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2013年6月12日取材

地球物理学専攻 植木貞人准教授 最終講義

 3月22日(金)、理学部大講義室にて地球物理学専攻 植木貞人准教授の最終講義「火山観測を振り返って」が行われました。
 植木先生は山形県のご出身で、昭和49年、東北大学大学院地球物理学専攻博士課程在籍中に理学部青葉山地震観測所(当時)の助手に着任され、それ以来38年の長きに渡り東北大学の研究と教育に携わってこられました。
 最終講義では、国内火山観測草創期の歴史からはじまり、東北大学の火山観測の歴史、植木先生が研究された伊東沖海底噴火の観測や岩手山など東北地方の火山観測についてご講義くださいました。

植木先生よりメッセージをいただきました
  ー最終講義に関するメッセージー  

 最終講義は東北大学の火山観測の歴史を振り返るものにしました。講義の準備で遅ればせながら中村左衛門太郎先生や加藤愛雄先生の研究業績を勉強し、先進的で優れた研究が行われたことを知り、大変驚かされました。講義では、時代背景を含めて研究成果を紹介し、歴史的意義についてもお話ししました。
 現在では、短期的に効率よく成果を上げることが求められ、観測は敬遠されがちです。先人の優れた業績に触れることで、火山観測の意義を認識するきっかけとなれば幸いです。

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▲最終講義にて:植木先生

  地球物理学専攻の西村太志先生より
植木先生へのメッセージをいただきました  

 植木先生との接点は、アフリカにあるコンゴ民主共和国ニイラゴンゴ火山のことについて教えていただいたことが最初になります。先生は、1977年の山頂溶岩湖の消失とゴマ市への溶岩流出という大噴火発生の直前に溶岩湖の調査をされ、また、噴火直後にも現地調査をされておりました。その後、博士課程院生として地震・噴火予知研究観測センターに配属されたときに、同じ部屋で勉強・研究させて頂きました。しかし、はじめの頃はほとんど話をした覚えがありません。寡黙で厳しい先生だったのですが、当時の私の先輩によれば、"植木先生は一緒に観測に行っていない学生とは話をしないのである"、ということでした。確かに、1988-1989年十勝岳噴火の観測のあとからは、火山現象や観測のことを優しく解説してもらえました。ただ、これは随分昔の話のことのようです。最近は、厳しい先生というイメージはなく、研究室配属の院生や講義担当された学部生にもその優しいお人柄がつたわっているようです。
DSC_8620.JPG  さて、先生は、地震や地盤変動、重力観測データの解析にもとづく火山噴火予知に関する基礎研究を進めてこられました。また、長年、火山噴火予知連絡会の委員として、日本の火山防災の分野でも活躍されてきました。先生のご研究の中では、1989年伊東沖海底噴火の観測研究が特に有名です。伊東市周辺で臨時地震観測を実施し、ダイクが地下深部から上昇し噴火に至るまでの、火山性地震の上下方向の移動を世界ではじめてとらえました。また、1998年の岩手山の火山活動では、火山性地震や火山性圧力源の時空間分布に基づき、静穏期の長い火山で起きるマグマ上昇を、はじまりから終息まで捕らえることに成功されました。刻一刻と変化する火山活動にともなう詳細なマグマ移動を最高の精度で明らかにできたのは、先生が精力的に整備された岩手山周辺の火山観測点のデータがあったからこそであり、多くの学生やスタッフが研究成果を出すことができました。
 これらの火山のほかにも、先生は、岩手山、秋田駒ヶ岳、秋田焼山、鳥海山、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山などの東北地方の主要な活火山で、観測点場所の選定や計測機器の設置を中心になって進められてきました。ただ、これらの観測点は、なかなか見つけることができません。林道から藪や沢に入った奥の方にあり、先生が少しでも雑音の少ない良いデータを取るために努力されていたことがわかりました。ただ、問題は、林道からの入り口や藪の中の経路がわかりにくく、先生がいないこれから、観測点にたどり着けるかということです。
 先生は、今後もしばらく噴火予知連絡会メンバーとして火山防災に携わられると伺っております。2011年東北地方太平洋沖地震の発生により、東北地方の火山の今後の活動は気になるところであります。長年、観測や研究でお忙しかったのでご退職を機に少しゆっくりされてはと思ってはおりますが、引き続き、先生のご経験をもとに、後進にご助言とご指導をお願いいたします。


*Photo Garally*

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