私の研究分野は素粒子論的宇宙論で、素粒子論と宇宙論との橋渡し的な分野です。宇宙がどのように誕生して現在の姿に進化したのかを理解するための研究をしています。具体的には、どのようにインフレーションが生じ、熱いビッグバン宇宙につながったのか、どのようにダークマターや物質反物質非対称性が生じたのか、どのように密度揺らぎが重力不安定性により成長し、星、銀河、銀河団といった宇宙の構造形成につながったのか、なぜ現在の宇宙膨張が加速しているのか、などについて調べています。これらの疑問は高いエネルギーにおける物理法則無しでは答えることができません。とくにダークマターは未知の素粒子で構成されていると考えられており、いわゆる素粒子標準理論を超える新しい物理の直接的証拠だと考えられています。逆に、さまざまな新しい物理の候補に対して宇宙論的な考察を加えることにより、地上実験では得られない重要な制限や新しい実験的予言や検証可能性へつながります。
小さい頃から宇宙、星、惑星に興味がありました。高校では物理の面白さにとりつかれ、大学では素粒子理論の研究者になりたいと考えていました。大学院入試に応募する際、素粒子論的宇宙論という分野があることを知り、これだ!と思いました。またその時までに宇宙は未知なる物質やエネルギーに満たされているということが分かってきており、「素粒子論的宇宙論」という分野が非常に魅力的に思えました。
これまでに多くの観測や実験によって宇宙論における標準理論というべきLambda CDM模型が確立しています。例えば、現在の宇宙におけるバリオン(ほとんど水素とヘリウム)、ダークマター、ダークエネルギーの存在量は非常に正確に測定されていますし、ごく初期の宇宙で生じたインフレーションと呼ばれる急激な加速膨張は、とても平らなポテンシャルを転がるスカラー場で良く記述することができることがわかっています。一方で、まだ全く分かっていないこともあります。たとえばダークマターやダークエネルギーの正体に関しては全くの謎に包まれています。この謎を解き明かすため、現在多くの実験や観測が進行中ないし計画中です。この自然の謎を解き明かすことに興味のある学生や研究員の方、ぜひ一緒に研究を行いましょう。歓迎いたします。