どんなに小さな壁でもいいんです、挑戦する気概を持ち続けてください

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

須田 誠

1.現在、どんな研究をしていますか?

ガラスの内部で起こる、分子の「局在振動」を研究しています。ガラスや結晶といった固体の内部では、分子の振動によってエネルギー(熱)が輸送されます。分子が規則正しく配列する結晶では、分子振動は空間的に広がった波のようにふるまうので、それに基づいて熱輸送の理論を作ることができます。一方、分子が不規則に並ぶガラスにおいては、結晶には存在しなかった、空間的に局在化した分子振動が存在するため、うまく理論を作れていません。そもそもなぜガラスで局在振動が生じるのでしょうか。良くわからない現象に対しては極限まで単純化したモデルを考える、というのが物理学の常套手段です。私もこれにならって、必要最小限の要素からなる「ガラス的」な模型を解析し、局在振動の起源に迫ろうとしています。

2.興味を持ったきっかけは?

地震や火山噴火といった壮大な自然現象に心惹かれて地学専攻に入ったのですが、学部で色々勉強するうちに、巨大な自然現象の根本にあるひとつひとつの小さな物理過程に興味を持ちました。「素過程」と呼ばれるこれらの現象は、膨大な数が組み合わさることで豊かなダイナミクスを生み出します。自然現象が小さな構成要素から組み上げられる様を理解できたら楽しいですよね。はじめは暗中模索だったのですが、たまたま読んだ論文に興味を持ち著者の一人にメールを書いたところ、ガラスの振動現象を研究することを勧められ、現在の研究が始まりました。

3.メッセージ

手垢のついた表現ではありますが、登山と研究は似ていると日々感じています。私は趣味の登山の一環で岩や氷の壁を登るのですが、誰も登ったことのない魅力的な壁を見つけたときには、その壁をどうにかして登る策を考え、実行します(成功するとは限りません)。これは研究目標に対する効果的なアプローチを考え、それを試みることと同等なのではないでしょうか。未知への挑戦にはいつもある種の恐怖がついて回りますが、その分うまくいったときの達成感はひとしおです。病みつきになります。どんなに小さな壁でもいいんです、挑戦する気概を持ち続けてください。