銀河団という自然界において作られた真に芸術的で美しい姿に憧れた

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

兒玉 忠恭

1.現在、どんな研究をしていますか?

現在、主に次の二つのテーマに興味を持って、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡などを用いて研究を進めています。


(1)原始銀河団の形成と進化:
銀河は宇宙においてしばしば集団として存在し、銀河団と呼ばれます。これが宇宙史の中で、いつどのようにして形作られたのでしょうか?そしてその中で銀河は、周辺環境の変化に伴い翻弄されながらどのように進化を遂げたのでしょうか?我々は地球からできるだけ遠く離れた(つまり昔の)銀河団の祖先(原始銀河団)を探し、詳しく観測することによって、その形成史を紐解きます。現在の宇宙では不活発な楕円銀河が銀河団に多いことが知られますが、その棲み分けの起源も明らかにします。


(2)宇宙初期の大質量銀河の形成:
宇宙初期には先に小さい銀河が多数作られ、それらが合体しながら大きな銀河へと成長してきたと考えられています。したがってまだあまり時間が経っていない初期宇宙に大きな銀河を発見すれば、銀河形成論に強い制限を与えることができます。宇宙の最初期から加速的に作り始める必要があるからです。我々は独自に設計・開発した近赤外線の特殊フィルターによって初期の宇宙を探査し、最も遠方の大質量銀河を見つけようとしています。それは原始銀河団に見つかる可能性も高く、そのような環境での銀河形成の加速メカニズムも明らかにします。

2.興味を持ったきっかけは?

まずは単純に、銀河団という自然界において作られた真に芸術的で美しい姿に憧れたのが、私がライフワークとして銀河団を研究し続けているきっかけです。しかもその宇宙の大都市に住む銀河は、我々が住んでいる渦巻き銀河とは形も性質も違っています。それは一体なぜなのでしょうか?この麗しい姿を見ていると興味が掻き立てられます。また、我々が住む銀河系のような立派で成熟した銀河が、宇宙で一体いつ最初に生まれ成長したのか、という我々自身の起源にも関わる素朴な疑問がありました。これらの謎を解き明かすには、大型の望遠鏡を使って、より遠くのより昔の宇宙を覗き見て、どのようにできてくるかを直接この目で「見」たいと思いました。

3.メッセージ

天文学とは、宇宙規模の自然現象を解き明かす究極の自然科学です。また、より遠くを見ることにより過去の宇宙を直接調べることができる究極の考古学でもあります。それにより138億年もの宇宙史を解き明かそうとしています。我々の地上の世界から、目と顔を上に向けて無数の美しい星が織りなす宇宙を眺め、百億光年以上もの彼方からやってくる信号に耳をすませ、銀河系が、太陽系が、地球が、そして自分自身がどのように生まれ、なぜ存在するのか、これらの壮大な謎に、時にはしばし思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?