教科書的な認識は研究の進展とともに変わっていくもの

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

秋山 正幸

1.現在、どんな研究をしていますか?

すばる望遠鏡の広視野探査で得られた撮像データを用いて宇宙初期にある銀河やその中心にある超大質量ブラックホールの探査を行っています。超大質量ブラックホールがどのように形成されたのかは、現代天文学の大きな謎の一つであり、宇宙初期の天体の研究によりこの謎を解きたいと考えています。

宇宙を観測するための補償光学と呼ばれる装置の開発もすすめています。すばる望遠鏡にレーザートモグラフィー補償光学という装置を搭載し、これまでにない高空間分解能の観測を実現しようとしています。これにより超大質量ブラックホールの探査や銀河力学構造の宇宙論的進化の解明を進めます。

補償光学はすばる望遠鏡に続く次世代の超大型地上望遠鏡では必須の手法となります。私も関わっている30m地上望遠鏡計画は困難があり、建設は進んでいませんが、人類の宇宙を見渡す眼として活躍する日を期待し、補償光学の研究を推し進めています。

2.興味を持ったきっかけは?

宇宙の研究に興味があり大学に進学しました。研究分野の選択の際には銀河の構造の起源を解明することに興味を持っていました。最初にたずさわった研究は銀河とは少し離れて活動的な超大質量ブラックホールに関する研究でした。当時の世界で唯一のデータを使った研究を進めることができ、そこから超大質量ブラックホールの研究に深く関わることになりました。研究を始めた当初は超大質量ブラックホールと銀河の研究は離れた世界でしたが、研究の進展ともに世界的にも合わせて研究することが必要である、という認識へと変わってきました。教科書的な認識は研究の進展とともに変わっていくものです。

3.メッセージ

大学や大学院ではいろいろなことを学び、いろいろなことに挑戦してください。研究においても自分のアイデアを振り絞って、たくさんの試行錯誤をしてください。例えば観測天文学の分野ではオープンスカイポリシーの元で多くの最先端のデータが世界的に公開されています。特にこの分野で革命的な成果が期待されるジェームスウェブ宇宙望遠鏡のデータも続々と公開が始まっています。シンプルなアイデアでも世界的にも試されていない解析はたくさんあるものです。自由な発想でデータを解析して楽しむところから大きな発見が生まれるのだと思います。