2022.05.16 | International Workshop “Exploring Quantum, Elements, and Life Interactions” Talk Slidesを掲載しました。
2022.05.02 | International Workshop “Exploring Quantum, Elements, and Life Interactions” Talk Slides and Videoを掲載しました。
2022.04.11 | 5月2, 9日に国際ワークショップを開催します。(International workshop will be held on May 2, 9.)
2022.03.09 | ホームページを開設しました。
約46億年前の地球誕生から現在に至るまで、地球は多くの気候・環境変動を経験し、生命もまた、それらの変動に適応・進化することで幾多の絶滅の危機を乗り越えてきた。そして現在、地球温暖化や海洋酸性化が顕在化してきたように、人間の活動は惑星地球のあらゆるサブシステムに重大な影響を与えはじめている。すなわち、大気や陸域・海洋、極域、そして生命圏に係る全てのサブシステムが、自然変動を遥かに超える加速度で一体的に変化している。この地球システムの大変動は、地球環境や生態系に依存する人間の生活に直接的にフィードバックすると考えられる。例えば、局所的な異常気象が多発する現象や、生物多様性の損失と生態系の崩壊、淡水や食料資源の枯渇、疫病の蔓延などが想定され、これらは人間の社会経済システムや文化的価値観の喪失につながりかねない。世界が全人類的に持続可能性を模索するなかで、今こそ我々は、「地球と人間とは何か?」という深淵なる問いを希求し、「地球システムの変動(ダイナミクス)と惑星限界とは何か?」を統合的な基礎科学の立場から定義・検証する必要がある。
本拠点は、PIが所属する大学院理学研究科、ニュートリノ科学研究センター、生命科学研究科、加齢医学研究所との連携・協力により研究を進める。具体的には、地球システムを構成する以下の4つの研究テーマに沿った学際研究を実施する。
2005年、かつて不可能とされた地球内部起源のニュートリノ観測を極低放射能大型観測装置KamLANDが世界で初めて実現し、「ニュートリノ地球科学」が創出された。本学の井上らは、主要なバックグラウンドである原子炉ニュートリノとの詳細な統合解析によって観測精度を格段に高め、地球内部での放射性熱生成の測定を可能とし、地球モデルへの制限をつけるなど、本研究分野を世界的に牽引している。地球内部の熱量と惑星寿命とは何か?本拠点では、KamLANDの検出器性能の改良と共に系統誤差をさらに縮小させることで、地球ニュートリノ観測精度の向上を図る。また、本成果を大気海洋物理学や生態学のデータと融合し、地球内部における熱生成と熱源分布を詳細に明らかにする。また、本研究は宇宙線から地球を守っている地磁気生成のエネルギー源の理解にもつながる。約1000年後にはゼロになるペースで徐々に弱まり続けている地磁気が、今後どのように地球の生命・生態系に影響してゆくかは、地球環境と人間社会の持続性を理解する上で極めて重要である。さらに、大陸地殻の影響の少ない海洋底での地球ニュートリノ観測によるマントル由来成分の直接観測を目指した検出器開発を進め、広範な学際基礎研究を推進する。さらに、コヒーレント散乱を用いた半導体デバイスによる超高感度低温検出器の開発や、方向有感ステレオ観測技術の開発に応用可能な次世代観測技術開発を進める。それらは、大規模噴火につながるマグマ上昇のアラートや原子炉の非破壊安全運転診断、違法核開発の監視といった安全・安心の確保など、地球環境と人間社会を持続可能にするイノベーションの創出につながる。
地球表層の約7割は海洋で覆われている。大気・海洋環境そして海洋生態系は人間活動とどのように結びつき、どのように変化してゆくのか?地球温暖化による海水面の昇温は、亜寒帯域における降水量増加と表層海水の低塩分化とリンクすることで、表層海洋の密度成層構造を顕著なものとし、鉛直方向の物質輸送や生態系ポンプの効率を低下させることが予想されている。その結果、表層の貧栄養化や中深層の貧酸素化が進行し、漁業資源を含む海洋生態系全体に甚大な影響を与えることが懸念されている。さらに成層強化は、海洋による過剰な熱や人為起源CO2の吸収効率にも影響を与える。つまり、海洋内の熱・物質輸送を制御し、温暖化の進行そのものにフィードバックすると考えられる。本学の須賀らは、全球観測網Argo(国際アルゴ計画)による200万点を凌駕する鉛直プロファイルのビッグデータを機械学習等により解析することで、大循環スケールからサブメソスケールまでの水温・塩分・密度の時空間変動の解明と予測に挑む。海洋による熱貯蔵を担う鍵プロセスを解明することで、統合的な地球システム予測精度を向上させ、各海域に特有の海洋熱波など異常現象発生メカニズムの解明を目指す。さらに、生態学班と連携して、国際アルゴ計画や人工衛星データから得られる溶存酸素、クロロフィル濃度、硝酸塩、酸性度、粒状有機物、放射照度などの変数を統合的に解析し、物質循環や生態系の維持・変動に成層が果たす役割を解明する。
