2019年3月28日 レポート
3月8日(金)化学専攻 河野裕彦教授 最終講義
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3月8日(金)、理学部大講義棟にて、化学専攻 河野裕彦教授の最終講義「超高速分子ダイナミクスが誘う世界」が行われました。当日は学内の研究者、学生はもちろん、遠方からもたくさんの方々がご聴講されました。河野先生は山形大学工学部を経て、東北大学に着任されました。その間の研究の遷移をわかりやすくご講演されました。
また2009年6月〜2011年3月まではアウトリーチ支援室の室長、2013年度は当広報・アウトリーチ支援室の副室長として、広報・アウトリーチ活動にもご尽力いただきました。2015年には ぶらりがく でも「9月26日(土)理学部キャンパスツアー「3D映像で分子のナノワールドを読み解く―DNA分子の鎖切断シミュレーションと動画公開―」と題し講座を開催いただきました。3D映像を見る小学生の好奇心旺盛な様子に、目を細めていらっしゃった河野先生の姿が印象的でした。
河野裕彦先生よりメッセージをいただきました
私は東北大学大学院理学研究科化学専攻で1981年に学位を取り、アリゾナ州立大学の博士研究員、山形大学工学部助手を経て、1991年東北大学教養部に助教授として着任しました。1993年の教養部廃止後は、理学部に分属することになりました。1995年の大学院重点化を機に、藤村勇一教授のもと新しく立ち上がった数理化学研究室に所属し、量子反応動力学や反応の光制御を対象とした研究をグループ全体で推進する機会を得ることになりました。
私は在学中から長い間、理論化学の分野を中心に研究を進めてきました。とくに様々な化学反応の機構を時間的・空間的な視点から明らかにするコンピューターケミストリーという分野に携わってきました。ただ、1970年代の学生時代は、片平の大型計算機センター(現在のサイバーサイエンスセンター)に赴き、パンチカードに穴をあけ、プログラムの一行一行をカードリーダーに入れていた時代で、今のコンピューターの能力やそれを取り巻く環境は想像さえもできませんでした。当時は情報教育整備の萌芽期であり、Fortran言語の習得からプログラミングまでほとんど自己流でした。
学生時代の研究は、分子の電子励起状態のエネルギーが振動エネルギーに変換していく速度の計算でした。これは分子の多自由度の振動をすべて調和振動子で近似するという今では少し荒っぽい方法であり、解析的な解を導くことが主要な目的でした。コンピューターは、得られた解析解を数値にするために使われていただけでした。その後、アメリカでの博士研究員の時代に、任意のポテンシャルをもつ分子振動に対する時間依存シュレーディンガー方程式を数値的に解く手法を習得し、1980年代後半からA.H. Zewail(1999年ノーベル化学賞受賞)らが精力的に進めていたポンプパルスで始動された光化学反応をフェムト秒のプローブパルスで検出するというフェムト秒分光に適用していきました。化学反応の時間分解の実験結果を時々刻々と変化していく分子中の原子の位置を計算することによって理解することができ、次のステップをいろいろ考えるようになりました。
そのような中、1990年代の後半からは、高強度レーザー光と分子との相互作用に関心を移しました。具体的には、強い振動電場によって駆動される電子のダイナミクスや化学結合の組み換え(解離や反応)に対する実時間動力学法を開発し、様々な分子を対象にシミュレーションを行ってきました。クーロン力と拮抗するような力を分子中の荷電粒子に及ぼす強い光の強度領域では、これまでの摂動論領域では全く見られない非摂動論的現象が観測されています。その1つが、クーロンポテンシャルがレーザー電場によって歪まされ、形成された障壁を電子が透過するトンネルイオン化です。通常の多光子吸収によるイオン化の確率は、振動数が高くイオン化に必要な光子数が少ないほど、大きくなります。これに対して、トンネルイオン化の確率は、同じ光強度なら、光の振動数が低いほど大きくなるというユニークな特徴があります。このような電子のダイナミクスを理解する根本的な手法として、私たちは多電子の相関を取り込んだ多配置時間依存ハートリー・フォック法を世界に先駆けて開発し、トンネルイオン化に及ぼす電子相関の重要性を明らかにしてきました。
