東北大学には必要な環境がすべて揃っている

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

小野淳

1.現在、どんな研究をしていますか?

物性物理学、特に固体物理学について研究をしています。物質は無数の原子から構成されており、原子の中の電子が物質の性質の多くを決定します。この「性質」とは、別の言い方をすれば、物質に対して外部から何らかの刺激(例えば熱や光、電場、磁場、粒子ビームなど)を与えた際に生じる応答のことであると捉えられます。また、外部から与える刺激を強くしていくことで、物質の性質自体が大きく変化する(相転移する)ことも予想されます。したがって、物質の性質を物理学の観点から理解するためには、無数の電子の量子力学的な運動を明らかにすることが重要になります。電子一つひとつは互いに区別ができない「無個性」な素粒子であり、その運動はシュレディンガー方程式によって記述されます。しかしながら、この無個性な電子がアボガドロ数程度の膨大な数だけ集まることで極めて多彩な性質が現れるという事実は、改めて考えてみると驚くべきことです。このような物質の多様性について、その背景にある普遍的な法則の理解を目標とするのが物性物理学であり、私はここに幾ばくかでも貢献すべく理論的な立場から研究に取り組んでいます。

2.興味を持ったきっかけは?

子供の頃から自然科学が好きでしたが、明確に物理学を志すきっかけの一つとなったのが、高校で質点の運動を初めて習ったことであったと思います。中学理科までの定性的な議論とは異なる、定量的な精密科学というものの存在をそのとき認識し、静かな衝撃を受けました。我々の文明は、歴史上の多くの先人達による膨大な知識の蓄積によって支えられています。例えば、リンゴが木から落ちる現象と月が空を動く現象とが同じ法則に従っていることに全くの独力で気付くことができる人はどれだけいるでしょうか。そのような美しい法則が存在し、それが数学という人間に理解可能な形で精密に記述できるという事実に対して、私は強い興味を抱きました。

3.メッセージ

大学学部の4年という期間においては、学問に限らず、一生を捧げても良いと思えるほどに興味を持つことのできる事柄を探すことが重要であると思います。東北大学には、そのために必要な環境がすべて揃っています。