【研究成果】宇宙最大の爆発ガンマ線バーストの残光から円偏光を発見:宇宙で起こる衝撃波に新たな謎
宇宙最大の爆発天体、ガンマ線バーストは、突発的にガンマ線を放射した後、可視光帯域などで数日間残光を放ちます。残光の起源は爆風が周辺に作った衝撃波であり、高エネルギープラズマ物理の活発な研究対象となっています。私たちは、チリの望遠鏡を使って、残光が高い円偏光を持つことを明らかにしました。この結果は、円偏光は極めて小さいとするこれまでの理論へ修正を迫るものとなっています。本研究成果は、5月8日Nature誌に掲載される予定です。
ガンマ線バースト(GRB)は宇宙最大の爆発現象です。ブラックホール形成の現場と考えられており、その爆発メカニズムは現代宇宙物理学で最も注目されている研究対象の一つとなっています。突発的にガンマ線で輝いた後、可視光・電波・X線帯域で数日間残光が観測されます。非常な明るさのため、宇宙最初にできた星(すなわち最も遠い星)が起こすGRBですら検出できると予想されています。残光の起源は爆風が周辺に作った衝撃波ですが(解説図参照)、これほど高エネルギーな衝撃波は地球上では実現できません。それゆえ残光の観測は、高エネルギープラズマ物理研究に対し貴重な情報を提供します。
今回、我々はチリの望遠鏡を利用し世界で初めて、GRB残光の円偏光を検出しました。偏光とは、光波の振動方向の偏りのことであり、直線偏光と円偏光に分類されます。これまで、直線偏光は数々のGRB残光から検出されており、爆風や衝撃波の中の電子や磁場の性質がある程度まで理解されてきました。偏光以外の観測情報も合わせて、標準理論モデルが立てられましたが、そのモデルでは円偏光は極めて小さく、検出不可能であると予想されます。今回の発見はこの理論モデルに修正を迫るものです。詳細は省きますが、観測を説明するには極めて非等方な電子分布が必要と考えられます。今後、このような電子分布を作る衝撃波形成メカニズムを解明することで、高エネルギープラズマの理解がさらに進むものと考えられます。
なお、この研究は、本研究科當真賢二助教 、レスター大学 K. ウィアセーマ博士 、イタリア宇宙物理学国家機関 S. コビーノ教授 他の共同研究で行われました。
【発表論文】
発表雑誌:Nature誌
▪ http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature13237.html
発表論文名:" Circular polarization in the optical afterglow of GRB 121024A"
(日本語訳 ガンマ線バースト121024Aの可視残光の円偏光)
▪ 著者名:K. Wiersema, S. Covino, K. Toma, A. J. van der Horst, K. Varela, M. Min, J. Greiner, R. L. C. Starling, N. R. Tanvir, R. A. M. J. Wijers, S. Campana, P. A. Curran, Y. Fan, J. P. U. Fynbo, J. Gorosavel, A. Gomboc,D. Gotz, J. Hjorth, Z. P. Jin, S. Kobayashi, C. Koubeliotou, C. Mundell, P. T. O'Brien, E. Pian, A. Rowlinson,D. M. Russell, R. Salvaterra, S. di Serego Alighieri, G. Tagliaferri, S. D. Vergani, J. Elliott, C. Farina,O. E. Hartoog, R. Karjalainen, S. Klose, F. Knust, A. J. Levan, P. Shady, V. Sudilovsky, R. Wiilingale
【解説図】
ガンマ線バーストの概念図。宇宙の遠方における突発的な爆発(バースト)から、絞られた爆風が生じる。それが周辺の媒質に衝突することで衝撃波が生まれる。これほど高エネルギーで低密度な衝撃波の性質には不明な点が多い。今回の観測結果は、電子は衝撃波で非等方に加速されており、それが発する光は高い円偏光を持つことを示している。
【問い合わせ先】
東北大学大学院理学研究科 天文学専攻、学際科学フロンティア研究所
助教 當真 賢二(とうま けんじ)
E-mail:toma*astr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)Tel:022-795-6607