近赤外の高強度レーザーは、化学反応を操作する道具としても、その役割は大きくなってきています。そのようなレーザーは、分子の電子遷移や振動遷移とは共鳴していませんが、その強さのため電子や原子核を大きく動かし、イオン化を経て、結合の切断や組み換えを引き起こします。振動数、光強度に加えて、光電場の位相を操作した波形整形パルスによる反応制御も実験的に行われています。私たちは、強レーザー場中の反応を記述できる時間依存断熱状態法を開発し、小さな分子からC60 のような大きな分子まで、その高強度レーザーによる励起から反応に至る全過程を追跡してきました。その結果、反応過程が光電場に誘起された非断熱遷移による電子励起状態間の移動に支配されていることが明らかになりました。また、大きな分子の反応は初期励起のエネルギーだけに依存し、統計的に起こると考えられていましたが、波形整形パルスを使うと特定の振動モードを選択的に励起することが可能であり、生成物の収率や分岐比を変えることができることを理論的に裏付けることができました。
このような多自由度系の「分子制御」の成否は「分子マシン」につながる重要な過程で、分子科学の大きな課題になってきました。近赤外高強度レーザーを溶液に照射すると、ラジカルなどの反応種を生成しますが、その発生量やエネルギーを調整できることにも注目が集まっています。近赤外高強度レーザーを使うと、水溶液中で発生したヒドロキシルラジカルがDNAにどのような損傷を及ぼすかを詳細に調べることができ、実験と理論が融合したさらなる展開が期待されています。化学反応を時間軸で理解する化学反応動力学シミュレーションの萌芽期から40年以上この分野に身を置くことができ、その発展と将来の展望を見届けることができたことは、幸運だったと思っています。
私は、東北大学で教育を受け、本学で28年間教鞭を執り、数理化学研究室の教員・学生とともに自分たちのアイデアに沿って研究を進める機会を得ました。その間、教養部廃止、大学院重点化、法人化などが行われました。教養部廃止後、化学系以外の教員の皆様とも分野横断的な議論を進めて、自然科学総合実験を立ち上げていったことが懐かしく思い出されます。今後も東北大学は様々な変革を経ることになると思いますが、研究の理念を自ら問える新しい発想を持った学生を輩出して、さらに飛躍していくことを祈ります。
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化学専攻の大槻幸義先生より
河野先生へのメッセージをいただきました
河野先生はレーザーパルスなどの外場により駆動される分子ダイナミクス、特に強レーザー電場が引き起こす新規ダイナミクスの解明に精力的に取り組んでこられました。気相分子からDNAまで幅広い分子およびその現象に対し、理論シミュレーションを駆使した手法により多数の研究成果をあげるとともに、分子科学におけるリーダーとして研究分野を開拓し続けてきました。私は、河野先生が東北大学に着任されてから約20年同じ研究室に所属し、深夜まで研究に没頭され、とことん探求する姿を間近にみることができ、研究者としての教えを受けることができました。一方、研究室は非常に自由で、スタッフ・ポスドク・学生はのびのびと楽しく研究できていたと思います。また、研究室旅行をはじめとするイベントでは河野先生が率先して料理・お酒の吟味をしてくださり、皆でおいしくまた楽しく味わうことができました。そのような雰囲気でしたので、最終講義後の研究室同窓会においても多数の卒業生が集まり、学生時代の思い出話で大いに盛り上がりました。この度はご退職ということで一つの区切りを迎えるわけですが、河野先生は研究においても教育においても現役を続けられると伺っております。お元気でますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。我々も河野先生からのご薫陶を胸に、それぞれの立場で一層精進して参る所存です。
2019年3月26日 レポート
3月8日(金)生物学科 西谷和彦教授 最終講義
