東北大学 大学院 理学研究科・理学部|広報・アウトリーチ支援室

2017年4月24日レポート

4月22日(土)仙台市天文台 アースデイ講演会 花輪 公雄 教授「海は泣いているー地球温暖化と海洋ー」

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 2017年4月22日(土)、仙台市天文台 加藤・小坂ホールにて、地球物理学専攻 教授 花輪 公雄 先生のアースデイ講演会が開催されました。仙台市天文台では、2010年から毎年、ユネスコが定めた地球環境について考える日「アースデイ」にちなんだ講演会を行っており、今年で7回目となります(2011年は震災のため休止)。花輪先生は初回より毎年欠かさずご講演されております。
 今回は「海は泣いているー地球温暖化と海洋ー」と題し、地球温暖化と海の関係、そして海洋のごみ問題についてご講演されました。
 最初に、海洋のごみ問題について、最近の報道(テレビやプレスリリース、新聞など)を用いてお話しされました。中でも国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の公開した「深海デブリデータベース」では衝撃的な光景が広がります。本来は研究目的の調査船や探査機等の撮影画像にたくさんの「デブリ(=ごみ)」が映っています。注目すべきは水深約10900m付近でもデブリ見つかっていることです。この水深約10900mとは世界の海洋の最深部に匹敵する深さとなります。
 次に、地球温暖化と海洋について、お話しされました。地球温暖化における海の役割は、大きく3つ挙げられます。(1)大きな海の熱容量:海水は熱を吸収し、地球温暖化を遅らせています。しかし、熱を吸収すると海洋は膨張し水位も上昇します。更に、高水温で生態系の破壊に繋がります。(2)温室効果気体の吸収:海は30%のCO2を吸収し、地球温暖化を遅らせています。しかし、それは海の酸性化をもたらし、海洋生態系の破壊に繋がります。(3)生物の存在:海は多様な生物の宝庫です。「生物ポンプ」により、炭素を深海に急激に落としています。しかし、海洋生態系の破壊が進行すると、生物ポンプが現在のように働かなくなり、CO2吸収量の減少をもたらします。
 では、温暖化について我々はどのように臨むべきなのか?花輪先生は、「温暖化問題は、極めてグローバルな問題である。」と前置きした上で、「このような状況を作り出したのが私たちであれば、解決するのも私たちであり解決できるのも私たちしかいないのだ。」と結ばれました。講演後は、質疑応答が行われ、中には鋭い意見もあり、地球温暖化への関心の高さが伺えました。


2017年4月24日レポート

4月22日(土)大西卓哉宇宙飛行士 ミッション報告会 in 宮城県仙台市 −国際宇宙ステーションから考える地球と生命のフロンティア−

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 2017年4月22日(土)、仙台市若林区文化センターにて「大西卓哉宇宙飛行士 ミッション報告会 in 宮城県仙台市−国際宇宙ステーションから考える地球と生命のフロンティア−」が行われました。会場はたくさんの聴講者で埋め尽くされました。


 イベントは、「第1部:大西宇宙飛行士によるミッション報告&質問コーナー」「第2部:学ぼう!宇宙に浮かぶ実験室「きぼう」の実験」「第3部:ココでしか聞けない!宇宙のお仕事トークショー」「第4部:東北大学国際宇宙ステーション」の4部構成で進められました。また会場前には、JAXA「大西宇宙飛行士活動紹介パネル」「VR体験コーナー」、東北大学「宇宙関連研究紹介パネル」などの展示も行われました。


 大西宇宙飛行士は、新世代宇宙飛行士として油井宇宙飛行士に続き、平成28年7月から10月までの約4ヶ月間ISSに長期滞在し、小動物飼育ミッションやタンパク質結晶生成実験など日本にしかできないミッションや、日本人宇宙飛行士として初めて米国補給船「シグナス」のキャプチャなどを行い、日本の有人宇宙活動の前進に貢献しました。

 第1部では、大西宇宙飛行士がISS長期滞在で実際に行った活動の様子を写真や映像により紹介。

 第2部では、宇宙に浮かぶ実験室「きぼう」の実験について、JAXA主任研究開発員 芝大氏と大西宇宙飛行士が、特に小動物飼育ミッションについて詳細にお話しくださいました。また、ISSでこれから予定されているミッションには、東北大学東北メディカル・メガバンク機構の「宇宙ストレスにおける環境応答型転写因子Nrf2の役割」が予定されています。第2部の最後には、実際にこのミッションに携わっておられる山本雅之教授(東北大学東北メディカル・メガバンク機構長)が登場し、世界初となる山本教授の作られたストレスに敏感なマウスを用いた宇宙ミッションについてお話しされました。

