東北大学 大学院 理学研究科・理学部|アウトリーチ支援室

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2011年11月24日取材

2011年度 資源地質学会若手会 秋季巡検に参加して

9月22日(木)から24日(土)の3日間、2011年度 資源地質学会若手会 秋季巡検として、秋田県北鹿地域の黒鉱鉱床の見学会が行われました。この地域の黒鉱鉱山や周辺の岩石を観察することが 主な目的です。今回、「現場のフロンティアサイエンス」でお世話になっているGCOE研究員の山田亮一さんが、案内者に入っていることもあって、我々取材班も同行させていただきました。
資源地質学会若手会というのは、今回の巡検を企画された野崎さん(海洋研究開発機構)、実松さん(産業技術総合研究所)らが中心となって、資源地質を研究する若手が増えてきたこと、これからは学会の運営も若手が中心にならなければいけないとの考え方から、2009年度に発足しました。年に1回野外巡検を行っており、これまでに九州地方の四万十帯の地質巡検や、釜石鉱山で巡検を行っています。今年は、若手会のみなさんが秋田県北鹿地域の黒鉱や、黒鉱を含む地層に興味があるということで、この地域に長く勤務された山田亮一さんが案内するということになり、最終的に東京大学、九州大学、産総研、JAMSTEC、JOGMEC、秋田大学などから総勢25名の参加がありました。
黒鉱鉱床というのは、昭和30年代の初めに、それまでの常識を覆す品位、規模を持つ鉱床が次々と発見され、黒鉱ブームと呼ばれて、昭和40年代には盛んに研究されていましたが、オイルショックやプラザ合意に伴う円高や採鉱コストの上昇でほとんどの鉱山が閉山し、現在まで黒鉱の研究を続けている人は少なくなっていました。しかし、最近、海底で発見された熱水鉱床が黒鉱にそっくりであるこが知られてくると、若い研究者達が再び興味を持ちはじめ、今回の黒鉱巡検という流れになりました。
今回、最初に訪れた小坂鉱山は、日本で最初の黒鉱として露天掘りされた鉱山であり、黒鉱発祥の地です。黒鉱巡検する際には、まず、第一に押さえなければならない地です。次に訪れた松峰鉱山試料室には、現在は閉山して観察することができないたくさんの黒鉱試料が収蔵されています。鉱山会社の正確な地質情報を始めとして、地下の情報が立体的に集まっており研究資料として有効です。参加したみなさんは、今ではとても貴重な黒鉱や図面をさかんにカメラで撮影していました。
最後に、花岡鉱山の観音堂露頭を訪問しました。この場所は海底熱水鉱床と同じ黒鉱のチムニー(煙突)の構造を見ることができます。案内人の1人の本学の長谷川樹(M1)さんの研究対象になっている場所でもあります。みなさん、良い試料を採ろうと暗くなるまでハンマーをふるう姿があちこちで見られました。
東北大学では、分散しつつある黒鉱のデーターの集約に力をいれており、自然史標本館にもその一部が展示されています。これらの試料は実は大変貴重なものなのです(自然史標本館に行ったら只の黒い石と思わないでね)。日本近海には、多くの海底熱水鉱床が見つかっており、資源の少ない日本ではレアメタルを含んでいる海底熱水鉱床が今、大いに注目をあびています。黒鉱鉱床は、化石化した海底熱水鉱床であり、黒鉱を調べることで海底熱水鉱床の全体像やその成り立ちがわかると期待されているのです。
なお、今回の巡検は、環境科学研究科の小坂分室を宿泊施設として利用しました。ここは、学生や教職員のフィールドワークの拠点となっています。



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