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3月8日(金)、地学・生物共通講義室にて、生物学科 西谷和彦教授の最終講義「なぜ私は植物細胞壁の森に分け入ったのか」が行われました。本講義では、生い立ちや、幼少期に影響を受けたテレビ番組、書籍のエピソードなど、幅広くお話をしてくださいました。当時の写真も紹介いただき、終始ユーモアを交えた温かい雰囲気の中、講演は進められました。講義終了後には、西谷先生の長年にわたる研究・教育に対するご尽力とご功績に感謝と敬意を込めて、惜しみない拍手が送られました。
西谷和彦先生よりメッセージをいただきました
1997年6月に理学研究科生物学専攻に着任しまして、爾来21年9ヶ月間、青葉山の生物棟で研究と教育を行ってきました。着任4年後には生命科学研究科が設置される一方、青葉山キャンパスには農学研究科が移転し、地下鉄が開通するなど、東北大学は大きく変わりましたが、青葉山の生物学教室は連綿と続いてきました。
私は、1975年に学部の卒業研究として植物細胞壁の生理機能に関する研究を始めて以来、一貫して、植物細胞壁をテーマとして研究を続けてきました。1992年に植物細胞壁の力学的特性を決める多糖分子であるキシログルカンを繋ぎかえる酵素を発見しEXTと名付けました。東北大学に着任後は、EXTをコードする遺伝子の分子生物学的な解析を進め、2001年には、EXT遺伝子が多重遺伝子族を形成していることを明らかにし、XTHファミリーと命名しました。XTHファミリーメンバー間の役割分担の解析を通して、植物細胞壁の構築・再編に関する新しい細胞壁動態モデルを提唱してきました。
2005年以降は、XTHファミリーだけでなく、数千種と推定される細胞壁関連遺伝子群を視野に入れた包括的な研究を開始しまして、その方法論を世界に先駆けて確立できました。これら一連の植物細胞壁の包括的研究を更に展開するために、2012年に科学研究費補助事業の新学術領域研究「植物細胞壁の情報処理システム」が発足し、その領域代表を務めました。このプロジェクトは国内で植物細胞壁を研究する主要な37研究室が参画する空前のオールジャパンのチーム編成となり、研究者コミュニテー形成に寄与したと自負しています。このプロジェクトの特筆すべき研究成果の一つは、植物細胞壁の骨格分子であるセルロースを繋ぎ変える新奇な酵素の存在を明らかにし、細胞壁構造モデルを刷新したことです。もう一つの成果は、植物細胞壁高次構造そのものが、情報としての機能を担い、植物の高次機能を統御する細胞装置であることを様々な事象より実証できたことです。文字通り、新しい学術領域を切り拓くことができたのではないかと思っています。
東北大学の青葉山で22年間に亘り、学生諸君やポスドク、生物学教室の皆さんと共に、植物細胞壁の研究と教育を進めな街ら、学問を楽しむことができましたことを、心より嬉しく、また誇りに思い、理学部の皆様に深く感謝しています。
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生命科学研究科の横山隆亮先生より
西谷先生へのメッセージをいただきました
西谷先生は平成9年に東北大学で植物細胞壁の研究を中心とした新たな研究室を立ち上げられました。西谷先生は、その時既に、細胞壁の構築・再編を担う酵素であるEXTを発見され、細胞壁が細胞を覆う単なる固い壁ではなく、細胞伸長などで重要な役割を果たす動的な細胞外器官であることを証明されていました。これらの研究成果によって、細胞壁研究の第一人者となられた先生の満を持しての研究室の立ち上げだったと思います。私は翌年に先生の研究室の助手に着任し、それ以来21年間、先生のご指導を頂いてまいりました。当初、私は分子遺伝学を専門としていたこともあり、西谷先生が築き上げてきた細胞壁酵素の生化学的な研究に貢献できるかに不安があったことを覚えています。しかし西谷先生は、それまでの研究手法だけに固執することなく、研究目標を達成するためには、常に新しい技術を導入し、多面的な研究アプローチで研究を進めて行く方針であることを説いて下さりました。この先生の研究方針のおかげで、私は自分の専門分野を活かして細胞壁研究をスタートすることができました。また同様に、その後も研究室の多くのメンバーが様々な研究アプローチで細胞壁の機能解明に挑戦できたことで、本研究室で細胞壁の研究が大きく展開できたのだと思います。長い間、ご厚情とご指導を頂いてきたことを深く感謝しております。今後も益々のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
