東北大学 大学院理学研究科・理学部

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【研究成果】2015年ネパール大地震の震源を探る ―2011年東北地方太平洋沖地震と類似―

概要


 東北大学と中国地震局の国際研究チームは、2015 年ネパール大地震(マグニチュード(以下M) 7.8)の本震が、地震波速度の大きい地域(高速度域)に位置し、またこの高速度域が本震の地震時すべりの大きい場所とよく一致することがわかりました。その高速度域が震源断層面上の強く固着する部分を表し、2015年ネパール大地震の発生が断層面上の構造不均質によってコントロールされていると考えられます。このことは、2011年3月11日に起こった東北地方太平洋沖巨大地震(M9.0)の発生特徴とよく似ており、またこれらの巨大地震を引き起こす構造不均質が地球物理学的手法で検出できることを意味します。


研究内容


 2015年4月25日にネパールの首都カトマンズ北西77km付近で深さ15km、M7.8の大地震が発生しました(図1)。この地震によってネパールでは建物の倒壊、雪崩、土砂災害などにより甚大な被害が発生し、死者が約8,500人、負傷者が15,000人にも上りました。ネパール地域では、ヒマラヤ山脈の南縁からインド亜大陸を含むインドプレートがユーラシアプレートに衝突し沈み込んでいる収束型境界が存在しています。二つのプレートの相対速度はネパール付近では年間約2cmであり、そのため地震活動が極めて活発な地域です。プレート同士の衝突によってヒマラヤ山脈が形成され、現在も年間約0.5cmの速さで隆起を続けています。このプレート境界ではヒマラヤスラストと呼ばれる衝上断層が形成されています。これまでの200年間にネパール地域で何回もの大地震が起こりました。例えば、1833年8月26日の地震(M8.0)、1883年9月30日の地震(M7.0)、1934年1月15日の地震(M8.2)、2015年4月25日のネパール本震と2015年5月12日に起こったその最大余震(M7.3)などです(図1)。これらの大地震は、すべてプレート境界の衝上断層の破壊によって起ったと考えられます。

 研究チームは、地震波トモグラフィー法(注1)を大量の近地地震波走時データに応用し2015 年ネパール大地震震源域の三次元P波速度構造を詳しく研究しました。その結果、1833年の地震(M8.0)と2015年ネパール本震(M7.8)が地震波速度の顕著に大きい地域(高速度域、図2aの青色の部分)に位置し、その最大余震(M7.3)が高速度域の東端に位置することがわかりました(図2a)。また、この高速度域が2015年本震の地震時すべり域とよく一致することがわかりました(図2b、図2c)。この高速度域がヒマラヤスラスト断層面上の強く固着する部分を表し、2015年の地震を含むネパール大地震の発生が、断層面上の構造不均質によってコントロールされていると思われます。

 これらのネパール地震の発生特徴は、2011年3月11日に起こった東北地方太平洋沖巨大地震(M9.0)の発生特徴と類似しています(図3)。1900年から東北沖で起ったほとんどの大地震が、高速度域か、高速度域と低速度域の境界部に位置しています。また、2011年3月11日の本震の地震時すべりの大きい地域も高速度域とよく一致しています。

 これらの結果は、プレート境界型の大地震がランダムに発生したのではなく、それを引き起こす断層面上固有の構造不均質の分布によって規制されていることを意味します。また、その構造不均質と固着の強い場所(つまり、大地震の発生源)は、地震波トモグラフィーなどの地球物理学的手法でイメージングできることを示唆しています。このことは、大地震の発生予測とその災害軽減にとって、重要な意義を持つと思われます。


発表雑誌


 この研究は、東北大学の趙大鵬教授と中国地震局地質研究所のWei Wei博士の共同研究により行われました。研究成果は、2016年2月3日に世界最大の科学出版社であるElsevier社の地球科学専門誌「地球と惑星内部の物理学」に掲載されました (Wei, W. and D. Zhao, 2016. Tomography of the source zone of the 2015 M 7.8 Nepal earthquake. Physics of the Earth and Planetary Interiors 253, 58-63, http://dx.doi.org/10.1016/j.pepi.2016.01.008)。この研究は科学研究費補助金のサポートを受けています。


参考図

20160229_10.jpg 図1.本研究領域。と★は大地震の震央を表し、その発生年月日とマグニチュードは星印のそばに示されている。が2015年ネパール大地震の余震を示す。□はネパールの首都カトマンズを示す。黒線は活断層を、青線は国境を示す。


20160229_20.jpg 図2. (a) 〜(c)のいずれも□はカトマンズを示す。
(a) 2015年ネパール大地震の断層面におけるP波トモグラフィー。赤色から青色に遷移するつれP波速度が増す。左は2015年ネパール地震の本震(4月25日、M 7.8)、右は余震(5月12日、M 7.3)、○がより小さい余震を示す。
(b) 東京大学地震研究所(Koketsu et al., 2015; http://taro.eri.u-tokyo.ac.jp/saigai/2015nepal/)が求めた2015年ネパール本震の地震時すべり分布。
(c)筑波大学(Yagi & Okuwaki, 2015 GRL)が求めた2015年ネパール本震の地震時すべり分布。


20160229_30.jpg 図3.
(左) 2011年東北地方太平洋沖地震の震源断層である沈み込んでいる太平洋プレート上面におけるP波トモグラフィー (Zhao et al., 2011 GRL)。☆印は3月11日に起こった本震(M 9.0)とその大きな余震(M7.0より大きい)を示す。○は1900年から2011年2月までに起こった地震を示す。日本海溝と沈み込んでいる太平洋プレート上面の等深線も示されている。
(右) 2011年の本震(M 9.0、☆印)の地震時すべり分布(Yue and Lay, 2011 GRL)。赤色は地震時すべりの大きい場所を示す。
二本の青線は宮城沖の高速度域(a)と大きい地震時すべり(b)の南北範囲を示す。


用語解説


 (注1) 地震波トモグラフィー法
 コンピュータで大量の地震波伝播時間のデータを処理することによって、地球内部の3次元地震波速度分布を求める方法です。その原理は医学CTスキャンと同じです。地震波トモグラフィーは今現在地球内部の3次元構造を探る最も有力な手段となっています。

お問い合わせ先


東北大学大学院理学研究科
地震・噴火予知研究観測センター
教授 趙 大鵬(ちょう たいほう)
TEL: 022-225-1950
E-mail: dapeng.zhao.d2[at]tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください

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