私は学部生の頃から、日本に住むDaphnia pulex(和名:ミジンコ)を研究対象にしています。日本には有性生殖をしない4系統のD. pulexが生息していますが、この4系統は北から南までそれぞれに分布範囲が異なります。成長速度や温度耐性に注目し、飼育実験や野外でのサンプリングを行うことで、どうして種内で分布範囲が異なるのか?を明らかにするべく研究を続けています。現在は少し発展させて、D. pulexの種内共存のメカニズムを探るため、生態学的な視点だけでなく、分子生物学的な視点からも研究を行っています。また研究室では、ミジンコの形態観察と遺伝解析から未記載ミジンコ種の、分類に関する研究も行っています。私は顕微鏡を覗きながらミジンコを解剖し、スケッチを描く形態観察を担当させてもらっています。
中学1年生の時に、理科の資料集に載っていたミジンコの写真に一目惚れしました。大きな黒い眼と内臓と、小さいのにいろんな構造が詰まっていて、「こんなに小さくても私たちと同じように、一生懸命に生きてるんだ!」と心を掴まれました。それからミジンコの生態に関する本を読んだり、図鑑を見たりするうちに、ミジンコという生物自体は良く知られているのに、生態は意外とわかっていないことだらけだということに衝撃を受けました。生きている姿が何としても見たくて、中学生の頃は近くの水田にミジンコを探しに行っていたのですが、カイミジンコやケンミジンコといったミジンコらしい形態の子になかなか出会えず・・・中学3年生の時に初めて、小さな沼でミジンコらしいミジンコを見た時はとても嬉しくて、感動しました!しかし今思えばあの子もミジンコの仲間ではあったものの、ケブカミジンコというちょっと違う種だったなということが、今ではわかるようになりました(笑)
昨年から本当に大変な世の中になってしまって、今は全員がストレスの溜まる一方という生活を強いられていることと思います。高校生の皆さんは特に、将来への不安もあることでしょう。私も、しんどいなと思う時は日々ありますが、それでも私はミジンコが大好きで、だからこそ大学に入ってからの研究生活は本当に夢のようですし、心から楽しいです。ぜひ皆さんも自分の、好き!楽しい!と思えるものに誇りを持って、くじけず、一緒に頑張りましょう。そして、ここまでたくさん登場した、いろんなミジンコたちの姿が気になったあなた!ぜひ図鑑を見て、ミジンコの世界を少しでも覗いてくれたら嬉しいです。