自分は何者なのか?どこから来て、どこへ行くのか?

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

杉本 亜砂子先生
生物学科、
生命科学研究科
教授

1.
現在、どんな研究をしていますか?

生物個体の形態や生態的な特徴は、親から受け継いだ染色体が持つ「遺伝情報」(その総体をゲノムと呼びます)にしたがって作り上げられます。私たちの研究室では、ゲノムに含まれている数万の遺伝子がどのように協働して個体を作り上げていくのか、また、進化の過程でゲノムがどのように変化してきたのかを解析しています。研究材料として用いているのは、細胞数がわずか1000個程度しかなく、遺伝子操作も比較的簡単に行うことができる、線虫というモデル生物です。私たちは特に胚発生過程に着目し、細胞が分裂しながら多様な細胞種を作り出すために働いている遺伝子ネットワークを解析しています。さらに最近は、さまざまな線虫のゲノムの比較や人工進化実験を行うことで、遺伝子レベルのどのような変化が生物の多様性を生み出してきたのかについても研究を進めています。

2.
興味を持ったきっかけは?

実は、中学生の頃までは、数学や物理・化学は好きだったのですが、記憶することが多い生物は苦手だったのです。しかし、15歳の頃に高校の生物の授業でメンデルの遺伝の法則とDNAの複製のしくみを学び、遺伝のしくみの緻密さに衝撃を受けました。さらに、その時の生物の先生に勧められて、DNAの構造を決定してノーベル賞を受賞したジム・ワトソンの回想記「二重らせん」を読み、生命という複雑な現象を論理的に解明していく研究者という職業に興味を持ちました。これがきっかけで、約40億年前に誕生した最初の生命から自分にまで脈々と受け継がれてきた遺伝子の秘密をもっと知りたいと思い、当時は少なかった分子生物学の研究室がある大学を選びました。研究対象は植物ウイルスから酵母、線虫、と何度か変えましたが、今に至るまで遺伝子に関わる研究を継続できているのは、幸せな人生だな、と思います。

3.
メッセージ

地球上にはじめて誕生した生物のゲノム=遺伝情報が、約40億年かけて少しずつ、少しずつ変化することで、多様な生物種が産み出されてきました。気が遠くなるような偶然の積み重ねの結果として、今ここに私たちが存在しているという事実を思い返すたびに、私は感動とも衝撃とも言い難い感情に捉えられてしまうのです。「自分は何者なのか?どこから来て、どこへ行くのか?」という根源的な問いに対する答えを、科学的な観点から一緒に探求してみませんか?

名前:
杉本 亜砂子(すぎもと あさこ)
所属:
生物学科、生命科学研究科 教授
研究室:
発生ダイナミクス分野
出身地:
東京都
最近読んでいる本:
「ハンナ・アーレント、三つの逃亡」(ケン・クリムスティーン、訳:百木漠)、「ハンナ・アーレント:「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」(矢野久美子)
研究分野:
分子遺伝学、細胞生物学、発生生物学、ゲノム生物学
掲載日:
2024.3.28
JAEN