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2019年3月22日 レポート
3月15日(金)地学専攻 海保邦夫教授 最終講義
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3月15日(金)、理学部大講義棟にて、地学専攻 海保邦夫教授の最終講義「地球生命環境史:7大事件から読み解く」が行われました。海保先生には、理学研究科のニュースレター最新号、アオバサイエンティア No.32 の特集ページにもご寄稿いただいております。タイトルは「大量絶滅の発生メカニズム」。こちらも併せてご覧ください。
海保邦夫先生よりメッセージをいただきました
最終講義では話さなかったことですが、在職中に印象に残った経験を3つ紹介します。ひとつは、若手研究者だった頃のことです。研究員としてスタンフォード大学にいた時に、同じ建物にいた著名な教授の本を面白くて一気に読みました。それまでローカルな研究をしていましたが、これにより、視野がグローバルに広がりました。チューリッヒ工科大学(ETH)で研究した時も、有名な教授が近くにいるだけで、影響を受け、研究のやり方を見つけました。ETHの別の教授(受入教員)からは、深海掘削の試料を研究することを勧められ、東北大学へ着任後、それをグローバルに研究しました。これらの結果、1990年代に、2回目のスタンフォード大学滞在時と東北大学で多くの論文を書きました。
2つ目は、専門の研究材料(底生有孔虫化石)でわかることはわかったので、新たに堆積有機分子を研究材料として選び、大量絶滅など地球史重要事件の謎解きをするようになった頃2000年代のことです。世界中に地質調査に出かけ、堆積岩試料を採取しましたが、一番多く出かけた中国でのことです。お世話になった大学では、若手研究者を欧米の著名な教授の元で研究させることにより、研究業績を上げ、有名な雑誌に載ると褒美がもらえる環境で、日本の大学を抜いて行ったことを間近で見た事です。
3つ目は、最近のことです。2016年に「すすが恐竜を絶滅させた」という論文と2017年に「小惑星衝突場所がずれていたら恐竜は絶滅しなかった」と言う論文を発表しました。米英豪日のメディアがこれらの論文の記事を書きましたが、その中で2017年の論文に関するニューヨークタイムズの記事には、米国の2名の研究者の反論が載っており、最後に私の証拠が書いてありました。有名な雑誌に載った米国で強く信じられている、白亜紀--古第三紀境界のすすの森林火災起源説に反する事実(小惑星が衝突した堆積岩中の有機物の不完全燃焼によりすすが成層圏に入り太陽光を遮断し寒冷化と低緯度で砂漠のような降水量をもたらしたことにより、恐竜やアンモナイトなどが絶滅した)を論文発表したからです。米国の地球化学の教授から、「今、ニューヨークタイムズの記事を読んだけど、あなたの方が正しいと思う」というメールが来ました。昨年は、米国の別の教授から送られて来た論文原稿に、森林火災起源説を信じて書いた段落があったので、コメントしたところ、再送された原稿ではその段落は削除されていました。
このような貴重な経験をさせていただいた方々に感謝します。
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東京大学理学系研究科の高橋聡先生より
海保先生へのメッセージをいただきました
