ニュートリノという素粒子を観測することで、地球深部の理解を目指す研究をしています。ニュートリノとは素粒子の一種で、電荷を持たず非常に高い透過性を持ちます。そのため、発生した際の情報を保ったまま検出器まで到達します。地球内部の放射性物質の崩壊によって発生したニュートリノ(地球ニュートリノ)の観測を通して、地球深部の組成や構造、さらには地球形成の謎の解明が期待されます。
ニュートリノセンターが主導するKamLAND実験は1000トンの大容量液体シンチレーターと低バックグラウンド環境を活かして、2005年に世界初の地球ニュートリノ観測を行って以来、ニュートリノ地球科学という新分野を切り拓いています。私は実験で取得したデータを解析することで、ニュートリノが地球内部からどれくらい到来しているかを調べています。もちろんデータにはバックグラウンドが含まれており、シミュレーション等を駆使してそれらを精密に見積もることが重要です。最近は機械学習を用いて、分解能の向上や粒子識別を目指す研究をしています。
科学は子供の頃からなんとなく好きでしたが、明確に物理に興味を持ったのは高校生の頃です。身の回りの現象には普遍的な法則があり、それらを数式によって記述することができるという点に惹かれました。
ニュートリノに興味を持ったのは大学入学後です。ニュートリノは実は非常にありふれた素粒子で、例えば私たちの手のひらを1秒あたり約10兆個通過しています。しかし私たちがそれを感じることはありません。そんなニュートリノの性質を研究することは素粒子物理の発展に不可欠であり、私たちがこの宇宙の成り立ちを理解するのに重要なピースとなっています。またニュートリノはその性質を活かして、太陽や超新星を研究する天文学、地球の内部を研究する地球科学にも活用されています。このように多くの謎を解決できるニュートリノにロマンを感じました。
この世界には未だ多くの謎が満ちています。科学者たちは科学という手法を使ってそれらを明らかにしようとしています。東北大学は学生であってもその一連の研究に参加できる恵まれた環境です。
是非一緒に研究しましょう!