国立大学法人東北大学東北アジア研究センター(兼務 同大学院理学研究科地学専攻)の辻森樹教授、テキサス大学ダラス校R.J.スターン教授、ローレンシャン大学のM.I.レイボーン准教授らの国際共同研究チームは、天然ダイヤモンドの母岩として知られるキンバレー岩(注1)の噴出数の急増とプレートテクトニクスの関係について新しい解釈を提唱しました。
天然ダイヤモンドの母岩として知られるキンバレー岩(左図)のマグマは大量の水と炭酸ガスを含み、深さ約150−200キロメートルの地底深くの物質を地表に向かって高速に吹き上げると考えられています。約46億年の地球の歴史のなかで、キンバレー岩の噴出は10億年前より古い時代にはほとんど存在せず、7.5億年前以降に急激に増加します(右図)。キンバレー岩の噴出の急増はプレートの沈み込みに伴って地球内部まで水が供給される現在型のプレートテクトニクス(注2)の様式が約10億年前に始まったことを示すと証拠と言えます。
本成果は、米国地質学会発行の「Geology」2016年10月号に掲載されるのに先立ち、8月17日付電子版に掲載されました。
太陽系の惑星で唯一、地球にはプレートテクトニクスが機能し、地球内部の物質進化や表層環境の多様性に大きな役割をはたしています。約46億年の地球史を通して固体地球の温度が徐々に低下した結果、現在の地球ではプレートの沈み込みに伴って地球内部までまで水が供給されていると考えられています。ところが、現在型のプレートテクトニクスの様式がいつ始まったのかについては未だにいくつかの説があります。
本研究は ダイヤモンド原石の母岩として知られるキンバレー岩(左図)の噴出に着目しました。キンバレー岩はマントル起源の特異な火山岩の一種で、世界各地の先カンブリア時代の大陸楯状地に産します。キンバレー岩を形成するマグマは大量の炭酸ガスと水に富み、その爆発的な激しい噴出は大陸の地底深くの岩塊やダイヤモンドの結晶を地表に向かって高速に吹き上げると考えられています。キンバレー岩の噴出した時代を評価した結果、その噴出は10億年前より古い時代にはほとんど存在せず、7.5億年前以降に急激に増加することがわかりました。世界のキンバレー岩の約95%は7.5億年前より若い時代に噴出したものです(右図)。
プレートの沈み込み帯(注3)において、沈み込むプレートの上面温度が十分に低い環境が誕生し、結果的にマントルまで含水鉱物が安定に存在できるようになったことを示唆する地質学的証拠として、藍閃石やローソン石を含む低温高圧変成岩、コース石を含む超高圧変成岩などの岩石の存在が知られています。それらの出現は約7.5億年前より若い新原生代以降の造山帯に限られます。キンバレー岩の噴出の急増は、プレートの沈み込みに伴って地球内部まで水が供給されるようになったと考えられる時代と調和的で、現在型のプレートテクトニクスの様式が約10億年前に始まった、あるいはその頃に地球上のいたるところで卓越していたことを示す新しい証拠と言えます。
タイトル:Kimberlites and the start of plate tectonics
著者名:R.J. Stern1, M.I. Leybourne2, and Tatsuki Tsujimori3,4
所属:1.テキサス大学ダラス校(アメリカ)、2.ローレンシャン大学(カナダ)、3.国立大学法人東北大学東北アジア研究センター、4.国立大学法人東北大学理学研究科
DOI: 10.1130/G38024.1
東北大学東北アジア研究センター
担当 辻森 樹
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