私は、東北大学の大学院生時代より海保先生にご指導頂き、学位を取得した後も共同研究を続けて参りました。合わせて十数年のお付き合いで、数々のご指導頂きました。海保先生は、顕微鏡で観察する小さな動物プランクトンの化石(有孔虫)の形態や群集を扱う研究と地層から得た堆積物の化学分析を行う研究を行い、過去の地球の歴史上の大きな変動時期について詳細を理解することに大きな貢献をされてきた方です。最近では、地質サンプルから実証的に明らかにした研究内容をベースに、数値モデル実験の共同研究にも取り組み、遠い過去の大量絶滅事件を現代地球環境の尺度で比較して考える大変刺激的な研究成果も挙げられています。数多くの国際誌論文が公表されており、その名前は世界的に知られ、日本を代表する研究者として主要学会からも高い評価を得てきました。研究と教育活動で挙げた業績はそれだけではないでしょう。研究室には、多くの学生や研究者が集まり、活気ある研究活動が展開されました。海保先生は、退職される最後の年まで自分の分析は自身で手を動かして行い、寡黙ながらその姿勢で若い学生の研究活動を鼓舞してこられました。3月はじめ、先生の退職を前に多くの卒業生がそれぞれの感謝を伝えるために仙台に集まりました。先生と様々な活動を通して刺激を受け、今も活き活きと活動する若い世代の面々がもうひとつの成果ではないでしょうか。
これからは同大学の名誉教授として、引き続き研究論文をまとめることに取り組まれていくことと思います。忙しい大学業務から離れて研究に集中されることで、さらに興味深い発展研究が生まれることでしょう。余裕ができた時間で、趣味であるメダカの飼育と散歩の時間を大事にして頂き、これからも健康でご活躍されることをお祈り申し上げます。
東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻
高橋聡
2019年3月19日 レポート
2月15日(金)理学・生命科学研究科 合同シンポジウム2019 -学生・若手研究者の連携による学術的研究の創出-
2月15日(金)、理学研究科合同C棟2階にて、東北大学大学院理学研究科・生命科学研究科 理学・生命科学研究科 合同シンポジウム2019 -学生・若手研究者の連携による学術的研究の創出- が開催されました。
東北大学大学院 理学研究科では、新学術領域における学生・若手研究者の連携による学際的研究の創出・創生・創造・展開を目標に、教育研究活動の一環として、異分野間の交流を図るため、2007年度から東北大学大学院理学研究科の6つの専攻(数学専攻、物理学専攻、天文学専攻、地球物理学専攻、化学専攻、地学専攻)、2016年度には新たに生命科学研究科を加え合同シンポジウムを開催してまいりました。この合同シンポジウムでは、大学院生が主体になり企画・運営を行い、教員がサポートしています。
ポスター発表者の方々全員に一分間のショートプレゼンテーションをし、聴講者は優秀なショートプレゼンテーションに投票。その結果、今年度は6名の方々に「優秀ポスター賞」が授賞されました。
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学生企画委員長 辻本 克斗(生命科学研究科 博士課程後期2年)
この度、理学・生命科学2研究科合同シンポジウム2019の学生企画委員長を拝命しました辻本克斗です。本シンポジウムは2008年から始まり、理学研究科の6専攻に生命科学研究科を加えた7分野合同シンポジウムとしては3度目の開催となりました。
このシンポジウムの大きな特徴として、聞き手のほとんどは科学に携わっていない人でもないし、一方で同じ分野で興味や問題意識を共有している人でもないということです。特に口頭発表においては、内容を一般向けに噛み砕きすぎても、専門的すぎても実のある議論は難しいという条件のなかでしかも限られた時間の中で発表しなければなりません。発表の中にはそういうことを明らかに意識して作られた素晴らしいものがいくつかあり、多くの人にとって非常に勉強になったことと思います。
ポスターセッションでは、各人が1分間でポスターの紹介を行うショートプレゼンテーションに引き続き、ポスター発表では昼食の提供もあり会場は活気に満ちていました。ポスター発表では聞き手に応じて説明を変えられるという利点もありますが、一方で発表の時間も口頭発表以上に限られています。その中で研究成果のエッセンスを伝えられている研究が多かったと思います。
