東北大学 大学院 理学研究科・理学部|アウトリーチ支援室

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2017年7月 5日レポート

【広報サポーターレポート】6月17日 (土) ぶらりがく「光を操る・光で操る -時間分解分光の世界-」

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今回は6月17日(土)開催「ぶらりがく」の様子を中尾美紗子(理学研究科地学専攻修士1年)がお伝えします!

 6月17日(土)、東北大学理学研究科合同C棟2階青葉サイエンスホールにて、ぶらりがくが開催されました。今回は一般の方を対象に「光を操る・光で操る -時間分解分光の世界-」と題し、物理学専攻の吉澤雅幸教授より分光学の最先端研究についてわかりやすく紹介していただきました。分光学とは、スペクトル(色)から物質の電子状態を調べる学問です。当日は幼稚園生から大人まで幅広い年齢の約50名の方が足を運んでくださり、回折格子を用いた実験等を通して、光を操る方法やその利用法について学びました(図1)。


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図1:講演の様子

 まず始めに今回のテーマである「時間分解分光」についてわかりやすく教えていただきました。「時間分解分光」と言うと少し難しく聞こえますが、一口で言うならば「スペクトル(色)を用いて物質の時間変化を測定する」ということです。最近は、分子の振動周期とほぼ同じ時間スケールに相当するフェムト秒(1000兆分の1秒)領域の時間変化を測定することができるそうです。時間分解して観測するメカニズムは、中学校で習ったストロボ写真を撮るのと同じ仕組みだというお話を聞き(図2)、大人の皆さんは、昔学校で習った分光学が最先端研究で応用されていることに懐かしさ半分、驚き半分の様子でした。


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図2:ストロボ写真の仕組みを紹介する装置

 次に「光を操る」ということで、色を取り出すために、回折格子を用いて白熱電球やLED電球のスペクトルの違いを見る実験を行いました(図3)。参加者には1人1つ回折格子が配られ、照明を暗くした部屋で回折格子を覗きながら実際にスペクトルを確認していました。実験中にスペクトルの違いがよくわからなかった子も、講演後再び電球の光を回折格子で覗きながら「ああ、本当にちがう!」とその違いを確認し、自分なりに納得しているようでした。実際の研究では、コンピュータでスペクトルを読み込み、物質の電子状態を見ているそうです。また、身の回りで光を操る例としてレーザーを取り上げ、光を強める仕組みや、色を変える非線形光学に関するお話もありました。


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図3:回折格子で電球のスペクトルを見る様子

 最後に、「光で操る」ということで、光の熱や運動量、エネルギーが産業的に利用されていることを教えていただきました。また、最先端の研究である光合成初期過程に関するお話も紹介していただきました。小学校で習うような誰もが知っている光合成の効率的な仕組みが研究対象としてとても奥深いことを教えていただき、子どもから大人まで深く考えさせられる濃い内容でした。講演後には待ち時間が出るほど、吉澤教授に多くの人が質問を寄せていました。
 講演の最後、吉澤教授より「光と物質の多彩な関わり合いは無限の広がりをもつ」というお話がありました。家に帰ってからも蛍光灯やイルミネーションを回折格子で覗きながら、光の無限な可能性について考えてみてはいかがでしょうか。


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