生態系は、多数の生物種と環境要因が相互作用して駆動する巨大な複雑系である。「惑星限界」とは、生態系が人類に多様な恵みを提供し続ける機能が、人間由来の負荷に対してどれほど頑強であるかによって規定される。すなわち、生態系と人間との関わりに関する人新世の諸問題はみな、生態系の適応性・柔軟性の限界に他ならない。地球の生命・生態系は、変わりゆく地球環境にどのように適応・進化してゆくのか?生態学班では、環境DNA技術や人工衛星によるリモートセンシング技術を利用した局所域〜広域での生態系・生物多様性観測とその統計・数理解析により、巨大な複雑系である生態系の存続や発展を支えている階層性と多様性、適応・柔軟性について、これらの特徴が互いにどのように関係しているかを解明する。本学の近藤らは、全国規模での環境DNA観測網(ANEMONE)を主催し、全国60地点の沿岸及び湖沼・河川における魚類多様性の高頻度観測を行っている。この大規模な生態系データを活用するため、高次元性や非線形性、大きな観測ノイズの存在下においても利用可能なモデリング法を開発・適用し、観測データから生態系動態の基本的なパターンや階層間の因果関係、多様性と適応性・柔軟性との関わりを解明する。さらに、各階層の環境応答性や動態が、生態系の異なる階層を特徴付ける様々な多様性(生態系多様性、種多様性、遺伝的多様性)を決定する因果関係やメカニズムを追究し、惑星限界を規定する「生態系の適応性・柔軟性の限界」の決定機構やその変動を生み出すメカニズムの解明に挑む。
人新世における地球システムの人為的な改変・撹乱は、気温や大気二酸化炭素濃度では顕著に認められるが、その他の環境指標では必ずしも明確に捉えられていない。本研究では「人間(ヒト)の限界とは何か?」について追究する。ヒトを含むすべての生物は、時間の経過と共に老化し死に至る。一方で、すべての生物は、それを取りまく環境からの様々な入力(環境ストレス)に対応して恒常性を維持しながら生命を維持しており、環境要因は生物の老化過程に大きな影響を及ぼしている。本学の本橋らは、酸化ストレスや低酸素、感染や紫外線などの環境ストレスに対して、ヒト細胞内の各オルガネラの機能が果たす役割を最新の複合オミックス手法等により解析し、それらが組織や個体の老化プロセスに及ぼす影響の解明に挑む。
氏名(Name) :須賀利雄(Toshio Suga) 所属(Department):理学研究科(Graduate School of Science) 職名(Job title) :教授(Professor) 主たる研究分野(Main area of research): 大気水圏科学関連(Atmospheric and hydrospheric sciences-related) |
所属(Department) 職名(Job title) |
氏名 (Name) |
主たる研究分野 (Main area of research) |
理学研究科 (Graduate School of Science) 教授(Professor) |
掛川武 (Takeshi Kakegawa) |
地球生命科学関連 (Biogeosciences-related) |
理学研究科 (Graduate School of Science) 教授(Professor) |
稲垣史生 (Fumio Inagaki) |
地球生命科学関連 (Biogeosciences-related) |
ニュートリノ科学研究センター (Research Center for Neutrino Science) センター⻑(Director)・教授(Professor) |
井上邦雄 (Kunio Inoue) |
素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験 (Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics) |
ニュートリノ科学研究センター (Research Center for Neutrino Science) 特任教授(Specially Appointed Professor) |
William F. McDonough | 素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験 (Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics) |
生命科学研究科 (Graduate School of Life Science) 教授(Professor) |
近藤倫生 (Michio Kondoh) |
生態学および環境学関連 (Ecology and environment-related) |
加齢医学研究所 (Institute of Development, Aging and Cancer) 副研究所⻑(Vice Director)・教授(Professor) |
本橋ほづみ (Hozumi Motohashi) |
病態医化学関連 (Pathological biochemistry-related) |
2022.05.02, 05.09 | International Workshop “Exploring Quantum, Elements, and Life Interactions”