自分の青春をかけてでもやりたいと思えることに出会えるはず

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

谷本 拓

1.現在、どんな研究をしていますか?

物質の中で働く「強い力(強い相互作用)」について、実験を通じて研究をしています。この力は、宇宙を成り立たせる基本的な4つの力の1つで、陽子と中性子の間に働いて原子核を安定させる核力です。この力がなければ、私たちの体や身の回りの物質は存在しません。
強い力については、他の3つの力(重力、電磁気力、弱い力)に比べて未知な部分が多いのが現状です。近代の原子核物理は、原子核そのものの研究というよりも、多数の核子が集まったときにどのような振る舞いをするのか、その核子同士にどのように力が働くのかといった、多体系の物理を理解するところにあると考えています。それはとても複雑で、だからこそ面白いと感じています。
この強い相互作用を紐解くために、「ハイパー原子核」という特別な原子核の性質を調べています。これは、普通の陽子や中性子に加えて、自然界では見られない「ストレンジクォーク」を含む粒子(ラムダ粒子など)が構成要素に入った原子核です。このハイパー原子核を研究することで、これまでに分かっている核子間の強い力を、クォークを含む多体系の間に働く力に拡張し、物質を形作る力の本質的なメカニズムや、中性子星と呼ばれる宇宙の極限天体の仕組みを解き明かそうとしています。

2.興味を持ったきっかけは?

物理学科で学ぶうちに、「基本的な4つの力の統一」という、物理学における大きな目標に強く惹かれ、ロマンを感じました。この壮大なテーマに貢献したいという思いから、どんな角度のアプローチでも良いので、4つの力の理解の一助となるような基礎研究に携わりたいと考えるようになりました。様々な研究室の紹介を見ていく中で、ハイパー原子核の研究はまさに強い力を理解するためのアプローチとして非常に魅力的だと感じました。
また、物理学への興味だけでなく、学部生の頃から海外での国際共同研究の経験を積みたいという思いがあり、さらに、工学的な技術(プログラミングや電子回路設計など)の習得にも強い興味がありました。こうした希望を全て満たせる今の研究室に巡り会えたことが、現在の研究に取り組むきっかけとなりました。

3.メッセージ

私は今の研究分野に出会うまでに、いろいろな寄り道をしてきました。将来やりたいことがはっきり決まっていなかったので、少しでも可能性のあることは片っ端から試してきました。工学部を受験したり、海外留学に挑戦したり、教職免許の授業を取ったり、起業家セミナーに出向いてみたり…。その中で偶然出会ったのが、今の研究分野でした。他の世界に顔を出したり、経験したからこそ、こんな勉強が、研究がしたい!と今では自信を持って言えます。
大学はいろいろなことに挑戦できる場所で、時間もたっぷりあります。今、将来やりたいことに悩みがある人は、少しでも興味を持ったことにはぜひ挑戦してみることをお勧めします。きっと、自分の青春をかけてでもやりたいと思えることに出会えるはずです。