私たち多細胞生物では、受精卵、つまり1個の細胞が気の遠くなるようなプロセスを経て生物の形を作り上げていきます。例えば人体は60兆個もの細胞があつまってつくられています。しかしながら、ただレンガを積み重ねても建物が作れないのと同様に、細胞を寄せ集めただけではからだの形をつくることは出来ません。無秩序な細胞の塊に秩序を生み出すことで、始めて「細胞」は「生き物」になります。この神秘的な仕組みを紐解くために、「細胞」が「形」を作り始めるプロセスに注目して研究をしています。具体的には、研究に適した小さな生き物「キイロショウジョウバエ」が、幼虫(芋虫)から蛹の殻の中で成虫(ハエ)に変化していく様子を、蛍光タンパク質を利用したライブイメージングという手法で可視化して解析しています。蛹の殻を丁寧に剥くことで、個体が生きたまま、目や翅や脚や臓器が作られていく様子を細胞レベルで観察できます。