東北大学 大学院理学研究科・理学部

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史上最大の生物大量絶滅の原因を解明−地球規模の土壌流出と浅海無酸素化−

概要



 東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授のグループは、約2億5200万年前の生物の史上最大の大量絶滅時に地球規模の土壌流出が起きて、浅海の無酸素事件を引き起し、生物の大変革を起こしたことを、堆積岩中の有機分子分析により解明しました(図)。

 2億5200万年前の生物の大量絶滅については、地球温暖化と海洋深部の無酸素化に加え、陸上植生崩壊による土壌流出も重要な役割をしていることを示しました。大規模火山活動から陸海の大量絶滅にいたるプロセスの大要が見えて来たと言えます。

 本研究の成果は平成28年8月8日(英国時間)付けでHeliyon誌に掲載されました。





□ 東北大学プレスリリース本文





詳細な説明



 約2億5200万年前のペルム紀末に史上最大の大量絶滅が起きて、95%の種がいなくなり地球の真核生物相が一変しました。陸では、ペルム紀の爬虫類とほ乳類型爬虫類がこの時に絶滅し、次の時代の三畳紀に恐竜とほ乳類が出現しました。海では、古生代型動物群が絶滅し、現代型動物群が出現しました。その原因はシベリアの巨大火山活動で、それによる極端温暖化と海洋深部の無酸素化が、原因と考えられてきました。大量絶滅は2段階で起きていて1段階目はより顕著です。海保邦夫教授らの研究グループは、絶滅の1段階目において、地球規模の顕著な土壌流出、浅海の生物生産量増大と酸素欠乏の証拠を、多数の地点で捉えました。しかし、2段階目の絶滅時には、土壌流出事件は起きず、海洋深部の無酸素化は最大になりました。このことは、シベリアの巨大火山活動による成層圏エアロゾルが気候変動を起し、それにより陸上植生が崩壊し、土壌流出−浅海無酸素化が起きたことを示します。シベリアの巨大火山活動から放出されたC02などの温室効果ガスは、地球温暖化を促進し、緯度による海水温差が小さくなり、海洋循環が停滞的になり、海洋無酸素還元化が促進、2段階目の絶滅が起きました。今迄は、1段階目も2段階目も地球温暖化と海洋深部の無酸素化と海洋酸性化が原因と考えられてきましたが、原因の違いを初めて明らかにしました。それは、巨大火山噴火に始まる一連の地球環境変動と考えられます。





白亜紀末大量絶滅との比較



 東北大学大学院理学研究科地学専攻の海保邦夫教授、気象庁気象研究所の大島長主任研究官らのグループは、約6600万年前に小惑星の地球への衝突により地下にあった有機物が燃え、衝突エネルギーで成層圏に放出されたすすが、地球規模の気候変動を引き起し、恐竜やアンモナイト等の絶滅を起こしたことを、有機分子分析と気候モデル計算により解明しました。大量絶滅時の地球規模の気候変動を詳細に解明したのは世界で初めてのことで、小惑星の地球への衝突から恐竜やアンモナイトの絶滅にいたるプロセスが見えて来たと言えます。本研究の成果は平成28年7月14日(英国時間)付けで、Scientific Reports 誌に掲載されました。(プレスリリース

 この約6600万年前の白亜紀末の大量絶滅の原因は小惑星の地球への衝突ですが、ペルム紀末の大量絶滅の原因は巨大火山活動です。しかし、それによる地球環境変動は良く似ています。その第一段階は、成層圏に放出されたエアロゾルが太陽光を遮断することによる、地球規模の気温低下と干ばつです。第2段階は、その後に始まる放出されたCO2による地球規模の温暖化です。白亜紀末の大量絶滅の直接の原因は第2段階目ですが、ペルム紀末の大量絶滅の直接の原因は、今迄の説によると第2段階目です。今回の論文は、第1段階目もペルム紀末の大量絶滅の直接の原因であったことを示唆しています。

 ペルム紀末の大量絶滅は恐竜とほ乳類の出現を起し、白亜紀末の大量絶滅は恐竜の絶滅を起こしました。





今後の展望



 海保教授らは、シベリア巨大火山活動による成層圏すすエアロゾルが起こす気候変動の研究を進めていますので、陸上植生崩壊までのプロセスの実証が期待されます。





参考図



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図.巨大火山活動が成層圏エアロゾルを形成、気候変動を起こし、陸上植生の崩壊と土壌流出事件を起し、浅海無酸素事件により、1段階目の海の絶滅、その後、火山活動による大気温室効果ガスの増加により、極端温暖化、海洋無酸素状態のピークにより2段階目の海の絶滅が起きた。(C)海保邦夫





論文情報



Kaiho, K., Saito, R., Ito, K., Miyaji, T., Biswas, R., Tian, L., Sano, H., Shi, Z., Takahashi, S., Tong, J., Liang, L., Oba, M., Nara, F.W., Tsuchiya, N., Chen, Z.Q., Effects of soil erosion and anoxic-euxinic ocean in the Permian-Triassic marine crisis. Heliyon 2(2016)e00137

(URL:http://authors.elsevier.com/sd/article/S2405844015304138

   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4983274)





お問い合わせ先



<研究に関すること>

東北大学大学院理学研究科地学専攻

教授 海保 邦夫(かいほ くにお)

電話:022-795-6615

E-mail:kaiho[at]m.tohoku.ac.jp



<報道に関すること>

東北大学大学院理学研究科

特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)

電話:022−795−5572、022-795-6708

E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp



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