 第3部では、大西宇宙飛行士のISS長期滞在を地上から支えた運用管制員(フライトディレクタ)佐孝大地氏と大西宇宙飛行士が、ココでしか聞けない話を交えながら、ミッションを振り返りました。ここで新世代宇宙飛行士の3人目である金井宣茂宇宙飛行士がサプライズ登場!会場からは大きなどよめきと共に盛大な拍手が送られました。

 第4部では、東北大学が今まで進めてきた国際宇宙ステーション関連の実験について2つの講演がありました。

 まずは、東谷篤志教授(東北大学大学院生命科学研究科)が「国際宇宙ステーションでのモデル生物を利用した宇宙実験」と題し、モデル生物線虫やキュウリの芽生えを用いた宇宙実験についてお話しされました。一例を挙げると、重力のない宇宙空間では、キュウリの芽生えは重力方向(下)に向かうのではなく、より湿度の高い方に向かって行くことが分かりました。また、宇宙実験で使用された3Dクリノスタット(三次元的に回転させることで、地上の重力方向をかく乱して疑似微少重力環境を提供する機器)も展示されました。

 本研究科からは 坂野井健准教授(東北大学大学院理学研究科附属惑星プラズマ・大気研究センター)が「国際宇宙ステーションからの地球大気発光現象の観測」と題し、講演を行いました。大気圏と宇宙空間の両方がせめぎあう高度百km付近の領域には、未解明の複雑な現象が多く残されています。そこで、坂野井准教授らは、ISSきぼう船外実験プラットフォームに搭載される地球超高層大気撮像観測装置(IMAP)の開発を行いました。観測の結果、赤道領域で発生した台風が生んだ重力波が、はるか数千キロはなれた場所まで伝わるなど、超高層領域にて、いくつもの発見がありました。


 全体を通して、会場からたくさんの質問があり、それらついて丁寧に回答する大西宇宙飛行士の姿が印象的でした。同時に、東北大学の国際宇宙ステーションを用いた数々の活動を知っていただける良い機会となりました。



2017年4月18日レポート

2月27日(月) 天文学専攻 市川隆教授 最終講義

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 2月27日(月)、理学研究科青葉サイエンスホールにて、天文学専攻 市川隆教授の最終講義「南極天文学の展望」が行われました。
 当日は学内の研究者、学生はもちろん、一般の方々も来校され、講義室はほぼ満席となりました。市川先生と言えば「南極天文学」。南極での天文観測のために長い間大変ご尽力され、そして現在もそれは続いています。様々な課題に奮闘する市川先生の姿がこれからも見られることでしょう。
 そして広報・アウトリーチ支援室では、キャンパスツアーぶらりがく「市川隆先生の観望会(全8回開催)」で大変お世話になりました。毎回たくさんの応募があり人気のテーマとなっています。市川先生は、子供達に夢を持ってもらうこと、親子で宇宙について興味を持ってもらうこと、第一に考えアウトリーチを行って下さいました。長い間、本当にありがとうございました。
 
市川隆先生よりメッセージをいただきました

 この度は最終講義の機会を与えて頂きありがとうございました。タイトルに「展望」とあるように、南極での天文学は道半ばであり、5年や10年では難しい、まだまだ時間がかかるプロジェクトです。銀河の広域探査と銀河進化の研究、系外惑星の大気成分の研究、宇宙背景放射の研究などなど、南極での天文学にはたくさんの可能性が期待されます。南極は地球上で最も天文観測に向いた場所ですが、最も、アクセスが難しい所でもあります。しかし、そんなプロジェクトの推進に理解をし、協力して頂いた関係者の皆さんには大変感謝しています。
 また、学生の皆さんにも改めて感謝いたします。学生の皆さんの力なくして今日まで研究を続けてくることはできませんでした。大学で教育と研究を行うことの喜びのひとつに、学生との出会いがあります。東北大学には20年余り在職しましたが、毎年、何人かの学生が私の研究室の扉をたたいてくれました。そんな皆さんと観測装置を開発し、すばる望遠鏡に取り付けて果ての宇宙にある銀河の観測に成功した時の喜びは忘れられません。南極隊員として内陸に遠征した学生が、氷点下40度の現地からドームふじ基地天体観測所設営の様子を伝えてくれました。南極の真ん中にいる学生から私の携帯電話に状況が伝えられて来ることに不思議な感じでした。研究室を巣立っていった皆さんの活躍を期待しています。

