不思議だな、と思うところから研究が始まる

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

萩野 浩一

1.現在、どんな研究をしていますか?

今、重点をおいている研究テーマの一つが、ニホニウムのような超重元素を合成する原子核反応の研究です。理化学研究所でニホニウムが作られた時は、70Zn (亜鉛70)という原子核と 209Bi(ビスマス209)という原子核が核融合を起こしました。70個の粒子(核子)の固まりと209個の粒子(核子)の固まりからどのようなプロセスを経て 278個の固まりができ、そこからどのようにして中性子が1つ放出され 278Nh(ニホニウム 278)ができたのか、そのメカニズムを理論的に解明しようとしています。さらには、ニホニウムに続く超重元素(119番元素や120番元素)を効率的に合成するための条件を明らかにする研究を行っています。これらの研究は、超重元素を周期表のどこに並べたらよいのかということや、宇宙の進化の中で元素(特にトリウムやウランなどの重い元素)がどこでどのようにして生まれて現在の姿になったのか、という現代科学の未解決の謎とも関連しています。

2.興味をもったきっかけは?

高校の時の化学の授業で、目に見えない空気も実は元素から出来ていて、窒素や酸素の分子が飛び回っているんだ、という話を聞いた時には衝撃を受けました。化学の先生が、「ほら、今そこを酸素の分子が飛んで行ったよ」などと冗談を言っていたのを覚えています(昔は元素は中学校ではなく高校で習っていました)。大学院に入り、超重元素とは直接関係のない領域の核融合反応の研究を続けていましたが、やはり社会的に大きなニュースになった2016年前後のニホニウム命名がきっかけとなり、今まで行っていた研究の新たな展開として超重元素研究の方向に研究の重点を置くようになりました。

3.メッセージ

この世の中には不思議なことがいっぱいあります。それを不思議だな、と思うところから研究が始まります。そして、なんでなんだろう、ということや、その現象の背後には何があるのだろう、ということを考える。理論の場合には、それをコンピュータでシミュレートして確かめる、あるいはシミュレーション(数値計算)の結果から新しいことや面白いことを発見する。それが研究なのです。皆さんもぜひ研究を体験してみて下さい。大学には様々なバックグラウンドや興味を持つ人が集まっています。東北大学のような総合大学では広い分野の専門家や大学院生が揃っています。オープンキャンパスなどの折に気軽に声をかけて話をしてみて下さい。好奇心の間口を広くとっていれば、思ってもみないようなところに自分のやりたいことが見つかるかもしれませんよ!