東北大学 大学院理学研究科・理学部

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宇宙に響く「さえずり」をとらえた!

発表のポイント


● 地球近傍の宇宙空間であるジオスペース(注1)において、「コーラス(注2)」と呼ばれる電波をとらえることに成功

● コーラスは、地球をドーナツ状に取り巻く放射線帯の形成・消失に深く関わる

● あらせ衛星によって世界最先端の精密観測が行われ、地球周辺の宇宙環境の謎を解明することが期待される



概要


 平成28年12月20日に打ち上げられたJAXAジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG) (注3)(図1)の最初の成果として、地球近傍の宇宙空間であるジオスペースにおいて、「コーラス」と呼ばれる電波をとらえることに成功しました。「あらせ」による世界最先端の精密観測により、地球周辺の宇宙環境の謎の解明が期待されます。「あらせ」は東北大学・小野高幸名誉教授らによって開始されたプロジェクトで、東北大学所属の研究者が中心的な役割を果たしています。

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図1:平成28年12月20日打ち上げ時の写真
(撮影:松田昇也 日本学術振興会特別研究員・名古屋大学)


詳細な説明


 JAXAジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)は、平成28年12月20日に宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)によって打ち上げられました。「あらせ」は約3か月にわたる観測準備が無事終了し、3月24日から定常運用に移行しました。太陽活動に伴って大きく変動する地球周辺の宇宙空間、人類の宇宙活動の現場でもあるこの領域での高エネルギー粒子や電磁波などの観測が本格的に始まります。
[参考-JAXA発表: http://www.isas.jaxa.jp/topics/000920.html]

 この衛星プロジェクトは、平成25年12月に逝去された小野高幸(おのたかゆき)本学名誉教授をリーダーとして開始されました。小野教授の心血が注がれたこの衛星には、笠羽康正(かさばやすまさ)教授、熊本篤志(くまもとあつし)准教授、土屋史紀(つちやふみのり)助教、加藤雄人(かとうゆうと)准教授らの開発による プラズマ波動・電場観測器(PWE)、およびこの装置など複数機器の観測データをまとめたS-WPIA(ソフトウェア型波動-粒子相互作用解析装置)が搭載され、本衛星の主役をなしています。
[参考-東北大学の関わり] http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20161003-8051.html

 「あらせ」は、早速、地球上各点に配置されたオーロラ観測拠点などとの共同観測(リーダー:名古屋大学 塩川和夫(しおかわかずお)教授 [本学出身])を開始しています。最初の成果として、地球近傍の宇宙空間であるジオスペースにおいて、「コーラス」と呼ばれる電波をとらえることに成功しました(図2)。この電波は、可聴域でもある数キロヘルツの周波数帯で発生し、音声に変換すると「小鳥のさえずり」のように聞こえます。このコーラスは、高エネルギー粒子群に満ち溢れた「ヴァン・アレン帯(放射線帯)」の消長に関わると提唱されており、「あらせ」の足元に位置する地上観測点との同時観測によって、地球周辺の宇宙環境変動の謎が解明されていくことを期待しています。観測データは、JAXAと名古屋大学で運用される「ERGサイエンスセンター」で順次公開されます。本学は、他衛星や国際宇宙ステーションでの観測(小原隆博(おばらたかひろ)教授)、地上観測(坂野井健(さかのいたけし)准教授)においても、このプロジェクトを支えていきます。

「あらせ」・PWE開発担当者


主任研究者
•笠原 禎也 (金沢大学)

副主任研究者
•笠羽 康正 (東北大学) (2015年までPWE主任研究者)
•小嶋 浩嗣 (京都大学)
•八木谷 聡 (金沢大学)

共同研究者
•石坂 圭吾 (富山県立大学)
•熊本 篤志 (東北大学)
•土屋 史紀 (東北大学)
•尾崎 光紀 (金沢大学)
•井町 智彦 (金沢大学)
•三好 由純 (名古屋大学) [「あらせ」観測責任者,本学出身]
•松田 昇也 (名古屋大学)
•栗田 怜  (名古屋大学)
•中川 朋子 (東北工業大学)
•疋島 充 (JAXA/ ISAS)
•加藤 雄人 (東北大学)
•三澤 浩昭 (東北大学)
•木村 智樹 (理化学研究所)

参考図


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図2:コーラスの電磁波のデータ
縦軸は波の周波数(振動数)、横軸は時間を表します。図は8秒間のデータで、変化する波の強さを色で表しています。図中に多く見られるハケでこすったような強い波が「コーラス」で、バンアレン帯生成のメカニズムに深く関与するとされています。



用語解説


(注1)ジオスペース
大きな磁石でもある地球は、地球固有の磁場の影響をその周囲に強く及ぼしています。地球の大気は、宇宙空間では希薄な電離気体として地球の周りを取り巻いています。こうした地球の影響が強く及んでいる宇宙空間を「ジオスペース」と呼んでいます。

(注2)コーラス
宇宙空間で自然に発生している電磁波で、地球の近くの宇宙空間の激しい変動(宇宙嵐)に深く関係があるとされています。宇宙は真空なので音を直接聞くことはできませんが、その電波を受信してスピーカーにつなぐと、小鳥の声のように聞こえることから「宇宙のさえずり」とも呼ばれています。

(注3)ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)
地球の赤道上空を中心にドーナツ状に取り巻く放射線の強い領域「ヴァン・アレン帯(放射線帯)」の観測を目的としています。ヴァン・アレン帯内は放射線が飛び交い、観測が非常に困難です。ヴァン・アレン帯のメカニズムを解明するためにはヴァン・アレン帯内部の電磁場と高エネルギー粒子を同時観測する必要があり、PWEはミッション達成の重要なカギとなる、電磁場計測を行います。



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科地球物理専攻
教授 笠羽 康正(かさば やすまさ)
TEL:022-795-6734
E-mail:kasaba[at]pat.gp.tohoku.ac.jp


<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科
特任助教 高橋亮(たかはし りょう)
電話:022-795-5572、022-795-6708
E-mail: sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp

*[at]を@に置き換えてください



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