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  天文学専攻の秋山正幸先生より
市川先生へのメッセージをいただきました  

 市川先生には私が東北大学に赴任する以前、国立天文台ハワイ観測所で研究員をしているころから赤外線カメラプロジェクトに関わらせていただくなどお世話になりました。南極望遠鏡をはじめ、市川先生の推進してきた開発の着眼点のユニークさには刺激を受けてきました。
 市川先生とはゼミを一緒に開催させて頂きました。私が院生の論文発表の意外な内容に感心する中、「その研究は私も以前にやったことがあるんだけどねぇ、」とコメントされる市川先生の研究範囲の幅広さにはいつも驚かされていました。退職記念研究会でも南極での風力発電を含めて、様々な内容の発表があり、研究者として幅広く関心を持ち、挑戦することの大切さを再認識させられました。
 また日本天文学会の会長として組織の更新にも取り組まれるなど、さまざまな方向から研究・職場環境を整えることにも尽力されました。これからも幅広く活躍され、引き続きさまざまな場面でご指導いただければと願っております。



2017年4月14日レポート

【広報サポーターレポート】4月5日 (水) ぶらりがく「市川隆先生の観望会」

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今回は4月5日(水)開催「ぶらりがく」の様子を中尾美紗子(理学研究科地学専攻修士1年)がお伝えします!月の写真提供は、同じく広報サポーターの木村勇貴(理学研究科天文学専攻博士2年)さんです。

 4月5日(水)18:00から、東北大学青葉山北キャンパスにある天体ドームにて、子どもから大人までを対象とした観望会が行われました。観望会とは、市川隆先生と一緒に天体望遠鏡を覗き、青葉山から見える星空を眺めるイベントです。この観望会はぶらりがくの恒例行事として、多くの方に慣れ親しまれたイベントですが、当日の天気や雲の状況に左右され、星を観察できない日も過去にはあったようです。参加者の中には、「前回は星が見れなかったんです」と今回改めて星を見るべくリベンジしに来てくださった方もいました。実際、当日は天気に恵まれ、星空を眺めるにはもってこいのきれいな夜空であり、観望会に初めて参加された方もそうでない方も満足していただけたようでした(図1)。


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図1:当日、天体望遠鏡で観察した月の様子

 今回覗かせていただいた望遠鏡のある天体ドームは、地下鉄青葉山駅の出入り口からすぐそばにある理学研究科合同C棟の8階にあります。地下鉄で青葉山キャンパスに来たことのある方ならば誰もが一度は銀色のドームを見たことがあるのではないでしょうか。天体ドームの入り口へは、合同C棟の7階から天井の低い階段を数十段昇っていくとたどり着きます。天体ドームの中は30人入るといっぱいでしたが、ドームを開くとその隙間から夜空が広がっており、遠くの星空を眺めていると開放感に溢れ、とても気持ちがよかったです。市川先生がドームを開けた瞬間、参加者の皆さんからも思わず「おお~」と歓声があがりました。ドームを開けると言っても360℃開くわけではなく、ちょうど茹でたじゃがいもの皮を両端から引っ張りツルンと剥くときのように、ドームの頂上から少しだけ隙間の開いた様子になります(図2)。そのため、望遠鏡の向きを変える時には、望遠鏡の向きに合うように、開いたドームも一緒に回転します。天体ドームの中にいながらドームが回転するのを見ていると、まるで自分が回っているのではないかと錯覚するような不思議な感覚になり、この感覚を面白がっている子どもたちもいました。普段滅多に入る機会のない天体ドームの中を見てみるというのは、大学生の私でもなかなか面白い体験でした。望遠鏡には直径51cmの鏡が付いています。参加者の方は1人ずつ鏡を覗かせてもらい、望遠鏡の仕組みを改めて確認し、「へえ、こんな風になっているんだ」と感心していました。


