東北大学 大学院 理学研究科・理学部

Graduate School of Science and faculty of Science , Tohoku University

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【プレスリリース】最古の生命の痕跡をグリーンランドの岩石中に発見:生命起源に新たな時間的制約

東北大学とコペンハーゲン大学の共同研究によって、グリーンランドに産する岩石中に、38億年前の海に生息していた微生物の痕跡を発見しました。これは世界最古の生命の痕跡であり、生命の起源に関して新たな時間的制約を与える極めて重要な研究成果です。
論文は、2013年12月8日に Nature Geoscience(電子版)に公表されました

グリーンランドのイスア地域には38億年前の岩石が広く分布しています。これら岩石は地球創世期の情報を記録した貴重なタイムカプセルでもあります(参考文献1)。イスア地域の岩石中に最古の生命の痕跡が残されているかどうか世界中の研究者を巻き込み議論されてきました。

東北大学の掛川武教授と大友陽子博士(現、海洋科学研究開発機構)は、コペンハーゲン大学のミニック・ロージング博士とともにイスア地域の詳細な地質調査を行いました。その結果、イスア地域北西部に、炭素(グラファイト)を多く含んだ岩石を新たに発見しました。この岩石は38億年前の海底に堆積した泥であること、それら岩石が変成作用を受けているにもかかわらず、当時の海洋環境の情報を保存していることが各種分析によって分かりました。イスア地域の岩石は変成作用によって高温高圧にさらされ、生物の化石が残される可能性はありませんが、生物を構成していた炭素などは十分に残りえます。今回発見した岩石の中の炭素が、38億年前の生物のかけらであるか、確かめるため東北大学で詳細に分析しました。その結果、現世の生物が持つのと同じ炭素同位体組成(12C/13C比)を有すること、現世の生物を構成する炭素に特徴的に現れるナノレベルの組織や外形が見いだされたことなどから、38億年前の海に生息していた微生物の断片であると結論付けました。グリーンランドのイスア地域では過去にも似たような研究例がありましたが、本当に38億年前に生物がいたか懐疑的意見が多かったのです(参考文献2および3)。地球にいつ生命が誕生したのか、いまだに不明です。しかし今回の研究成果によって、38億年前に微生物が活動していた事が確定的となりました。38億年よりも前の段階で生命を誕生させる必要があったとする時間的制約を与える事ができます。
また、太古の岩石に残された炭素の断片から、当時の生物活動の様子を探る手法を本研究では提案しており、火星で生命の痕跡を探すのにも有効に活用されます。

 ▪ プレスリリース(PDF)
 ▪ 東北大学へのリンク
 ▪ 地学専攻 資源環境地球化学分野 掛川研究室website
 ■報道■
 ▪ NHKニュース
 ▪ 12月9日(月)付日本経済新聞夕刊
 ▪ 12月10日(火)付河北新報
 ▪ 12月10日(火)付読売新聞

【論文タイトル】
  ・"Evidence for biogenic graphite in early Archaean Isua metasedimentary rocks"
【著者】
  ・Yoko Ohtomo1, Takeshi Kakegawa1 , Akizumi Ishida1, Toshiro Nagase1 & Minik T. Rosing2
  1:Graduate School of Science, Tohoku University, Japan.
  2:Nordic Center for Earth Evolution,Natural History Muse of Denmark, University of Copenhagen, Denmark.
【出版雑誌】
  ・Advance Online Publication (AOP) on Nature Geoscience's (12月8日) 10.1038/ngeo2025
<参考文献>
  1. 地球・生命 その起源と進化(2002)大谷栄治・掛川武著、共立出版
  2. Rosing, M. T. 13C-depleted carbon microparticles in >3700-Ma sea-floor sedimentary rocks from west Greenland. Science 283, 674-676 (1999).
  3. Van Zuilen, M. A., Lepland, A. & Arrhenius, G. Reassessing the evidence for the earliest traces of life. Nature 418, 627-630 (2002).
【お問い合わせ先】
東北大学理学研究科
担当:掛川武
tel and fax:022-795-6660, E-mail:kakegawa*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
報道担当
理学研究科広報・アウトリーチ支援室 陶山 香奈子 tel: 022-795-6708, fax: 022-795-5831


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