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高橋隆教授インタビュー
  新高温超伝導体 MgB2 材料化のための基盤電子状態研究の業績により平成17年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術科学技術賞(研究部門)を受賞された高橋 隆教授にお話を伺いました。
  物理の素養の無い私たちに、ご自分の研究を説明するのは大変だったと思います。それでも、なんとか理解させるようわかりやすい言葉でひとつひとつ丁寧に「超伝導」 、「光電効果」の話をして下さいました。
  自分が“実験家”であることの自負を持ち続けている先生です。

高橋教授

◆インタビュー◆

―まず先生の研究について教えて下さい―


 実験系の研究室で光電子分光(コウデンシブンコウ)と言います。 どういうものかというと、アインシュタインが1905年に予言した、光を物質にあてると電子が出てくる光電効果を基礎とする実験を行っています。歴史は100年前からと古いのですが、実験装置が難しいこともあって実験法としての歴史は20〜30年です。その出てきた電子は物質の記憶をもっているので、それを調べれば物質の性質が解るという訳です。電子がなぜ重要かというと物質の性質は電子が決めるからです。例えば、色が白いと黒い・ぴかぴか光るなど。要するに“物質中で電子は夢をみている”のです。その電子を引っ張り出す方法が光電子分光です。

難しい所は?

 電子を引っ張り出すことですね。大気中では酸素や窒素分子がびっしりと詰まっているので、電子が外に出ようとしてもぶつかってしまう。私たちの作った装置内の真空は宇宙の銀河と銀河の間の真空よりも良くて、1mの 1013 倍小さい。こういう装置は世界的にもあまりなく日本でも数台しかないんです。10年位前日本で最初に作ったのはここ東北大学理学部なんです。

― 同じ研究をしているグループとの違いはなんでしょうか?―
記念1

 私たちの装置の大きな特徴は超高分解能であるという事です。ただ測ればいいのではなく、どのように精度よく測るかが問題ですから。その分解能を2桁上げた事、それが今回の成功の原因だと思います。世界最高の分解能を角度分解光電子分光装置で達成した。それによってこれまで見えてなかったものがいっぱい見えてくる事になり、いろんなことがわかってくるようになりました。光電子分光装置の一番重要な部分がエネルギー分析器で、それを5aから40aとぐっと大きくしてエネルギー分解能を2桁上げる事に成功しました。  今、物性物理の間で注目されているのは「超伝導」です。20世紀は「半導体」、21世紀は「超伝導体」の世紀だと言われています。そういうことで現在超伝導体を一生懸命研究しています。最近MgB2 (2ホウ化マグネシウム)という新しい超伝導体が発見されました。でも、これがどういう超伝導体なのかがなかなか解らなかったんです。今回この装置でこの超伝導の機構を明らかにすることができた。そういうことで受賞したのではないのかなと思います。
賞状
― 忘れられない思い出は? ―

 今から15年くらい前になりますが、高温超伝導体が発見されて世界中が超伝導フィーバーで沸き返っていた頃です。東北大で研究を始めて、角度分解光電子分光装置で測った結果、それまでの世界の定説とは全く逆の結果がでてきました。その実験結果を、いくつかの国際会議で話したんですが、誰も信用してくれなくてね。非常に苦しかったですね。いくらデータを見せて説明しても無視される。「そんなはずはない。理論ではこうなっている」と却下される。孤立無援という感じでした。半年くらいそんな状態で、ある国際会議で発表した時、いつものように何人かの外国人が立ち上がり、「データの質が悪い」とか、「分解能が足りない」とか、挙げ句の果てが「使っているパソコンが日本製だからダメだ」とか、ぼろくそに言われてしまいました。その会場には300人位いたのですが、まさに孤立無援という感じでした。ところが、最後に一番後ろの席に座っていた人が手を挙げて、「実はうちのグループも、最近高橋と同じ実験をやり同じ結果が出た」と言って、後方からトトトっと一番前に来てそのデータをプロジェクターに出したんです。そのデータは僕らのよりちょっと良かったんですが、基本的に同じで。そうしたら、会場の雰囲気ががらっと変わって、私の方が正しいということになったということがありました。  実験データというのは1個だけではなかなか信用してくれないんですね。僕らが実験を2回やり、同じ記念2結果が出たと言ってもあまり信用してもらえない。その手を挙げた人は、全く違う試料・違う実験装置・違う場所・違う人が測定して、ほとんど同じ結果を出したのです。そうすれば、それはもう正しい事になります。実験データというのはものすごく強い。その会議で、高温超伝導の研究の方向が大きく変わったと思っています。

―ここで私の研究室の紹介をちょっと(先生より) ―

 現在スタッフは全部で14名。中国やインドからの留学生もいます。みんなで、うまくチームワークをくみながら、実験をしています。卒業生で活躍している人も多くいます。光電子分光装置1号機を一生懸命作った私の一番最初の学生が、最近38歳という若さで岡山大学物理の教授になりました。また、博士課程を修了した学生のほとんどは、大学や研究所の第一線で活躍しています。
 このように卒業生ががんばっているのを見ると、私も嬉しいですね。

―最近の話題について―

  科学技術振興機構の戦略的創造研究(CREST)に新規採択されました。この研装置究資金で、新しい実験装置「東北3号機(仮称)」を作ることになりました。世界最高の性能を更新する新しい超高分解能光電子分光装置を建設します。

―将来同じ道を進む学生への激励の言葉―

 やる気だけじゃないかと思うんです。将来自分が何になりたいかということは。  やる気の持続。やる気さえあれば大抵のことはできると学生に言っています。 大学院に入るとテストの成績だけでものを判断できないですね。その研究分野でどれくらい頑張っていけるかということだから、やる気ですよね。 頭の良い人はたくさんいますが、すぐ諦めてしまったり、先が見えてしまって『こんな事やっていてもしょうがない』とか言う人がいます。でもそんな事はやってみなければ分かりません。そこが理論と実験の違いなんです。理論の人は頭で考えて『こんな事やってもだめだよ』とか考えるんですが、実験家というのはやってから考えるんです。まずやってみて、うまくできたらもうけもの。できないと思っちゃいけないんですよね。 やってみてできなかったら、できなかったんでしょう。気持ちの切り替えは楽天的になることですね。いつかはうまくいくでしょう。
  実験家にとって重要なモチベーション・動機があるんです。今自分がやっている研究は、世界で自分一人しかやっていない、自分が一番の最先端をやっているんだということです。自分が今測定しているこの実験データは、全世界で誰も見たことがなくて自分しか知らないんだ。そういうことがわかると、うきうきして非常に楽しくなってくる。そういう気持ちを学生に持ってもらいたいですよね。実験家の楽しみじゃないかな。


◆高橋 隆教授(タカハシ タカシ):物理学専攻高橋教授2
1951年生まれ。 新潟市白根(旧白根市)出身。 ここは江戸時代中期からの歴史ある「白根大凧合戦」で有名。 白根側堤防(東)と西白根側堤防(西)に中ノ口川を挟んで東西に別れ、凧綱を空中で絡ませ川に落とし綱を引き合い相手の綱を切るお祭りです。先生は毎年このお祭りのために帰省しているそうです。
1971―新潟高校卒業
1974―東京大学理学部物理学科卒業
1974―1977 電機系会社勤務(会社でも、ちゃんと研究してました)
1977―1981東京大学大学院博士課程(1981中退) 1981―東北大学理学部物理学科助手、その後仙台在住。

家族:妻(計算化学研究者、東北大学勤務)、2男1女、犬1匹

 
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