東北大学 大学院理学研究科・理学部

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【プレスリリース】蔵王山周辺で人工地震地下構造探査を実施

概要



 東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター三浦哲教授(災害科学国際研究所兼務)らの研究グループでは、蔵王山の火山活動の理解と火山災害の軽減に向けた基礎的データの取得を目的として、蔵王山周辺において人工地震を用いた地下構造探査を実施します。この構造探査は、平成25年11月に科学技術・学術審議会により建議された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」に基づき、全国の大学が参加して行うものです。蔵王山の地下構造を詳細に調べることにより、火山性地震の震源決定の高精度化や地下の熱水分布の解明など、蔵王山の火山活動・活動推移把握に不可欠な情報を得ることが出来ます。


□ 東北大学プレスリリース本文



詳細な説明



 わが国には110の活火山があり、美しい景観や温泉など観光資源としての恩恵を受ける一方で、噴火によって災害を幾度も被ってきました。そのため、火山噴火の予知に対する社会的要請は強く、これに応えるために昭和47年に国家事業として火山噴火予知計画が開始されました。現在は「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」として観測・研究が実施されています。 全国の大学や気象庁などの機関が観測・監視体制の整備と基礎研究の推進に取り組んだ結果、地震活動や地殻変動などの諸現象と地下のマグマ活動との関連が明らかになりつつあります。

 しかし、噴火間隔が長く静穏な状態が長期間続く火山については、地下のマグマや熱水の分布や状態、マグマ溜まりから地表への輸送経路の詳細などが未解明なために、噴火予測は困難な状況にあります。このような状況を打開するため、第5次火山噴火予知計画(平成6年~11年)以降には人工地震により発生する地震波を用いて火山の地下構造を調べる火山体構造探査が行われるようになりました。この人工地震地下構造探査は、全国の大学等を中心に関係機関が共同で実施する大規模な実験観測であり、平成6年から概ね毎年何れかの火山で実施されてきました。東北地方の火山では、平成9年の磐梯山、平成12年の岩手山につづき、今回の蔵王山が3例目となります。

 蔵王山は約40万年前に活動を始め、歴史時代においては1895~1896年の御釜における火山泥流を伴う水蒸気噴火など多くの噴火記録が残されています。また、1940年には御釜北東において新噴気孔が生成されるなど、活発な火山活動が認められてきました。東北大学が蔵王火山観測所を設置した1992年以降は、顕著な火山活動は見られず静穏に推移してきましたが、2011年東北地方太平洋沖地震以降、地下のマグマ活動を示唆する深部低周波地震が蔵王山直下の深さ約25km周辺で活動度を増し、深さ約2、3kmの浅部においても熱水や火山性ガスなどの活動を示唆する長周期地震や火山性微動が発生し始めました。本年4月13日には噴火警報(火口周辺危険)が発表されましたが、6月16日には解除され、7月中旬以降は火山性地震が少ない状態が続いています。蔵王山は東北地方太平洋沖地震の震源域に最も近い活火山の一つであり、大地震による火山活動誘発も懸念されています。そのため、火山の地下構造や熱水系の分布や状態を精確に把握し、噴火のメカニズムや将来の活動予測につながる情報を得るために、人工地震を用いた火山体構造探査を実施することになりました。

 この探査では、蔵王山の山麓で地中発破によって人工的に微小な地震を発生させ、それに伴う地震波を約150の臨時地震観測点で記録します。地震波の伝播経路は、人工地震の震源と観測点を結ぶ曲線(地震波線)になりますが、その距離が遠くなるほどより地下深部まで潜ります。地震波線が地下の地震波速度が速い領域を通過するときにはより早く観測点に到達し、逆に遅い領域を通過するときには遅れて到達します。また、熱水系などを通過する場合には、地震波の振幅に変化が表れます。したがって、多くの観測点でこのような地震波到達時刻や振幅などのデータを同時に取得することによって、火山体の内部構造を推定できることになります。本構造探査の規模(図1)では、地震波線は最深で地下2km程度まで達するため、その範囲までの地下構造が推定できることが期待されます。人工地震の震源は、100~200kgの火薬を深さ30~40m、直径15cm程度のボーリング孔の底で爆破させるものです(図2)。なお、発破によって発生する地震の規模は小さく、その震動や音は数百メートル以内でのみ人体に感じられる程度となります。





実施期間



 平成27年10月18日~10月24日 (10月22日未明発破実施予定)





参加予定機関



 東北大学、北海道大学、秋田大学、山形大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、九州大学、鹿児島大学





参考図

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図1. 人工地震構造探査計画の震源及び観測点配置。

赤四角が臨時地震観測点、黄色四角(S1及びS2)が人工地震源の位置を示します。発破点S1からの地震波を東西の測線で観測することにより、その断面における地下構造を推定します。また、発破点 S2からの地震波を火山活動域である山頂の南北で観測することにより、熱水分布などを推定します。





20150928_20.jpg
図2.人工震源の構造および実施の様子。

人工震源は発破孔の孔底でダイナマイトを爆破させます(左図)。発破のエネルギーを効率的に地震波に変換し、地表への爆破音の伝達を軽減するため発破孔には水を充填します。発破の際には、水の噴出は起きるものの(右図)、震動や音は、発破点から数百m以遠では人体に感じられない程の微弱なものになります。




お問い合わせ先



東北大学大学院理学研究科

地震・噴火予知研究観測センター

教授 三浦 哲(みうら さとし)

電話:022-225-1950

E-mail:miura[at]aob.gp.tohoku.ac.jp



東北大学大学院理学研究科

地震・噴火予知研究観測センター

准教授 山本 希(やまもと まれ)

電話:022-225-1950

E-mail:mare[at]aob.gp.tohoku.ac.jp



東北大学大学院理学研究科

特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)

電話:022−795−5572

E-mail: r.takahashi[at]m.tohoku.ac.jp



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