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2019年3月26日レポート

3月8日(金)生物学科 西谷和彦教授 最終講義

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3月8日(金)、地学・生物共通講義室にて、生物学科 西谷和彦教授の最終講義「なぜ私は植物細胞壁の森に分け入ったのか」が行われました。本講義では、生い立ちや、幼少期に影響を受けたテレビ番組、書籍のエピソードなど、幅広くお話をしてくださいました。当時の写真も紹介いただき、終始ユーモアを交えた温かい雰囲気の中、講演は進められました。講義終了後には、西谷先生の長年にわたる研究・教育に対するご尽力とご功績に感謝と敬意を込めて、惜しみない拍手が送られました。


西谷和彦先生よりメッセージをいただきました

1997年6月に理学研究科生物学専攻に着任しまして、爾来21年9ヶ月間、青葉山の生物棟で研究と教育を行ってきました。着任4年後には生命科学研究科が設置される一方、青葉山キャンパスには農学研究科が移転し、地下鉄が開通するなど、東北大学は大きく変わりましたが、青葉山の生物学教室は連綿と続いてきました。 私は、1975年に学部の卒業研究として植物細胞壁の生理機能に関する研究を始めて以来、一貫して、植物細胞壁をテーマとして研究を続けてきました。1992年に植物細胞壁の力学的特性を決める多糖分子であるキシログルカンを繋ぎかえる酵素を発見しEXTと名付けました。東北大学に着任後は、EXTをコードする遺伝子の分子生物学的な解析を進め、2001年には、EXT遺伝子が多重遺伝子族を形成していることを明らかにし、XTHファミリーと命名しました。XTHファミリーメンバー間の役割分担の解析を通して、植物細胞壁の構築・再編に関する新しい細胞壁動態モデルを提唱してきました。 2005年以降は、XTHファミリーだけでなく、数千種と推定される細胞壁関連遺伝子群を視野に入れた包括的な研究を開始しまして、その方法論を世界に先駆けて確立できました。これら一連の植物細胞壁の包括的研究を更に展開するために、2012年に科学研究費補助事業の新学術領域研究「植物細胞壁の情報処理システム」が発足し、その領域代表を務めました。このプロジェクトは国内で植物細胞壁を研究する主要な37研究室が参画する空前のオールジャパンのチーム編成となり、研究者コミュニテー形成に寄与したと自負しています。このプロジェクトの特筆すべき研究成果の一つは、植物細胞壁の骨格分子であるセルロースを繋ぎ変える新奇な酵素の存在を明らかにし、細胞壁構造モデルを刷新したことです。もう一つの成果は、植物細胞壁高次構造そのものが、情報としての機能を担い、植物の高次機能を統御する細胞装置であることを様々な事象より実証できたことです。文字通り、新しい学術領域を切り拓くことができたのではないかと思っています。 東北大学の青葉山で22年間に亘り、学生諸君やポスドク、生物学教室の皆さんと共に、植物細胞壁の研究と教育を進めな街ら、学問を楽しむことができましたことを、心より嬉しく、また誇りに思い、理学部の皆様に深く感謝しています。


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  生命科学研究科の横山隆亮先生より
西谷先生へのメッセージをいただきました  

西谷先生は平成9年に東北大学で植物細胞壁の研究を中心とした新たな研究室を立ち上げられました。西谷先生は、その時既に、細胞壁の構築・再編を担う酵素であるEXTを発見され、細胞壁が細胞を覆う単なる固い壁ではなく、細胞伸長などで重要な役割を果たす動的な細胞外器官であることを証明されていました。これらの研究成果によって、細胞壁研究の第一人者となられた先生の満を持しての研究室の立ち上げだったと思います。私は翌年に先生の研究室の助手に着任し、それ以来21年間、先生のご指導を頂いてまいりました。当初、私は分子遺伝学を専門としていたこともあり、西谷先生が築き上げてきた細胞壁酵素の生化学的な研究に貢献できるかに不安があったことを覚えています。しかし西谷先生は、それまでの研究手法だけに固執することなく、研究目標を達成するためには、常に新しい技術を導入し、多面的な研究アプローチで研究を進めて行く方針であることを説いて下さりました。この先生の研究方針のおかげで、私は自分の専門分野を活かして細胞壁研究をスタートすることができました。また同様に、その後も研究室の多くのメンバーが様々な研究アプローチで細胞壁の機能解明に挑戦できたことで、本研究室で細胞壁の研究が大きく展開できたのだと思います。長い間、ご厚情とご指導を頂いてきたことを深く感謝しております。今後も益々のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

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