現代では、研究分野が細分化される一方で、他分野同士のコラボレーションによる新たな知の構築が重要性を増しています。そのためには、自分の専門を掘り下げつつも、様々なことに興味を持ち勉強を続けていかなければなりません。このシンポジウムは、上記のように発表者の工夫も必要ですが、同時に、研究に携わっている聞き手が試される場でもあります。どれだけ多くの発表を理解し、面白いと思うことができるか。発表する側もそれを受け取る側も、ぜひチャレンジしていただけるとこのイベントがさらに有意義なものになると思います。
最後になりますが、本シンポジウムが無事に開催できたのは、実行委員長の小川先生をはじめ、教員委員の皆様、大学院教務の皆様、学生企画委員の皆様のご尽力あってのことです。本当にありがとうございました。
学生企画委員 丸岡奈津美(生命科学研究科 博士課程前期2年)
理学・生命科学合同シンポジウム2019におきまして、学生企画委員、また口頭発表者にて参加させていただきました生命科学研究科の丸岡奈津美です。
当日は、非常にバラエティーに富んだ発表を数多く聞くことができ、さらに自身の研究に関しても、普段とはまったく違う視点から多くのご指摘やご質問をいただくことができました。わくわくする研究がたくさんあり、改めて「研究って面白い!」と感じました。
私事になりますが、実は、私が本シンポジウムに参加させていただくのは、7年ぶり2度目になります。最初の会議の際に知ったのですが、2012年は、メディアテークにて開催された「第5回東北大学理学部開講100周年記念公開シンポジム」の一部として本シンポジウムを開催したそうです。私は「東北大学科学者の卵養成講座」に参加していたことで東北大学とはご縁があり、2012年、高校1年生の頃に、はるばる群馬県から、一人ポスターを抱え、このシンポジウムに参加させていただきました。当時の発表タイトルは「ミジンコの減圧ストレスに対する応答」でしたが、自分のポスターにあまり人が集まってくれず、悔しい思いをした記憶があります。今年は「日本産ミジンコ2種の種間・種内競争能力と地理的分布」というタイトルで発表させていただき、7年前とは違い、多くの先生や他の専攻の方に興味を持っていただくことができました。ミジンコの面白さを伝えることもでき、大変嬉しく思います。
おそらく研究は、進めるうちに、私たちの知識の幅を狭く、深いものにします。そして、そのうち自分の知らないことに対して「知らない、わからない」と言うことを恥ずかしく思い、他分野には余計に近寄らなくなるといったこともあるのではないかと思います。一方で、現在は特に、一般の人に対してわかりやすく研究を伝えることも求められています。こういった近年の研究の世界において、この合同シンポジウムの存在は大変貴重であり、有意義なものだと感じております。これからもますます本シンポジウムが発展し、良い形で続いていくことに期待します。
最後に、実行委員長の小川先生、学生企画委員長の辻本さんを始め、運営に携わってくださった皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。
2019年3月18日 レポート
2月27日(水) 天文学専攻 野口正史准教授 最終講義
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2月27日(水)、理学研究科青葉サイエンスホールにて、天文学専攻 野口正史准教授の最終講義「銀河と紙と鉛筆と」が行われました。
当日は学内の研究者、学生はもちろん、遠方からもたくさんの方々がご聴講されました。野口先生が天文学に目覚めたのは10歳の誕生日。その日の夜、望遠鏡で土星の輪を見た時から天文学にのめり込んでいったそうです。
最後は「東北大は研究者の多様性があり、カバーする分野もバラエティに富んでいます。これまで支えて下さったたくさんの方々に感謝しています。」との言葉で締めくくられました。
野口正史先生よりメッセージをいただきました
