科学で未来の常識をつくる取り組みに参加してみませんか

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

古川 善博

1.現在、どんな研究をしていますか?

生命の起源の研究です。生命誕生前の地球や宇宙で生命の材料がどうやってできたかを研究しています。生命の誕生にはタンパク質や核酸のような働きをする分子が不可欠と考えられています。そのような分子は生命誕生前の地球の大気に放電が起こると生成すると長らく考えられていました。現在では、当時の地球の大気を原料としてそのような有機物を作るのは難しいと考えられています。我々生命の材料がどうやってできたかわからなくなってしまったのです。

現在の地球では極寒の環境や高温の環境、高圧環境、乾燥環境など様々な環境があります。また、雷が落ちたり、隕石が降ってきたりと、多様なイベントも起こります。太古の地球にも様々な環境や地球科学的なイベントがあったと考えられていています。そんな環境を実験室で再現したり、隕石の分析をしたりして、地球や宇宙でどうやって生命材料となる有機物ができたのかを研究しています。

2.興味をもったきっかけは?

学部生の頃に指導していただいた先生に、生命起源研究の面白さと地球科学との関係の深さを教わったことがきっかけでした。それまで私は、生命の起源は生物学の課題だと思っていました。しかし、「生命がいない地球で生命ができたんだから、それを解き明かすのは地球科学の仕事だろう」という先生の言葉に深く共感しました。実際のところ生命起源の解明には、有機化学や分子生物学など他の分野との連携が欠かせないのですが、地球科学も生命の起源という大きな謎の解明に役割を果たせる分野であることは間違いありません。特に生命誕生の第一歩となる生命分子の起源に関する研究では地球宇宙科学が非常に重要になっています。

3.メッセージ

理学部では、自然の真理を追求する研究をしています。それらの研究の大部分はすぐにお金をうまないような研究や、すぐには人の生活が便利にならないような研究かもしれません。生命の起源研究もまさにそのような研究の代表例です。しかし、実は過去のそのような研究こそが、現在の人類の知識の根幹となる科学に基づく常識をつくってきました。皆さんも科学で未来の常識をつくる取り組みに参加してみませんか。