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図2:天体望遠鏡とドームを開いた様子

 当日は火星と月を眺めました。火星は肉眼で見ても赤っぽく見えますが、望遠鏡を覗いてもやはり赤く見えました。「ではなぜ火星は赤い?」と市川先生が子どもたちへ質問を投げかけると、小学生がその理由をきちんと説明していた姿には私も驚きました。また、この日はちょうど頭上に明るい月を見ることも出来ました。望遠鏡で月を見ると、クレーターがはっきりと見えました(図3)。クレーターは小惑星との衝突の跡であり、月には空気がないため風化せずにその形がきれいに残っているそうです。私たちが眺めた月のクレーターの大きさから、年代を測定する研究が行われていることも教えていただきました。「どんな質問でもしてくださいね」と市川先生がおっしゃると、子どもたちからは「宇宙でできた最初の星はどれですか?」「月はどうやって出来たのですか?」と最先端の研究に関わるような疑問や質問が沢山出てきました。

 今回の観望会では、参加者の皆さんへお土産として、望遠鏡から見た月を自分の携帯やスマートフォンのカメラで撮影してもらうという市川先生からの気の利いたプレゼント企画も行われました。望遠鏡をカメラで覗くことは意外と難しく、特にこの日の月はとても明るかったため、光の量を調整することに皆さん苦戦しているようでした。アシスタントをしてくれた大学生からも「撮影のポイントは根気よく撮ることです(笑)」と、直接望遠鏡を覗いた画と同じものを写真に収めるには、何度も繰り返しシャッターを押す必要があるというアドバイスをもらいました。上手く写真を撮ることのできた参加者の方々は、一緒に来た家族や友人に嬉しそうにその写真を見せていました。コツを掴んだ参加者同士で写真の撮り方を教え合う場面も見られました。私も月の写真を自分のスマートフォンで撮影してみましたが、やっぱり良い写真を撮ることができると嬉しいものですね。

 これからの時期は暖かくなり、夜も冷え込むこともなく、星を眺めるのには良い季節です。皆さんもこれをきっかけに星空を眺めてみてはいかがでしょうか。宇宙について、新たな疑問が生まれてくるかもしれません。


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図3:天体望遠鏡から見た月のクレーター

2017年4月 6日レポート

【フォトアルバム】「環境・地球科学国際共同大学院プログラム」ハワイ大学調印式

 理学研究科が2016年10月に立ち上げた「環境・地球科学国際共同大学院プログラム」では、2017年3月28日 ハワイ大学の海洋地球科学技術学部と、博士課程学生の共同指導にかかわる覚書を調印しました【詳細はこちら】。同行された広報・アウトリーチ支援室長の小原隆博教授、庄司欽也大学院教務係長から写真を提供いただきましたのでご紹介します!


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2017年4月 6日レポート

【広報サポーターレポート】4月1日 (土) ぶらりがく「鉱物の見かけのフシギ ~似ていないのに同じ石って??~」

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今回は4月1日(土)開催「ぶらりがく」の様子を中尾美紗子(理学研究科地学専攻修士1年)がお伝えします!

 4月1日(土)、東北大学理学研究科合同C棟2階多目的室にてぶらりがくが開催されました。「ぶらりがく」とは、普段より東北大学理学部で行われている研究の一場面を一般の方々に知っていただく科学イベントです。ぶらりと気軽に参加でき、自然の不思議を紐解くサイエンスの世界について、研究者や大学生と直接お話できるのが大きな特徴となっています。

 今回は今年度第一回目の開催ということで、小中学生を対象に「鉱物の見かけのフシギ ~似ていないのに同じ石って??~」と題し、地学専攻の栗林貴弘准教授より鉱物のカタチとその面白さについて紹介していただきました(図1)。当日は約40名の小学生とその親御さんが足を運んで下さり、熱心な先生のお話に耳を傾けていました。中には、一生懸命メモを取りながら話を聴いている小学生たちもいました。


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図1:栗林准教授によるお話

 まず始めに「鉱物のカタチが何によって決まるのか?」というテーマをメインに、鉱物のもつ対称性やその種類について詳しく教えていただきました。私たちが見ている鉱物の外形はミクロな原子の配列が反映されており、その外形を見て特長を探すことで、鉱物のミクロな情報を引き出すことが出来るそうです。話の途中、「むずかしいよ~」と声を上げる子もいましたが、最後には情熱的な栗林准教授の説明にすっかり聞き入っているようでした。