この度は最終講義の機会を与えて頂きありがとうございました。東北大学に27年間お世話になりましたが、この間の天文学の発展は目を見張るばかりでした。大学院の頃はコンピュータで数値シミュレーションをするにも、プログラムをカードにパンチし、それをカードリーダに読み込ませる時代でした。その当時最新の「スーパーコンピュータ」を使わなければ計算できなかったものが、今では、パソコンであっという間にできてしまいます。天文学の研究スタイルも、観測ばかりでなく、理論においても個人からグループへと大きく変わりました。今では、単独の論文著者は「絶滅危惧種」(危惧されているかわかりませんが)とされています。蓋を開けてみると、私はいつのまにかこのカテゴリになっていました。研究には多様な種類があり、それぞれが学問の発展になくてはならないものですが、私自身は、新しい概念構築に一番興味がありました。研究の「空白地帯」を求めて渉猟するのがルーチンになり、結果的に単独研究に傾いたのかもしれません。ただ、単独研究といっても自分が身を置く環境はとても重要です。素晴らしい同僚や学生の皆さんから様々なサポートや励ましを頂き、何とか職務を全うできた私は幸せです。最終講義では、恐縮ながら、多分に私的な私の研究歴を披露させていただきました。ご来場しその場を共有して頂いた一人一人の方に感謝したいと思います。まだ絶滅したくはありませんので、今後も微力ではありますが研究を続けていきたいと思います。
天文学専攻の千葉柾司先生より
野口先生へのメッセージをいただきました
野口さんは、おもに数値シミュレーションを用いて銀河の形成と進化に関する研究をされてきました。世界的な研究成果をいくつも残されており、特に、銀河相互作用における銀河棒構造の新しい形成機構の発見、さらにそれに伴う銀河中心への星間ガス流入と銀河中心の活動化に関する研究、また、銀河形成時期の重力不安定性に基づく遠方銀河のクランプ構造の形成などが有名であり、これらは野口さんの仕事であることを関係者の誰しもが知っています。研究へのこだわりは人一倍強く、定年を迎える年でも真摯に研究に向き合い論文を発表されているお姿に心が引き締まる思いです。
野口さんとは30年近くになるお付き合いで、本当にいろいろなときを共に過ごし、銀河に関してたくさんお話しをしましたし、酒を交わすことも多かったです。ドイツでの国際会議に一緒に行って楽しい時間を過ごしたのも思い出されます。みんなの人気者で愛されてきましたね。若いとき、ご実家からよく宅急便が届いていたことも覚えています。余計なことを書きそうなのでここらでやめておきますが(笑)、野口さんのことを話すにはこのスペースは狭すぎですね!
これまで本当にありがとうございました。
2019年3月14日 レポート
3月7〜9日 Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research 2019
3月7〜9日、理学研究科合同C棟青葉サイエンスホールにて、国際会議 "Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research 2019" が開催されました。この国際会議は、ニュートリノ科学研究センターの井上邦雄 センター長が代表をつとめる新学術領域「宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究」が主催するものです。参加者は100人を超え、5年間の集大成の発表や今後へ向けたパネルディスカッションが行われました。
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2019年3月 1日 お知らせ
理学部PR動画【第二弾】出演者募集!
理学研究科・理学部のPR動画の撮影にご協力していただける方を募集します!ぜひご応募ください! *
動画第一弾はこちらから
応募条件 理学部・理学研究科に所属する教員、職員、学生であればどなたでも。 *Web上で公開される動画の撮影であることを御了承の上、ご応募ください。 撮影日 2019年4月8日~19日 *上記日程のうち3日間(予定) お問合せ 理学研究科・理学部 広報・アウトリーチ支援室(担当:髙橋) TEL: 022-795-5572 Email: sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp *[at]を@に置き換えてください。