物性物理学、特に固体物理学について研究をしています。物質は無数の原子から構成されており、原子の中の電子が物質の性質の多くを決定します。この「性質」とは、別の言い方をすれば、物質に対して外部から何らかの刺激(例えば熱や光、電場、磁場、粒子ビームなど)を与えた際に生じる応答のことであると捉えられます。また、外部から与える刺激を強くしていくことで、物質の性質自体が大きく変化する(相転移する)ことも予想されます。したがって、物質の性質を物理学の観点から理解するためには、無数の電子の量子力学的な運動を明らかにすることが重要になります。電子一つひとつは互いに区別ができない「無個性」な素粒子であり、その運動はシュレディンガー方程式によって記述されます。しかしながら、この無個性な電子がアボガドロ数程度の膨大な数だけ集まることで極めて多彩な性質が現れるという事実は、改めて考えてみると驚くべきことです。このような物質の多様性について、その背景にある普遍的な法則の理解を目標とするのが物性物理学であり、私はここに幾ばくかでも貢献すべく理論的な立場から研究に取り組んでいます。