 その後、黄鉄鉱などの鉱物模型を組み立て(図2)、模型を手にとって眺めながら対称性を探したり、実際の結晶との比較を行ったりしました(図3)。天然のきれいな結晶を観察すると、組み立てた模型と全く同じ形の鉱物が実際に産出していることに気づき、驚いている方が沢山いました。自然界の法則の美しさには誰もが心惹かれる魅力があるのではないでしょうか。特に子どもたちはきれいな鉱物に興味津々で、先生を囲んで鉱物の成因や色、形について沢山質問をしていました。"鉱物"と聞くと馴染みのないように感じますが、化粧品の原料として鉱物が利用されていることを栗林准教授が口にすると、子どもたちよりもその親御さんが目を光らせた姿も印象的でした。

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図2:鉱物模型を組み立てる様子

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図3:鉱物標本を熱心に観察します

 結晶観察の後には、パソコンのソフトを用いて鉱物の外形を描きました(図4)。パソコンの操作は少し難しいようでしたが、栗林准教授や大学生が親身に教えていただき、様々な形の結晶を自由に描いて楽しんでいました。

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図4:パソコンのソフトで鉱物の外形を描きます

 今回お話をしてくださった栗林准教授は、自身が小学生の時に観たNHKの科学番組がきっかけで鉱物に興味をもったそうです。当日参加してくれた小学生の中には、自分の家の周りのきれいな石を拾ってコレクションしている子もおり、栗林准教授に詳しいお話を聞いている姿も見受けられました。このぶらりがくをきっかけに、子どもから大人まで多くの人がサイエンスに対してより深い興味を持ってくれるようになると嬉しいですね。

2017年3月31日レポート

3月18日(土) 地学専攻 境田清隆教授 最終講義

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 3月18日(土)、理学研究科青葉サイエンスホールにて、地学専攻 境田清隆教授の最終講義「気候学40年」が行われました。
 境田先生は、学生時代に起こった冷夏を機に都市気候やヤマセに関する気候学の研究に取り組んでこられました。さらには中国内蒙古の砂漠化の研究など様々なスケールの大気現象の解明にご尽力されました。
 講義では、境田先生の生い立ちからこれまでの研究の成果など、たくさんの思い出の写真をスライドで映しながら振り返りました。また、学友会男声合唱部部長も長年務めておられ、次年度からは理学部の広報室長でもある小原先生に引き継がれたこともお話されました。
 会場は同窓生やご家族などで満席となり、長年にわたる研究・教育に対する敬意と感謝の思いを込めて、惜しみない拍手が送られました。
2017年3月24日レポート

3月7日(火) 電子光理学研究センター 清水肇教授 最終講義

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 3月7日(火)、電子光理学研究センター三神峯ホールにて、清水肇教授の最終講義「カイラル相転移前駆現象探索の道程」が行われました。
 清水先生は核物理(クォーク核物理)の研究に従事され、また、理学部附属原子核理学研究施設(核理研)が独立部局として電子光理学研究センターに改組した2009年12月から2015年3月まで、初代センター長を務められました。
 講義では、清水先生の生い立ちや、核物理研究の道に進むことになった学部生時代のエピソード、これまでの研究成果などをお話されました。冒頭で「たくさんの人たちに支えられ、大変感謝している」と清水先生がご挨拶され、さらに発表スライドやお話の中で清水先生とこれまでご縁があった方々のお名前がたくさん登場していたことがとても印象的でした。軽妙な語り口であっという間の90分でした。
 清水先生の今後のご健勝とますますのご活躍をお祈りいたします。

