東北大学 大学院理学研究科・理学部

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古細菌の新たな分子化石の発見 2億年より古い時代の古細菌の調査がより簡単に!

発表のポイント


● 生命史の未知部分を解明する新しい方法を発見。

● 古細菌の新たな分子化石を約2億5千年前の中国の地層から発見。

● 当該分子化石の同定には普遍的な分析機器(質量分析計)を用いたため、本検出方法により、2億年より古い時代の古細菌の調査が以前より進む可能性がある。



概要


 地球のあらゆる生物は分類学的に、真正細菌、古細菌、真核生物の3つに大別されます。今までは地球史の大部分における古細菌の分布や多寡はほとんどわかっていませんでした。

 今回、東北大学大学院理学研究科地学専攻の齊藤諒介理学博士(現:宮城県庁)と海保邦夫教授らは古細菌の新たな分子化石を約2億5千年前の中国の地層から発見しました。また、発見した分子化石の同定には、通常より普遍的な分析機器を用いる新たな同定方法を使用しました。これにより今後、地球史における古細菌の分布がさらに解明されることが期待されます。

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図:今回発見された古細菌の分子化石(環状構造をもつビフィタン類及びその続成変化生成物)とその時代分布。赤星は今回発見した時代。緑星と黒星は先行研究により発見されていた時代((C)齊藤諒介)

□ 東北大学ウェブサイト



詳細な説明


 東北大学大学院理学研究科地学専攻の齊藤諒介理学博士(現:宮城県庁)と海保邦夫教授らは、2億5千万年前の地層から、古細菌の新しい分子化石を、より普遍的な質量分析計を使用して発見しました。

 古細菌の分子化石は、比較的新しい時代であれば地層中から発見できます。が、2億年より古い時代になると、高度好塩菌や特殊な環境下で堆積した堆積物を除き(※)、ほとんど発見できなくなります。分子時計による研究では、古細菌は約38億年前頃に誕生しているため、より直接的な証拠である分子化石が38億年前~2億年前にほとんど見つからないことから、手法間に不整合がありました。そのため、分子化石の不在について、古い時代ではそもそも古細菌の生物量が低かったから見つからないのか、それとも古細菌の分子化石が古い時代では分解されてしまって残らないために見つからないのか、分かっていませんでした。

 齊藤博士及び海保教授らは、中国の約2億5千年前に堆積した地層から堆積岩試料を採取し、堆積岩中に含まれる有機分析を行なった結果、環構造を持つビフィタン類(注1)及びその続成変化生成物(注2)を発見しました。その中には、これまで発見されていなかった続成変化生成物(古細菌の新しい分子化石)も含まれていました。

 また、今回の研究では、特殊な質量分析計を使って同定を行った先行研究とは異なり、より普及している質量分析計を使ってこれらの有機分子の同定方法を示したことから、他の研究機関への波及効果が期待できます。今後、この研究で使用されている手法を用いることにより、2億年より古い時代に存在する古細菌の長い長いギャップが埋まっていくことが期待されます。

 ※メタン冷湧水等の環境下で堆積した堆積物中には、メタンを生成・代謝する古細菌の生物量が多いため、2億年より古い時代の堆積物であっても保存されていることがあります。古細菌のうち、高度好塩菌の分子化石は古い時代でも度々発見されています。



論文情報


雑誌名: Organic Geochemistry
論文タイトル:Tentative identification of diagenetic products of cyclic biphytanes in sedimentary rocks from the uppermost Permian and Lower Triassic
著者:Saito, R., Kaiho, K., Oba, M., Tong, J., Chen, Z. Q., Tian, L., Takahashi, S., Fujibayashi, M.
DOI番号:10.1016/j.orggeochem.2017.04.013



用語説明


(注1)ビフィタン類
古細菌の分子化石の一種。ビフィタンは主に4種類ある:環状構造をもたないもの、五員環を1つもつもの、五員環を2つもつもの、五員環を2つと六員環を1つもつもの。

(注2)続成変化生成物
続成作用により生成する有機物。続成作用により、堆積物中の有機物は不安定(反応性の高い)な有機物からより安定した(反応性の低い)有機物へと変化する。なお、続成作用とは、未固結の堆積物が、温度・圧力等を受けて、固結した堆積岩となる作用を指す。



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科地学専攻(現:宮城県庁観光課)
理学博士 齊藤 諒介(さいとう りょうすけ)
E-mail:olivinline[at]yahoo.co.jp

東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 海保 邦夫(かいほ くにお)
電話:022-795-6615
E-mail:kaiho[at]m.tohoku.ac.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)
電話:022-795-5572
E-mail:r.takahashi[at]m.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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