東北大学には必要な環境がすべて揃っている

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

岡大地

1.現在、どんな研究をしていますか?

主に結晶性の物質を対象に、新しくて役に立つ材料を見つけるべく日々実験を進めています。結晶(クリスタル)と聞いて何を連想するでしょうか。ダイヤモンドなどの宝石を思い浮かべる人もいれば、中学の理科で習った塩のブロックを思い出す人もいるかもしれません。これらの結晶の中では数千個から時にはアボガドロ定数(約6×1023個)に近い膨大な数の原子が綺麗に整列しているので、人間の目にはきらきらとした石に見えます。人工的に並べているわけではなく、原子が勝手に並ぶのが面白いところです。私の研究分野である化学では、自然の力を借りてこちらの意図したとおりに並んでもらえるようにうまく結晶が成長する環境を用意することになります。科学者はこれをいかにも自分が並べたかのように喧伝するわけですが、実情としてはうまく並んでもらっているというように感じます。

原子にうまく並んでもらうための工夫の仕方は色々と考案されていますが、私が良く使うのは「エピタキシー」と呼ばれる方法です。原子の並び方には様々なパターンがありますので、自分が欲しい結晶と似たような並びの結晶(基板)を持ってきてその上に原子をふりかけます。すると、基板の原子の並びに沿って振りかけた原子が並ぼうとするので、読みが当たると欲しい結晶が手に入ります。できる結晶は大抵1万分の1ミリメートル程度でとても薄いので、「エピタキシャル薄膜」と呼んでいます。私が「原子をふりかける」ためによく使う方法の1つは、何もない空間(真空)の中で原子を含む原材料に強いレーザー光を照射して無理やり吹き飛ばす方法です。使う装置はちょっと「原子をふりかける」ためのものですが、私の体よりも大きい機械です。原子と並び方の種類を組み合わると数えきれないパターンが存在するので、その中から役に立ちそう、あるいは、面白そうなものを選んで実験することになります。結晶が出来上がったら、原子の並び方を観察したり、電気的な計測をしたりしてきちんと欲しい結晶ができているか、また、どのような性質を持っているのかを調べていきます。役に立つものができれば大成功ですが、役に立たなくても何かしら予想外の面白いことがあるので、がっかりせずにきちんと考えることが大事だと考えています。「役に立つ」というのは結局人間の尺度に過ぎず、他の人が試していないことに挑戦すれば必ず発見の種があるはずです。

2.興味を持ったきっかけは?

広い意味での化学は小学生くらいの頃から好きで、中学・高校の頃は化学部に入っていました。なぜか私が入部した年は個性的なメンバーが入り、顧問の先生も色々なトピックを持ってきてくれたので、楽しく過ごしていました。その後、大学で理学部化学科に進学し、固体化学を専門にしたのは大学4年生の研究室配属の時です。化学と聞くと多くの人が有機化学を連想する通り、少し他の研究室とは毛色の違う雰囲気でしたが、研究室の教授の先生のお人柄もあり、固体化学分野を選択しました。配属してからは研究室の先生方をはじめとする多くの方々に手厚くご指導いただき、夢中になって実験をして今に至ります。固体化学にしか興味がないわけではないですが、まだ試してみたいことがあるので、しばらくは研究を続けていきたいと考えています。

3.メッセージ

研究室のスタッフとして東北大学に来てから多くの学生さんにお会いしましたが、進路で悩んでいる方も多いようで、学生時代に何も考えていなかった自分に比べるとしっかりしているなと感じます。人生は取捨選択の連続ですが、妥協ではなく納得によって進む方向を決められるとあまり結果に振り回されずに済むのではないでしょうか。納得の仕方は人によりけりですが、目の前の課題にとことん取り組むのが1つの方法です。今取り組んでいることは一生続けていくことではないかもしれませんが、やり遂げる経験はその後の生き方の指針になるはずです。