生命観 -自分はどこから来たのか?-

青葉山の面々 - Message from Aobayama.

田村 宏治

1.現在、どんな研究をしていますか?

うちの研究室では、動物の形態がどのようなメカニズムで作られてくるのか、について研究しています。地球上にはさまざまな形をした動物がいますし、過去にも多様な形態の動物が地球上に住んでいました。手足の形をモデルとして動物の形態が作られるメカニズムの一端を解き明かしながら、過去や現在に生きる動物の形態の多様性が生まれる仕組みを考えて研究しています。

とはいえ実際には、そういうことを考えて研究をしているのは、大学院生をはじめ多くの若者たちです。わたしが「どんな仕事をしているか?」といえば、それらの若い人たちの考える研究をさまざまな面からサポートするのが、私の仕事です。一人ひとりが考え実証しようとする内容は果たして科学的な論理性が取れているか、取れたとしてどのような実験をすれば検証できそうか、出てきた実験データは何を意味しているか、そしてそこから何が議論できるのか、この一連の研究プロセスを一人ひとりと議論しながら進めていく、それがサポートの内容です。

2.興味をもったきっかけは?

発生学を学んだ大学院生のころから、指の数の決まり方に興味を持って「指の数など、自分の手の形はどうやってできてくるのだろう?」という素朴な疑問を解決しようと考えていました。2000年ころに、ガンギエイという動物の胚を見たときに「おそらく一生、発生学はやめないだろうな」と感動したのが、形態の多様性に興味を持つきっかけになったと思います。だって、マントのようなエイのヒレ、私たちの腕(前肢)と同じものなんですよ!

3.メッセージ

生物学は枚挙学(博物学)であって科学ではない、と言われたりもします。でもそれは、生物が複雑すぎて人間の理解が追い付いていない、あるいは対象に自分自身が含まれてしまっているがゆえに客観性が取れにくいだけであって、分子でしかできていない生き物の成り立ちや動きが科学的な論理性や法則性の元に説明されないはずがない、とわたしは思っています。そういう観点で生き物を見ることで究極には「自分はどこから来た何者なのか」をとらえる、おもしろいと思いませんか?