周りの誰もが見落としている何かに、あなただけは気づいたのかもしれない

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

伊東 邦大

1.現在、どんな研究をしていますか?

この世界には、極限や(しばしば同じことですが)積分で定義された数が存在します。私の興味は、一見するだけでは分からない、それらの数の持つ特徴や、数同士の間に成り立つ関係性にあります。最近は特に、多重ゼータ値やベルヌーイ数を対象として、それらが持つ豊富な関係式、またそれらと密接に対応する多重ポリログ関数の関数等式の解明に取り組んでいます。

2.興味をもったきっかけは?

「これを特に究めたい」という分野を初めは持っておらず、気になったことには何でも手を着けていました。そうして色々なことを目に見、耳に聞いているうちに、議論のできる人が身近にいた方が研究を進めやすいと考えるようになりました。そこで、研究集会を通じた知り合いが多く専門としていた、多重ゼータ値を研究分野として選びました。実際、学んでみると、数の定義はシンプルなのに、そこから発生する現象は多様であり、これを理解するために先人の編み出した理論は奥深いことを知りました。現状、多重ゼータ値の成す空間の構造を記述する完全な理論は確立していません。日々、全国の研究者からの「あれを解決した、これに取り組んでいる」という報告を聞くのは心躍ります。研究をしているときの心持は、パズルを毎日、少しずつ解き進めていくようなものです。そのパズルは、今日まで世界の誰も解法を発見できていないものなのですから、やりがいといったら言葉では書き表せません。

3.メッセージ

研究では、みなと同じ正解へたどり着くことは重要ではありません。各人の方法で真実を照らし出し、明らかに記述することに価値があります。時には周りのみなが当たり前だと思っていることに疑問を感じる場面もあるでしょう。そんな時こそチャンスです。周りの誰もが見落としている何かに、あなただけは気づいたのかもしれないのですから。
他者と異なる視点を持つことを恐れてはなりません。そのうえで、疑問を解決する姿勢を貫き通すことが重要だと考えます。