美しい理論モデルを見つけられた瞬間、それがこの分野の研究者の醍醐味

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

田中秀和

1.現在、どんな研究をしていますか?

系外惑星を研究しています。我々の太陽系以外にも、他の恒星をまわる惑星、系外惑星がたくさん発見されています。これまでに発見された系外惑星は四千個以上にも達しています。銀河系には1千億の恒星がありますが、その6、7割の恒星には惑星がまわっていると我々研究者は予想しています。これほど多数の惑星が存在しているのですから、生命の居住に適した惑星も数多く存在しているでしょう。そして、実際に生命を育んでいる惑星が地球の他にも必ずや存在しているのではと考えています。系外惑星の研究は、そんな夢のある学問で、私たちに身近な天文学だと言えます。

系外惑星には、太陽系とは大きく異なった惑星が見つかっています。最初に発見された系外惑星は木星のような巨大惑星でありながら恒星のすぐ近くをまわる惑星でした。彗星のような長細い楕円の軌道をまわる巨大惑星も数多くあります。最近は、地球のように丁度よい温度環境をもち地球サイズの惑星の発見も次々と報告されています。私はこれらの惑星の起源やその形成過程を、コンピュータシミュレーションを駆使して理論的に研究しています。実は地球や太陽系の惑星の形成過程についても未だ謎が残されているのですが、太陽系や様々な系外惑星がどのように作り分けられたのか、これを統一的に説明する理論の構築を目指し研究を進めています。

2.興味を持ったきっかけは?

大学3年生のとき、当時いた大学に惑星形成を研究する新しい先生が着任しました。天文学には少し興味があり惑星も一応天文学かと思い、4年生からその先生の研究室に所属したのがきっかけです。今振り返ると軽い気持ちで始めていました。当時この分野は研究者が少なかったのですが、私が若手研究者になったころの1995年に初の系外惑星が発見され、以来惑星形成の研究は非常に盛んになりました。その時期に研究を開始していたことは大変幸運だったと思います。新しい系外惑星が次々と発見され,また惑星がまさに形成されようとしている現場の天文観測も行われるようになってきました。これらの新たな発見のおかげで、今でもフレッシュな気持ちで長く研究を続けることができています。

3.メッセージ

地球や太陽系の惑星たち、そして多数の系外惑星の観測結果を説明できる美しい理論モデルを見つけられた瞬間、それがこの分野の研究者の醍醐味です。また逆に、我々のこれまでの理論では全く説明できない新たな観測結果に打ちのめされることも多々あります。ですが、それがまた新たなチャレンジの目標となって、研究が続いていきます。若い皆さんに、ぜひこのチャレンジに参加してもらい研究の醍醐味を体験していただきたいと思います。なんだか大変に聞こえるかもしれませんが、最初は、私のように軽い気持ちで始めてみてもよいかもしれません。