東北大学 大学院 理学研究科・理学部

Graduate School of Science and faculty of Science , Tohoku University

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【研究成果】安心への道のり~安定ヨウ素剤の配布服用と個人線量計測の検証

福島県田村郡三春町と東北大学大学院理学研究科の素粒子・核物理学講座原子核物理グループは、住民参加型の長期的な放射線モニタリングを主な活動とする、三春「実生(みしょう)」プロジェクトを2011年6月20日に立ち上げ、福島第一原発事故により発生した生活上の諸問題に取り組んでいます。
今年で4年目を迎えたこの活動で取得したデータを統合し、分析した結果を論文にまとめ、8月14日に英国の科学雑誌『Journal of Radiological Protection』に掲載されました。
この論文では、三春町が行った40歳未満の住民への安定ヨウ素剤投与のタイミングに関して、科学的な検証を行いました。また、初期の外部被ばくに於いてはテルル132の寄与が大きいことを明らかにし、事故直後の広範囲にわたる独自の土壌調査から、セシウム137とテルル132の放射能比に強い相関があることが分かりました。この知見にもとづき、2011年7月14日から継続的に行っている、個人線量計による学童の外部被ばく量の測定から、放射性雲が飛来し沈着した2011年3月15日からの外部被ばくの積算量を、テルル132の寄与も含めて推算しました。


論文のポイント

これは、2011年3月15日に起きた、福島第一原子力発電所の爆発事故で飛散した放射線に関する三春町の取り組みと東北大学が収集したデータの評価を行い、論文として公表するものです。
福島県三春町は、この事故の直後から、大気中に放出された放射線量に関するデータを収集し、独自の解析判断を加えて、ヨウ素剤を配布する等、町民の放射線予防防護に努めました。
また、これら東北大学大学院理学研究科チームと三春町住民の手による草の根の測定値は、実生プロジェクトの下、記録して残されました。我々はこれらのデータ群の範囲内で自己矛盾のない解析を行いました。
未だ100mSv以下の低レベル放射線に長期間晒される危険性については、国際的に科学的コンセンサスは得られていません。我々は、実生プロジェクトを通じて、住民と自治体が連携した持続的なモニタリングの可能性を実証して見せました。この手法を継続して、今後10年に渡り個人のモニタリングを継続することが重要であると考えております。
ここに明らかにするデータ群が世界中の専門家に共有され、精査・研究されることを願ってやみません。


【 概 要 】
本論文は下記五項目から成る。

1. 導入:実生プロジェクト
安定ヨウ素剤の配布・服用の経緯及び実生プロジェクトの立上げとその活動趣旨。
2. ガイガーカウンターによる最初期の放射線測定
最初期のデータ収集と安定ヨウ素剤服用指示のタイミングの検証。
3. 表土試料中のテルル132/セシウム137比の測定。
セシウム137の測定値からテルル132との相関性の解析。
4. 校庭の土壌試料の測定
土壌試料のデータ解析によるヨウ素131の検出測定。
5. OSL線量計による外部被ばく個人測定
住民の外部被ばくモニタリングの課題と測定値データの解析。


20140819161343.jpg テルル132、129 m、ヨウ素131、そしてセシウム134、136、137 の放射能比。横軸は試料を測定した日時。2011 年3 月15 日16:00 に戻した時の強度比。ヨウ素131 とテルル132 のグラフの縦軸は対数表示。


20140819161457.jpg 実生プロジェクトにより収集されたデータ群と当論文で論じた放射性核種の10 半減期の関係。A: 佐久間夫妻によるガイガーカウンター測定。B: 高速道路沿いの表土試料調査。C: 三春町の校庭の表土試料調査。D: OSL線量計を用いた個人測定(進行中)。E およびF: 三春の生徒たちのWBC 調査。大半はD にも参加。

※データの転載を禁じます。


IMG_0167.JPG 2014年8月9日に行われた記者会見の模様:左から鵜養美冬助教、田村裕和教授、鈴木義孝三春町長、玄侑宗久住職、深谷茂氏、小池武志准教授


お問い合わせ先

三春町役場 総務課 企画情報グループ 志賀 清昭
  電話番号:0247-62-8125
  Eメール:kiyoaki.shiga[at]town.miharu.fukushima.jp
東北大学大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室 陶山 香奈子
  電話番号:022-795-6708
  Eメール:suyama[at]mail.sci.tohoku.ac.jp
※[at]を@に置き換えてください。

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