課題は私が選んだもので, 心の底でこの研究を楽しいと思えているから続けられています. 「好き」と思う気持ちが一番の原動力です. これを読んでくださっている方が, 自分の「好き」に素直に, これからを過ごしていけることを願っています.