腰を据えて学び、研究に打ち込む、恵まれた環境

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

須田 誠

1.現在、どんな研究をしていますか?

固体中における電子の運動を、解析的な理論計算やコンピュータを用いた数値計算によって研究しています。私たちの身の回りで起こる現象の多くは、物質を構成する電子と、それらの間に働く電磁気的な相互作用によって生じています。特に、物質の中にはアボガドロ数のオーダーに及ぶ膨大な数の電子が存在しており、その集団としての振る舞いは、単一の電子からは想像もつかない多様な性質を示します。中でも、電子同士の相互作用が非常に強い場合には、元の構成粒子とはまったく異なる性質をもつ「粒子もどき(準粒子)」が現れることがあります。私の研究では、こうした準粒子がどのような条件のもとで現れるのか、またそれらがどのような形で物質中に存在し、実験的に観測可能であるのかを明らかにするとともに、その特殊な性質を活かして新しい機能性を物質に付与できる可能性について、理論的に探究しています。

2.興味を持ったきっかけは?

子どもの頃から、ものを作ることが好きで、電子工作などを行っていたので、半導体をはじめとする技術分野に自然と興味を持つようになりました。また、宇宙や素粒子にも関心があり、将来はそうした分野に関わることができればと、漠然と考えていました。高校時代には、物理の問題設定にやや現実感を持ちにくく、扱っている現象が具体的でイメージしやすい化学の方に惹かれていきました。大学受験のときには、化学系と物理系のどちらに進むか迷いましたが、もともとの興味は物理にあったことから、最終的には物理学科を選択しました。大学に入ってからは、素粒子物理学や宇宙物理学にも大きな魅力を感じた一方で、身の回りの現象としてイメージの湧く対象を扱いたいという思いも強く持っていました。そうした中で、ミクロとマクロをつなぐ統計力学の講義が非常に興味深かったこともあり、最終的に物性理論を選んだと記憶しています。

3.メッセージ

私は学生時代を仙台で過ごし、在学中に地震を経験しました。その後およそ10年間を首都圏で過ごしたのち、再び仙台に戻ってくる機会を得ました。久しぶりに戻ってみると、地下鉄の開通や青葉山キャンパスの整備など、街や大学の大きな変化に驚かされました。一方で、大学の中でスタッフや学生が研究や勉学に真摯に向き合う姿は、以前と何ら変わることがなく、その姿勢に大きな安心感を覚えました。流行やスピードが重視される現代社会において、学問の世界もまたその影響を受けつつあるように感じます。そして、その流れは時として、似通った失敗の少ない研究へと向かわせ、本当の意味での新しい発見を阻害してしまう側面もあるかもしれません。そのような潮流の中で、東北大学は忙しい都会から距離を置いた環境にあり、腰を据えて学び、研究に打ち込むことのできる、恵まれた環境を提供してくれる貴重な存在だと感じています。個人的には、東北地方の若い世代の皆さんに、首都圏に出ることだけを選択肢とするのではなく、ぜひ仙台で学問に打ち込むという道を選んでほしいと願っています。