東北大学 大学院理学研究科・理学部

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天の川銀河形成の名残を捉えることに成功 年老いた星の元素組成から矮小銀河合体の痕跡を発見

発表のポイント

● すばる望遠鏡を用いた年老いた星の観測で、マグネシウム、および重元素の組成が際立って特異な星を新しく発見した。

● 本研究で発見した星は、過去に矮小銀河が天の川銀河へ合体したことを表すかつてない痕跡。

● 今後同じような星がたくさん見つかることで、天の川銀河形成過程の解明の鍵となることが期待できる。



概要

中国国家天文台、国立天文台、兵庫県立大学、東北大学などの研究者からなる国際研究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測により、天の川銀河の誕生と成長の過程で合体してきた矮小銀河(大変小さく暗い銀河)の痕跡といえる星の発見に成功しました。新しく見つかった星はマグネシウムや重元素で特異な元素組成比を示し、これほど特徴的な元素組成を持つ恒星が天の川銀河で見つかったのは初めてです (図)。

本研究成果は、2019年4月29日発行の英国の科学専⾨誌『Nature Astronomy』オンライン版に掲載されました。



詳細な説明

天の川銀河がいつ、どのようにして現在の姿になったのか、その詳細はいまだに大きな謎に包まれています。一つのシナリオとして、質量が天の川銀河の1千分の1以下であるような、小さく暗い銀河「矮小銀河」(注1)が合体して形成された可能性があります。天の川銀河の形成過程を調べる上で鍵となるのは、天の川銀河に含まれる年老いた星の元素組成です。年老いた星の大気には、その星が生まれた当時に存在した元素の組成がほぼそのまま残っており、天の川銀河形成を調べる上で最も重要な情報源となっています。

中国国家天文台、国立天文台、兵庫県立大学、東北大学(観測時は東京大学所属)の研究者からなる国際研究チームは、銀河系探査プロジェクトLAMOSTサーベイ(注2)で見つかった特異な元素組成を持つ星の候補を、すばる望遠鏡に取り付けられた分光観測装置HDS(注3)を使って追観測し、詳しい元素組成を初めて測定しました。その結果、そのうちの一つの星「J1124+4535」では、マグネシウムの鉄に対する組成比が極端に低く、ユーロピウム(注4)と呼ばれる重い元素の組成比が極端に高い、特異な元素組成を持つことを明らかにしました。これほど特異な元素組成を持つ星は天の川銀河には見られず、その周囲に存在する矮小銀河でのみ観測されています。このことから、我々は、この星がもともと矮小銀河で誕生し、その矮小銀河の合体を通して天の川に取り込まれた可能性が高いと結論づけました。

今回の発見は、天の川銀河へ過去に矮小銀河が合体したことの明確な証拠と考えられます。今後同様の観測で、このような星が天の川銀河にどれくらい含まれているかを調べることで、天の川銀河の形成過程の解明の鍵となることが期待できます。



用語解説

(注1)矮小銀河
質量が天の川銀河の千分の1にも満たない大変小さく暗い銀河。天の川銀河の周りには矮小銀河がおよそ60個程度見つかっています。

(注2)LAMOST (Large Sky Area Multi-Object Fiber Spectroscopic Telescope)サーベイ
中国にある口径4メートルの望遠鏡で、1度に4000個もの星のスペクトルを取得できる分光器を備えています。LAMOSTを使った天の川銀河サーベイでは、これまでにたくさんの星のスペクトルを取得し、その中で特徴的なスペクトルを持った星が新しく見つかっています。より詳しい元素組成を測るための追観測がすばる望遠鏡などで行われています。

(注3)HDS(High Dispersion Spectrograph)
すばる望遠鏡に取り付けられた高い波長分解能を持つ分光器。高い波長分解能と口径8mのすばる望遠鏡の集光力によって、古い星の大気に含まれる元素の詳細な分析が可能な装置です。

(注4)ユーロピウム
金やプラチナなど非常に重い元素は、主に種となる原子核にたくさんの中性子が捕獲される「r過程」で合成されます。ユーロピウムはそのr過程でできる重い元素の代表的なもので、星の紫外・可視光スペクトルの分析で組成を測ることができます。最近の重力波の観測により、r過程は中性子星の合体で起こることが分かってきました。



参考図

20190522.png

図. 新しく見つかった星「J1124+4535」の元素組成(赤丸)。上からマグネシウム/鉄組成比、ユーロピウム/鉄組成比、ユーロピウム/マグネシウム組成比を、金属量(鉄組成)に対してプロットしている。J1124+4525のマグネシウム/鉄比(上パネル)は、天の川銀河の星(灰色点)とは大きく異なるいっぽうで、矮小銀河の星(赤色星)と似た傾向を示すことがわかる。ユーロピウム/鉄比(中央パネル)が高い特徴は、天の川銀河では金属量の非常に低い星の間でしかみられていなかった(青丸)。このことからも、J1124+4535が天の川銀河とは全く異なる環境で生まれた可能性を示している。
Copyright(著作権): Wako Aoki



発表雑誌

雑誌名: Nature Astronomy
論文タイトル:Evidence for the accretion origin of halo stars with an extreme r-process enhancement
著者:Xing, Q.-F., Zhao, G., Aoki, W., Honda, S., Li, H.-N., Ishigaki, M. N., Matsuno, T.
DOI番号:10.1038/s41550-019-0764-5
URL:https://arxiv.org/abs/1905.04141



問い合わせ先


東北大学大学院理学研究科天文学専攻
学術研究員 石垣 美歩(いしがき みほ)
電話:022-795-6512
E-mail: miho[at]astr.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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