2010年度の記録です。

法と科学の接点(2010年度)

基礎ゼミの授業概要(シラバス)

集中講義形式 担当教員: 本堂 毅 所属: 理学研究科

1. 授業題目

法と科学の接点: 科学を通して法を,法を通して科学を考える

2. 授業の目的と概要

科学は普遍的な真実を追い求め,法は正義を追い求めると言われる.
そして司法は,法廷で正義を判断する根拠の一つとして科学を用いる.

しかし,法廷の現場で科学が議論される際には,科学者と法律家の間 で,大きなすれ違いが生まれている.例えば,法律家は科学者が真実を ハッキリと語らないといい,科学者は法律家が科学という営みを全く理解 していないという.この混乱には,両者の相手分野への無理解がある.

本ゼミでは,法と科学の接点(鏡)を通して,科学とは何か,法とは 何か,という科学哲学,法哲学の根本問題を共に考えながら,市民社会 における専門知(学問)の意義と適用限界を考察したい. 

3. 学習の到達目標

正義を追究することと,科学的真実を追究することの異同点を理解する.

と法曹)が相互協力するための「対話」能力を身につける.

4. 授業の内容・方法と進度予定

(1)科学が争点となっている裁判での科学者尋問調書などを用いて 法と科学の接点で,実際どのような混乱が生じているのか, その背景と合わせて検討する.

(2)科学技術のあり方がテーマとなっているSF小説は少なくない. そこで,映画化された作品を,ゼミ生みんなで鑑賞する.

(3)映画で扱われたトピックス(科学技術の社会への導入の可否)が法廷に持ち込まれた,と仮定して,原告・被告,裁判官役に分かれて,模擬裁判を行う.

(4)創作のプロセスを考察し、科学技術が裁判で争われる時に,適切な議論のやり方(ルール)を議論し,提言をまとめる.

※尚,(3)と(4)は,弁護士の中村多美子氏と一緒にゼミを行う. 中村氏は科学技術振興事業団RISTEXの研究開発プログラム「科学技術と社会の相互作用」の中で 「不確実な科学的状況での法的意志決定」のプロジェクト代表者を務めている. http://www.ristex.jp/science/project/nakamura.html

5.成績評価方法

出席状況、議論(ディスカッション),ワークショップでの活動に対する成績に基づいて評価する。

6. 参考書籍

書籍名
著者
出版社
出版年
1
科学技術社会論研究7(小特集「科学と法の接点―法廷における科学」)
科学技術社会論学会編
玉川大学出版部
2009
2
Science at the Bar
Sheila Jasanoff
Harvard University Press
1997
3
科学コミュニケーション論
藤垣裕子・廣野喜幸(編)
東京大学出版会
2008
4
弁護のゴールデンルール
キース・エヴァンス
現代人文社
2000
5
科学技術社会論の技法
藤垣裕子(編)
東京大学出版会
2005
6
Expert Evidence者
Ian Freckelton, Hugh Selby
Thomson Reuters
2009
7
文科系のための自然科学総合実験
須藤彰三(他)
東北大学出版会
2008
8
ニッポンには対話がないー学びとコミュニケーションの再生
北川達夫,平田オリザ
三省堂
2008
9
科学を志す人びとへ:不正を起こさないために
科学倫理検討委員会(編)
化学同人
2007
10
専門知と公共性
藤垣裕子
東京大学出版会
2003

7. その他

本ゼミは,ワークショップを行うために,受講者定員を10名とする.

夏休み期間中に,大分県弁護士会の中村多美子弁護士と共に集中講義形式での実習(ワークショップ)を行う

初回授業:2010年4月19日(月)3講時、川内北キャンパス

その後,4月〜7月の間に数回授業を行い,集中講義を夏休みに行う予定. 集中講義は合宿形式(1泊2日)で行うため,宿泊費及び食費が必要となる(交通費は大学が負担).

参考

2007年度の基礎ゼミ(音楽):http://web.sci.tohoku.ac.jp/hondou/archives/kiso2007.html

2011年度の基礎ゼミ(音楽の普遍性と多様性 ):http://web.sci.tohoku.ac.jp/hondou/2-2kiso.html