陽子・中性子でできている原子核に、第3の粒子「ハイペロン」を入れた新しいタイプの原子核「ハイパー核」を作り、その性質を調べています。なぜこの自然界には原子核が存在するのか。この極めて基本的な問いに、我々はまだ十分答えられていません。素粒子クォークが3個集まって陽子・中性子になり、複数の陽子・中性子が緩く結びついて原子核になる、という面倒くさいことを自然はなぜやっているのでしょう。原子核に陽子・中性子以外の粒子を入れるとどうなるのかを調べて、原子核が存在する根本的な理由を知りたいと思っています。
陽子・中性子でできている原子核に、第3の粒子「ハイペロン」を入れた新しいタイプの原子核「ハイパー核」を作り、その性質を調べています。なぜこの自然界には原子核が存在するのか。この極めて基本的な問いに、我々はまだ十分答えられていません。素粒子クォークが3個集まって陽子・中性子になり、複数の陽子・中性子が緩く結びついて原子核になる、という面倒くさいことを自然はなぜやっているのでしょう。原子核に陽子・中性子以外の粒子を入れるとどうなるのかを調べて、原子核が存在する根本的な理由を知りたいと思っています。
高校の物理で放物運動をやったとき、自然界はこんな簡単な原理でできていたのかとびっくりして感動したのを憶えています。それで物理学科に入りました。素粒子に興味があって、学部の授業で楽しそうに実験の話をする先生に惹かれて大学院でその研究室に入り、重たいニュートリノを探す加速器実験に加わりました。そのビームタイムの最後に、その先生の気まぐれ(実は深謀遠慮)によりビーム粒子をちょっと変更してデータをとったところ、何とそこに(ニュートリノと全く関係のない)日本初のハイパー核の生成が記録されていました。当時ニュートリノについては誰が実験しても新しい結果が出なかったので(当時は小柴先生のカミオカンデ実験が始まる直前でした)、存在しないかもしれないものを探すより、新しいタイプの原子核を次々作る方が楽しい!と思ってハイパー核の研究を始めました。でも初めは自分でもその研究の価値が分からなかったのですが、やっているうちに、ハイパー核が原子核物理学を変革するような将来性をもった重要なテーマだと確信するようになって、夢中になりました。
研究をしていると、ごくたまにですが、世界で誰も知らないことを発見することがあります。たとえ小さな発見であっても、今この自然界の真実を知っている人間は世界の80億人で自分だけなんだ、と思った瞬間にはゾクゾクします。その発見によって、人類の知が少しだけ広がったと思うと嬉しくてたまりません。日々大変なことも多いですが、これがあるから研究はやめられません。楽しいですよ!