清水先生よりメッセージをいただきました
 
電磁カロリメータBGOegg建設の想い出

 私は、学位取得後から今日までに幾つもの大学を渡り歩きながら研究・教育に携わってきました。アメリカ合衆国Argonne National Laboratoryに研究員として3年、東工大の助手を4年、山形大では助教授・教授として10年、阪大核物理研究センターに2年、そして東北大で15年の年月を過ごしました。この間、クォーク核物理という比較的新しい研究分野の開拓に身を投じてきました。
 研究対象は、クォークで構成される粒子ハドロンと、そこに働く強い相互作用に関わる現象です。それは、量子色力学(QCD)で記述される世界ですが、非摂動領域のQCD現象が研究対象であり、難解な研究分野です。非摂動的に決められたQCD真空の励起状態としてハドロンを捉えると、ハドロン構造の研究とQCD真空の研究とは相互規定的だということになります。このような非摂動領域の研究の突破口は正に実験によって拓かれるという想いを強くして、そのための実験の立案と準備を進め、今日に至りました。そう簡単には結果は得られないであろうことは覚悟の上で、この分野の研究を進めてきましたが、案の定、ここまでに大した成果を挙げるに至っておりません。長い歳月を費やして、今ようやく光が見えてきたところなのです。しかし、悔いは全くありません。すぐに結果が得られる研究もあれば、なかなか結果が出ない研究もあります。学術的研究には色々なパターンがあって然る可なのです。
 QCD真空の研究に必要な4π電磁カロリメータ(後にBGOeggと命名)の建設を決意したのは20年ほど前のことです。それ以来、コツコツと準備を進めて参りました。このカロリメータは、一本1~2kg程度の大きさのシンチレーション単結晶1000本以上で構成されるために、非常に大きな予算が必要となりました。ちょうど今から10年前の2007年に運良く建設のための予算を獲得し、建設準備を開始しました。そこに至るまで、苦節10年。この大型予算獲得には、多くの方々の力添えがあったことを後で知りました。物理学の分野で強力に後押ししていただいたのみならず、化学や地球物理学など、他の研究分野の人々からの支援もあり、そのお陰で採択されました。関連の皆様に改めて御礼申し上げると共に、そのような後ろ盾を得られたことは誠に運が良かったと言う他はありません。
 当初、BSO単結晶による4π電磁カロリメータ建設を目指しました。BSOとは、Bismuth Silicate (Bi4Si3O12)のことで、既にシンチレーション単結晶として開発されていましたが、20年前には大型の単結晶を造る技術はまだありませんでした。結晶育成の専門家と共に約5年の歳月を費やして2002年に世界最大のBSO単結晶の育成に成功し、BSO大型化の技術を確立しました。電磁カロリメータ建設に際し、この技術を中国とロシアに持ち込み、大型BSO単結晶の大量生産を試みましたが、これが時間切れ失敗に終わり、BSO単結晶を用いることを断念しました。こうして、BSOに代わり、大型結晶大量生産の手法が確立しているBGO(Bismuth Germanate Bi4Ge3O12)単結晶1320本による4π電磁カロリメータBGOegg建設に向けた準備が開始されたのです。当初の計画から遅れること2年。
 5年間の研究の区切りの中で、最終年度を迎える直前に遭遇した東日本大震災は正に青天の霹靂であり、これによってあらゆる実験装置が破壊されました。就中、加速器が破壊されたために、その一部撤去・放射化物分別と復旧には約2年の歳月を要しました。山積みにしてあった鉛ガラス検出器が大部分破損するという状況の中で、組み込み直前であった1320本のBGO単結晶は不幸中の幸いなことに奇跡的に無傷でした。こうして、BGOeggは、震災復旧作業の最中、震災半年後から建設が再開され、それから約1年後に完成しました。
 BGOeggは数GeV領域のγ線検出器として世界最高のエネルギー分解能を示しています。現時点で、核媒質中でγ崩壊するη'メソンを世界最高の質量分解能を以て捉えており、核媒質中を伝播するη'メソンのスペクトル函数の直接測定が可能となっています。これにより、QCD真空の構造を知る突破口が開かれるものと期待しています。誰も知らない、BGOeggでしか測れない事象を発見する度に、研究者としての喜びを感じる今日この頃です。ここまで、苦節20年。定年を迎えましたが、私の研究は正にこれからが本番です。

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電子光理学研究センターの村松憲仁先生より
清水先生へのメッセージをいただきました  

 清水先生は、長年にわたり、クォーク核物理とその関連分野の研究を続けられ、ハドロン・原子核物理学の発展に大きく貢献されてきました。核物理コミュニティの活動においても数々の委員を務めてこられ、長年の研究活動を通して多数の人材を育成されてきました。電子光理学研究センターでは、初代センター長として、大学の枠を超えた共同利用・共同研究拠点の構築に御尽力され、震災後のセンターの復興に強いリーダーシップを発揮されたことは記憶に新しいところです。
 私自身は、先生が立ち上げられた電子光理学研究センターやSPring-8における共同研究プロジェクトを通して一緒に研究活動をさせていただき、多くのことを学ばせていただきました。実験装置の製作や実験の計画・進行における先生の情熱とこだわりは後進の誰もが強く感じるところで、細部や将来性に対して理を持って考え尽くすことの大切さを教えていただきました。最終講義では、長年の研究生活の中で我々の想像以上に数多くの実験装置を各所に残してこられたことをお聞きし、先生の研究姿勢のルーツについて納得しました。また、共同研究プロジェクトを進める上で生じた数々の問題を一緒に議論させていただいた経験は、私にとっていい思い出であり財産です。
 これまでも物理のアイデアを楽しそうに語られる先生のお姿が印象的でしたが、今後はいっそう悠々自適に研究活動を続けていきたいという強い御意思をお聞きしています。感謝の気持ちとともに、今後ともよろしくお願い致します。


