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塩谷隆教授インタビュー
  「アレクサンドロフ空間に関する一連の研究業績」により、2006年度の日本数学会「幾何学賞」を受賞されました数学専攻の塩谷 隆教授にお話を伺いました。
  この賞は、幾何学の分野において顕著な業績をあげ、その発展に著しく貢献した数学者に贈られる賞です。

塩谷教授

◆インタビュー◆

―まず先生の研究について教えて下さい―

  「多様体の崩壊とアレクサンドロフ空間」というものを研究しています。多様体とは、曲面を一般化したもので、幾何学ではもっとも中心的な研究対象です。「多様体の崩壊」では、曲率が下に有界な多様体の集まった「社会」を研究します。そのために、多様体が潰れてしまった、もはや多様体ではない「アレクサンドロフ空間」という、特異点をもった空間を研究しています。
  分かりやすく例えていうと、人間の集まった社会を研究したいとします。人間には色々な人がいて、ある意味、コンピュータのような人もいれば、動物的な人もいます。非常にコンピュータ的な人間や動物的な人間、つまり極端な人を知ることが、ある場面で重要となることがあります。そこで、コンピュータや動物を調べ、それを極端な人間を知るための手がかりにします。 ここで、多様体が人間にあたり、アレクサンドロフ空間がコンピュータや動物にあたります。幾何学ではしばしば極端な多様体を調べることが重要となります。私の研究している分野では、このような方法がとても有効です。
  最近、ペレリマンがポアンカレ予想と幾何化予想の証明の論文を発表したことが、数学の世界で大きなニュースになっています。実は、私と筑波大学の山口孝男教授との共同研究が、ペレリマンの証明で使われて脚光を浴びたのですが、これが授賞の大きな理由だろうと思います。

―受賞しての感想をお聞かせください―

  今回いただいた幾何学賞は、大学院生のころに幾何学の研究を始めたときからの夢であり憧れでした。自分より頭のよい人は沢山いて、とても自分がもらえるとは思っていませんでした。地道に努力してきた成果が実って、言葉に尽くせないぐらい嬉しく思います。
大学院生のころ御指導いただいた塩濱勝博先生と田中實先生、また共同研究者方々、特に山口孝男さんに、感謝したいと思います。


―研究をしていて嬉しかったこと、苦労したことは何ですか?―

受賞記念特別談話会

  やっぱり自分の研究をほめられたときは、とっても嬉しいです。
  数学の研究には、何をおいても集中力が求められますが、私の場合、集中力を高めるのに研究に没頭できる連続した日数を要します。そのための時間をひねり出すのにとても苦労します。

―数学の研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?―

  学部から大学院に進学したころはコンピューターに興味があり、その方面の仕事につければと思っていました。しかし、当時通っていた大学には、私の興味を引くようなコンピューターサイエンスの研究室がありませんでした。 幾何学は色々な分野の数学が融合するので、興味というよりは勉強になると思って、修士過程で幾何学を専攻しました。 よい先生に恵まれたこともあり、そこで幾何学の面白さに目覚めました。修士2年のとき、昼も夜も幾何学を考えていたら、よい研究成果が得らました。そのときとても強い満足感を覚え、幾何学の研究者になるしかないと思いました。
  運よく最初によい研究が出来たのが、きっかけと言えるでしょう。少ない知識で考えられる面白い問題を与えて下さった、当時の指導教員の田中先生にとても感謝しています。

―塩谷先生は小さい頃から数学が好きだったのですか?―

  必ずしも好きではありませんでした。大学の教員では珍しいと思いますが、小中学校のころは全体的に成績はぱっとせず、勉強は嫌いでした。ただ、数学(算数)は、小学校のころは母に、中学校のころは叔父に、丁寧に教えていただいて、そのおかげで数学の成績だけは悪くありませんでした。高校に入ってからは、数学は多少面白いとは思いましたが、「所詮、科学の道具でしかない」と思っていてました。それよりはコンピューターや物理学に興味をもって、図書館で本を読み漁ったのを思い出します。今思うと、数学という学問を何も分かっていなかった訳です。当時それを教えてくれる先生もいませんでした。
  大学へ進学するとき、成績が芳しくなくて、第一志望の情報学科はあきらめました。当時、情報学科は花形でとても人気があったのですが、文系の科目がクラスで最低レベルという自分では、どうやっても無理でした。高校で私は工業科(原子物理科)だったのですが、実験とそのレポートの作成で死ぬほど苦しめられました。 物理には興味をもっていたのですが、もう金輪際 実験をするのがいやで、実験のない理系の学科は数学科しかなかったという、非常に消極的な理由で数学科に進学しました。
  そんな調子なので、大学に入ってからも最低限の勉強だけで、熱心に取り組んだとは言えませんでした。大学院に無試験で入れてくれると言うのでなんとなく進学したのですが、入ってからは厳しくてなかなか苦労しました。本格的に数学の勉強に取り組んだと言えるのは、そのときが最初です。

―図形をみて方程式が思い浮かぶのですか?―

  思い浮かびません。逆に、方程式を見ると図形が思い浮かぶことはあります。私は幾何学者なので、図形には深い思い入れがありますが、方程式には親近感をもっていません。研究しているときも,式よりも図を書いて考えることが多いです。
  修士過程の学生のころは親元にいたのですが、数学をやっているといいながら、変な絵ばっかり描いていたので、家族は不思議に思っていたようです。

―塩谷先生が思う「数学の面白い所はここだ」という点を教えてください。―

  頭の中にあるイメージが積み重なって、それらが論理によって整理・統制されて、また逆に論理から新たなイメージが湧き出てくる、といったところが面白いと思います。この様なことを繰り返して、新しい数学の理論などが出来上がって行くのです。 数学は世の中に存在するものの中で最も純粋なものと思いますが、今の世の中、他にそんなものはなかなか見つかりません。

―暇な時は何をしてますか?趣味は?―

  最近は忙しくて「暇な時」というのはありませんが、時間とエネルギーが残っているときは、2才の息子と遊んでいます。ドライブやスキーが好きで、ときどき出かけます。

―学生へのメッセージ―塩谷教授

   学校で習うことをただ義務的に勉強するのではなく、自分で興味をもてることを見つけて、それを一生懸命勉強することを勧めます。自分を磨いて下さい。また、その為にどうしたらよいかを、よく考えて下さい。

 
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