現在の地球で起こっている現象を実験室で起こっている現象と直接結びつける

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

武藤 潤

1.現在、どんな研究をしていますか?

東北沖地震から既に6年経ちましたが、現在GPSで観測されている地面の動き(地殻変動)は、東北沖地震前のそれに比べて、数十倍も速いことが知られています。このような地殻変動のことを余効変動と言って、地下の岩石の変形する様子を直接知ることのできる術として興味を持っています。岩石の変形実験と数値シミュレーションから、現在の東北日本の地下でどんな変形が進行しているかという研究を行っています。

2.興味をもったきっかけは?

物質の変形を取り扱うレオロジーの勉強を始めたとき、デボラ数という次元を持たない数があることを知りました。デボラ数は物質が変形する時間とそれを観察する時間の比であり、レオロジー的にみた固体と液体の違いは、デボラ数によって区分できます。デボラ数が大きいものは、変形する時間が長いもしくは観察する時間が短いので、その時間内では硬くて変形できない、つまり固体とみなす事ができます。一方、デボラ数が小さいものは、逆に変形しやすい流体とみなす事ができます。ものの硬さが観察時間に依存するっ!?というのが、レオロジーの複雑性を示していますが、妙に人間的だなあとも思いつつ、気に入っています。

3.メッセージ

これまで岩石は長い地質年代でゆっくりと流動変形すると(個人的にも)思っていたのですが、現在、東北地方で観察されている余効変動は地下で岩石が広域に流動することで説明ができます。つまり、現在の地球で起こっている現象を実験室で起こっている現象と直接結びつける事が可能です!これは、時空間的に大きな現象を相手にしている地球科学において、そのレオロジー特性を理解する大きな契機になると思っています。このような研究に興味を持っている人がいましたら、ぜひ一緒に研究しませんか?