東北大学 大学院理学研究科・理学部

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東北大学が第1回日本オープンイノベーション大賞 「総務大臣賞」を受賞 「リアルタイム津波浸水被害予測システムの開発と運用」

2月5日に発表された、第1回日本オープンイノベーション大賞※1において、東北大学災害科学国際研究所 越村 俊一教授/東北大学大学院理学研究科 太田 雄策准教授/国際航業株式会社 村嶋 陽一/日本電気株式会社 撫佐 昭裕(東北大学サイバーサイエンスセンター 客員教授)/株式会社エイツー 加地 正明らのグループが、総務大臣賞を受賞しました。

越村教授らのグループ※2は、2013年から産学連携研究を開始し、JSTの戦略的創造研究推進事業CREST(代表:越村俊一)での基礎・応用研究と、総務省の実証事業(産学連携)などを通じて、世界初の「スーパーコンピュータによるリアルタイム津波浸水被害予測技術」の実用化を果たしました。本技術は、内閣府の津波浸水被害予測システムとして採用され、2018年に本技術を広く普及するために設立した東北大学発ベンチャー(株)RTi-castが運用の一役を担っています。

※1 日本オープンイノベーション大賞は、我が国のオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取組を表彰するもので、2017年度までの「産学官連携功労者表彰」の継続表彰として、2018年度より開始されました。

※2 本取組の主要メンバーは以下(*が今回の受賞対象者)
*越村俊一(東北大学災害科学国際研究所・教授)、小林広明(東北大学大学院情報科学研究科・教授/サイバーサイエンスセンター長特別補佐)、日野亮太(東北大学大学院理学研究科・教授)、*太田雄策(東北大学大学院理学研究科・准教授)、*村嶋陽一(国際航業株式会社・防災情報チームリーダー)、*撫佐昭裕(日本電気株式会社(NEC)・主席システム主幹)、*加地正明(株式会社エイツー・取締役)

□ 東北大学ウェブサイト



詳細


リアルタイム津波浸水被害予測システムについて

▪ スーパーコンピュータの災害時緊急利用技術と、世界初のリアルタイム津波浸水・被害予測技術の開発・実用化を実現するために、理学・工学の研究者を中心とした産学連携プロジェクトを2013年から開始した。

▪ 地震の震源情報を自動で取得、津波の発生・伝播・浸水・被害予測・図化・配信を、10分以内の津波発生予測、10分以内の浸水・被害予測を10mメッシュで行うという「トリプル10(テン)チャレンジ」と称して目標設定を明確にし、それらを全自動で行う技術を確立したことで、東日本大震災の教訓を踏まえた新しい量的津波数値浸水被害予測の基礎を築いた。

▪ この成果が評価され、ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)優秀賞(2016年)、総務省東北総合通信局長表彰(2016年)、科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)(2018年)を受賞した。

▪ 本プロジェクトの成果は、内閣府総合防災情報システム「津波浸水被害推計システム」として採用され、2017年11月より試験運用、2018年4月より本格運用を開始している。

▪ 産学連携研究による成果の蓄積と関連特許登録を踏まえ、2018年3月より株式会社RTi-castを設立した。株式会社RTi-castとは、越村俊一教授が代表発起人およびco-founder(共同創業者)、CTO(最高技術責任者)となり、国際航業株式会社、東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社、株式会社エイツー、日本電気株式会社の4者および個人を株主とした、東北大学発のベンチャー企業である。

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リアルタイム津波浸水被害予測の意義と位置づけ

巨大災害後の災害対応や救援活動において最も重要なことの一つは、被害の全容把握である。地震や津波災害といった巨大災害の発生直後は、激甚な被害を受けた地域からの情報が断片的となり、被害全容の把握が極めて困難になるとともに、被災地の救援活動や復旧活動も難航する。2011年東北地方太平洋沖地震津波の被災地は広大で、発災直後には、激甚な被災地を把握することが困難であったと同時に、現地調査期間や人的資源の制約により被害全容を把握するには極めて長い時間を要した。

我々は、この問題解決に産学連携で取組み、世界初のリアルタイム津波浸水被害予測技術の実用化と事業化を実現した。具体的な社会的ニーズとは以下の2点である。

▪ 被災地の迅速かつきめ細かな救援のためには、津波高さの予測だけでなく浸水範囲・被害の迅速かつ正確な予測・把握が必要である。

▪ 政府は、南海トラフ巨大地震津波災害への対応計画(タイムライン計画)を立案しているが、迅速な被害予測・把握技術の整備は極めて重要な課題と位置づけられている。


受賞のポイントについて

巨大地震津波災害時の社会的ニーズに応えるために、迅速な被害情報の推計・把握と配信を通じて被災地を支援し、災害に対するレジリエンス(回復力)の向上とわが国の国土強靱化に資する、世界発のリアルタイム津波浸水被害予測技術を確立し、研究参画メンバーで東北大学発ベンチャー「(株)RTi-cast」を2018年3月に設立し、さらなるイノベーション創出への活動を強化したことが高く評価された。

スーパーコンピュータの災害時活用により、津波の浸水による人的・建物被害予測を、地震発生から20分以内を目安に完了させ、国の災害対応の基盤情報に組み込むことができたことは最も重要な貢献である。

世界的にも「津波浸水範囲」や「被害」の予測をリアルタイムで行うシステムは例が無い。将来の災害情報のあり方を刷新するインパクトを有している。

実用準天頂衛星システムのサービスも開始され、高精度測位情報と津波浸水予測技術を連携させることで、迅速・確実な歩行者への避難情報の提供や運転者への情報提供、自動運転時代を見据えた避難誘導方法などへの展開が可能となる



問い合わせ先


東北大学災害科学国際研究所
越村 俊一 教授
電話:022-752-2084
E-mail:koshimura[at]irides.tohoku.ac.jp

東北大学大学院 理学研究科
太田 雄策 准教授
電話:022-795-6782
E-mail:yusaku.ohta.d2[at]tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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