東北大学 大学院 理学研究科・理学部

Graduate School of Science and faculty of Science , Tohoku University

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【研究成果】すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功

概要

すばる望遠鏡では、太陽系外の惑星やその誕生現場である原始惑星系円盤などを直接撮像観測するプロジェクト SEEDS(シーズとはStrategic Explorations of Exoplanets and Disks with Subaru Telescopeの略号で、惑星・円盤探査を目指した、すばる望遠鏡による共同利用観測の戦略枠プロジェクト)が2009年から行われています。本研究科の天文学専攻 山田亨教授も加わっている国立天文台、東京工業大学、京都大学、大阪大学、東北大学、プリンストン大学(米)、マックスプランク研究所(独)、チャールストン大学(米)、NASAゴダード(米)他からなる研究チームは SEEDSプロジェクトの中で、おとめ座の方向、地球から約60光年離れた太陽型の恒星(GJ 504)を周回する惑星 GJ 504 bを、世界で初めて直接撮像法で発見することに成功しました。
今回新たに発見した惑星GJ 504bは、惑星の明るさから質量を推定する際に生じる不定性が小さく、質量推定の信頼度が極めて高いものです。さらにこの惑星は、これまで直接撮像された惑星と比較して、最も暗くかつ最も温度が低いことが分かっています。これらのことをふまえると、我々は「第二の木星」の直接撮像に、これまでで最も近づいたと言えるでしょう。これは、将来、地球のような小さく暗い惑星を直接撮像するための重要な試金石でもあります。
惑星GJ 504 bは主星から44天文単位離れた領域に発見されました。標準的な惑星形成モデルでは、このような「太陽のような主星から離れた領域(海王星以遠)」で巨大惑星が誕生することを説明することは困難です。SEEDSプロジェクトでは多くの原始惑星系円盤などにおいて同様の半径領域やさらに外側の領域で、隙間構造、渦巻腕構造、リング構造など「惑星存在の兆候」が数多く見られることを直接に画像で捉えています。これら一連の結果は、惑星形成過程において、従来の枠組みを超えた理論的なモデルが重要になることを示唆しています。
SEEDSプロジェクトでは最終的に約500個の恒星に対して観測が行われます。今後、SEEDSプロジェクトによる探査結果の統計が、惑星の誕生と進化の謎を理解する上でさらに重要な糸口を与えるはずです。


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図1:すばる望遠鏡 HiCIAO による、太陽型恒星 GJ 504 のまわりの低質量惑星 GJ 504 b の赤外線カラー合成画像。コロナグラフにより中心の明るい主星からの光の影響は抑制されていますが、それでも取りきれない成分が中心部から放射状に広がっています。右はノイズに対する信号強度を画素ごとに表わしたもので、惑星検出が十分に有意であること、主星のまわりの成分はノイズであることを示しています。(写真提供 国立天文台)

 ● SEEDSプロジェクト:SEEDS は 2009年に完成した新型コロナグラフカメラ HiCIAO (ハイチャオ) と補償光学装置を用いて、約 500 個の太陽近くの恒星のまわりの惑星や星周構造を直接検出することを目指すプロジェクトです。国立天文台・東京大学が中心となって推進しています。プロジェクトメンバーは約 120 名で、その3分の2が国内の関連研究者、3分の1が米欧の関連研究者からなる国際共同プロジェクトです。既に計画の 75% 以上の観測を順調に終えています。
現在までに GJ 758 およびアンドロメダ座カッパ星のまわりの巨大惑星の直接観測による発見に成功しています。また、ぎょしゃ座 AB 星、リック・カルシウム 15 星、HD 169142 星、SAO 206462 星、PDS 70 星、おうし座 UX 星、さそり座 J1604 星、HR 4796A 星、HIP 79977 星など、多数の星の周囲にある原始惑星系円盤の詳細な構造を明らかにしています。SEEDS で直接撮像された原始惑星系円盤では、遠方巨大惑星が発見される半径領域に空隙構造や渦巻腕構造が多く見られます。この原因として既に惑星が「円盤中に存在している可能性」があります。つまり、今回発見された惑星 GJ 504 b のように遠方で巨大惑星が生まれることは珍しくないのかもしれません。SEEDS プロジェクトの観測結果から、標準理論を越えた惑星系形成理論が新たに求められていると言っても過言ではありません。
 ●  HiCIAO (ハイチャオ) とは:系外惑星や星周円盤を観測するためには、すぐ近くにある明るい恒星からの光が邪魔となります。そのために、明るい恒星からの光を遮り、近くの惑星・円盤を検出するための特殊な技術、コロナグラフ、が必要となります。2009年7月に日本でも見られた皆既日食は、明るい太陽の光を月が遮る自然のコロナグラフと言えます。すばる望遠鏡には世界の8m 級望遠鏡に先駆けて専用コロナグラフ (CIAO:チャオ) が 2001年より設置されていました。今回、従来のコロナグラフだけでなく、いろいろな差分撮像 (波長、偏光、角度差分撮像法;いずれも明るい恒星からの光の影響を低減する手法) の先端技術も利用できるように開発されたのが新装置 HiCIAO (ハイチャオ) です。HiCIAO (ハイチャオ) は高コントラストコロナグラフ撮像装置 (High Contrast Instrument for the Subaru Next Generation Adaptive Optics) の略称です。

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