2017年3月23日レポート

3月10日(金) 物理学専攻 高橋隆教授 最終講義

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 3月10日(金)、理学研究科青葉サイエンスホールにて、物理学専攻 高橋隆教授の最終講義「私と光電子分光との歩み」が行われました。
 青葉サイエンスホールがあっという間に満席になり、追加の席を用意してスタートとなりました。初めに落合先生より高橋先生の紹介がされました。高橋先生は、角度分解光電子分光、いわゆるARPES、の第一人者であり、ARPESによる物性研究を牽引されてきました。40年に亘るご研究で出版された論文は431編、総被引用数が15,000以上、h-indexが64となり世界中からその成果が大きく注目されております。講演中には記念すべき第1号の論文も紹介されました。
 
高橋隆先生よりメッセージをいただきました

 1981年に、理学部物理学教室に助手として赴任して来ました。新幹線の開業する1年前です。建設中の仙台駅に降り立った時に、頬をなでるヒンヤリとした早春の東北の風を心地よく感じた事を覚えています。以来36年間、理学部で研究・教育に従事できた事は、私自身の大きな喜びと満足となっています。
 この36年間の研究の中で最も印象に残っているのは、1980年代後半に出現した高温超伝導体です。疾風怒濤のような"高温超伝導フィーバー"の中で、研究室の学生や共同研究者らと一緒になって、無我夢中で研究を押し進めました。そのなかで得た信念のようなものがあります。
 それは、「自分のデータを持つ」と言うことです。自分でセットした実験装置で、自分で作製した試料を用いて測定したデータは"非常に強い"からです。自分がすべてを見ているからこそ、そのデータの"弱み"も、またそれを上回る"強み"も知っています。「自分の顔になるデータを持つ」と言うことは、自分の研究結果に確信とそして責任を持つということです。学生諸君や若い研究者の皆さんには、是非「自分のデータ」を持ち、そこから得た自分の結論を大きな声で主張して頂きたいと思います。それを支持する結果は、必ず現れます。

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  物理学専攻の佐藤宇史先生より
高橋先生へのメッセージをいただきました  

 高橋先生とは、学部4年生の時に研究室に配属されたときに初めてお会いしました。当時の私に、高橋先生は「光電子分光による高温超伝導機構の解明」という、大変やりがいのあるテーマを紹介して頂きました。それ以来、光電子分光の奥深さに惹かれ、あっという間に20年が過ぎてしまいました。高橋先生にはその間、研究者としての心構え、論文の書き方、学生の指導についてなど、研究・教育に関わるあらゆることをご教授いただきました。私が研究者の道を進んで来られたのも、高橋先生の研究に対する情熱に引き込まれ、先生に一歩でも近づきたいという思いで頑張れたからと思います。これまで熱心にご指導いただいたこと、大変感謝しております。これからは少し自由な立場になられて、より一層研究に集中されることと思います。益々のご健康とご活躍をお祈りいたします。

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佐藤宇史先生がM1の頃(1998年)、光電子分光装置の前で。
(右から2番目が高橋先生、1番目が佐藤先生)

2017年3月22日レポート

3月3日(金) 化学専攻 十川和博教授 最終講義

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 3月3日(金)、理学研究科大講義室にて、化学専攻 十川和博教授の最終講義「転写抑制と神経細胞死」が行われました。
 十川先生は生命科学研究科所属ですが、化学専攻の生物化学研究室を担当し、神経疾患の発症メカニズムの研究に従事されました。
 生命科学研究科長の東谷先生より「常に研究に没頭しており、生涯現役の先生」とご紹介があり、多くの方が聴講されるなか、大阪大学理学部化学科で学んでいた頃からこれまでの研究成果、当時経験した出来事、さらには趣味のエレキギターを演奏している映像など、多岐にわたるご活躍についてお話されました。
 十川先生の今後のご健勝とますますのご活躍をお祈りいたします。
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