東北大学 大学院 理学研究科・理学部

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【受賞】多元物質科学研究所 南部雄亮助教が第12回日本中性子科学会「奨励賞」を受賞

物理学専攻 分光物理学講座 スピン量子物性(協力講座:多元物質科学研究所)の南部雄亮助教が「中性子散乱を用いた次元性の異なる物質からの鉄系超伝導へのアプローチ」により第12回日本中性子科学会「奨励賞」を受賞しました。
本賞は、日本中性子科学会の正会員で、中性子科学に関して優秀な研究を発表した若手研究者に授与されるものです。


■ 賞 名:第12回日本中性子科学会「奨励賞」
■ 受賞日:2014年12月11日
■ 受賞テーマ:「中性子散乱を用いた次元性の異なる物質からの鉄系超伝導へのアプローチ」
■ 授賞理由:
南部氏は鉄系超伝導体の類縁化合物について中性子散乱を主な手法とした物性研究を行ってきた。具体的には、三次元的な鉄ヒ素ネットワークを有するCaFe4As3 において、不整合磁気秩序を発見し、その周期とバンド計算の結果の比較から、フェルミ面のネスティングの重要性を明らかにしている。はしご型の鉄セレンネットワークを有する BaFe2Se3 においては、平行に揃った磁気モーメントを有する Fe4 クラスターが形成され、それが反強磁性的に配列するような特異な磁気構造を発見した。その一方で、同系構造を有しながら価電子数を変化させて鉄の形式価数を半整数とした CsFe2Se3 においては、踏み桟方向の Fe イオン対内で磁気モーメントが平行に揃い、それが段方向に反強磁性的に配列する磁気構造に変化していることを明らかにした。
銅酸化物高温超伝導体の発見以降、超伝導現象と系の次元性の関連が指摘されてきた。しかし、これまでに見出された鉄系超伝導体がすべて層状構造物質であることから、二次元系でないネットワークを有する鉄系化合物の物性研究はあまり進んでいなかった。南部氏によって得られた上記の成果は、鉄ヒ素あるいは鉄セレン化合物において結晶構造の次元性が電子相の形成に与える影響を明瞭に示している。これらは、強相関電子系の分野の研究者から、鉄系物質における超伝導の発現機構の理解にとって有用なものであると認識されており、招待講演も複数行っている。以上の理由により、南部氏の業績は、中性子科学会奨励賞にふさわしいものと認められた。


○ 日本中性子科学会
○ 多元物質科学研究所 無機材料研究部門 スピン量子物性研究分野

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