東北大学 大学院理学研究科・理学部

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大火山噴火が最初の生物大絶滅の原因 未解明の原因が明らかに!

発表のポイント


● 5大大量絶滅のひとつであるオルドビス紀末大量絶滅を記録した2カ所の地層(中国とアメリカ)から水銀の濃集を発見

● 水銀の濃集は異なる時代の3度の大火山活動時に認められているので、今回発見された濃集も同様に、大火山噴火により空高く放出され世界中に堆積したものと考えられる

● 大規模火山噴火では、成層圏に放出されたSO2ガスが硫酸になって太陽光を反射して、寒冷化が起きるため、大規模火山噴火がこの大量絶滅を引き起こしたことを示唆



概要


 米国アマースト大学のデイビッド ジョーンズ博士らは、東北大学大学院理学研究科の海保邦夫教授とともに、5度の生物の大量絶滅のうち最初の大量絶滅を記録した中国とアメリカの地層から水銀の濃集を発見しました。水銀の濃集は、異なる時代の3回の大火山噴火時に認められています。水銀はマントル中に起源を持ち、大火山噴火により空高く放出され世界中に広がり堆積したものと考えられます。つまり、大火山噴火により成層圏に硫黄が入り硫酸が作られて、それが太陽光を反射して、寒冷化が起きた結果、この大量絶滅を引き起こしたことを示唆しています。本研究の成果は平成29年5月1日(米国時間)付けで、Geology 誌に掲載されました。

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図:大量絶滅の原因

□ 東北大学ウェブサイト



詳細な説明


 米国アマースト大学のデイビッド ジョーンズ博士らは、東北大学大学院理学研究科の海保邦夫教授とともに、いままで不明とされていた最初の生物の大量絶滅の原因を解き明かしました。5度の生物の大量絶滅のうち、後半の3つの大量絶滅の原因は大方わかっていますが、最初の2つの大量絶滅は未解明のままでした。そのうち最初の大量絶滅は、4億4500万年前から4億4300万年前にかけて起きました(図)。その頃の主な動物は、カンブリア爆発とオルドビス紀大放散を経て形成された珊瑚礁と頭足類、海サソリ、筆石類、三葉虫、腹足類など多様な動物群でした。それらは、この時初めて、大打撃を受けました(科の5分の1、属の半数が絶滅)。

 海保教授らは、その大量絶滅を記録する中国とアメリカの地層から堆積岩試料を採取し、元素分析を行なった結果、水銀の濃集を発見しました。異なる時代の3回の大規模火山活動時にも水銀の濃集が認められていることから、大火山噴火により水銀が空高く放出されたものと考えられます。大火山噴火では、成層圏に大量のSO2ガスが入り、それから硫酸が作られて地球を覆います。硫酸のエアロゾルは太陽光を反射するので、地球規模の寒冷化が起きることとなります。また、この時期の前後の地球は氷床がない温暖期で、この時期のみ氷床があったことから、それがこの大量絶滅に関係していると考えられていました。今回の発見は、大規模火山噴火が寒冷化を招き氷床発達と大量絶滅を引き起こしたことを示唆しています。

 この結果、5度の生物の大量絶滅のうち3度は大規模火山噴火により起き、1度は小惑星衝突により起こったことになり、残り1つの大量絶滅の原因の解明が待たれます。さらに、5つの大量絶滅の原因から結果までのより詳しいプロセスの解明が今後期待されます。



論文題目


雑誌名: Geology
論文タイトル:A volcanic trigger for the Late Ordovician mass extinction?: Hg data from South China and Laurentia
著者:David S. Jones, Anna M. Martini, David A. Fike, Kunio Kaiho
DOI番号:10.1130/G38940.1



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 海保 邦夫(かいほ くにお)
電話:022-795-6615
E-mail:kaiho[at]m.tohoku.ac.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)
電話:022−795−5572、022-795-6708
E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp

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