東北大学 大学院理学研究科・理学部

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【研究成果】東北沖地震後のプレート沈み込み加速 〜首都圏地震活動の活発化の原因を推定〜

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関東地方下に沈み込む2 枚のプレートとその動き


概要


 東北大学の内田直希准教授と長谷川昭名誉教授は、防災科学技術研究所の浅野陽一主任研究員とともに、関東地方下に存在する3枚のプレートの境界面で発生しているくり返し地震を用いて、地下のプレートの動きの時間変化を調べました。その結果、関東地方下では、東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)がその上部境界面で発生した太平洋プレートに加え、フィリピン海プレートでも、東北沖地震後、沈み込みの加速が起きていたことを突き止めました。このような地域的なプレート沈み込みの加速が、2011年東北沖地震以降、首都圏にみられる地震数の増加の主な原因と考えられます。



研究内容


 関東地方の下には、南からフィリピン海プレート(注1)、東から太平洋プレート(注2)の2枚のプレートが沈み込んでいます(図1)。この領域では、2011年の東北沖地震以降、地震活動が増加し、2012年から2015年にかけて、それまでの1.6~2.6倍の地震が起きています(図2)。これらの地震のほとんどは中小規模のものですが、より大きな地震の発生確率を上げる可能性がある現象として、懸念されています。
 この地震活動の活発化は、東北沖地震が発生した太平洋プレート上面だけでなく、幅広い深さ範囲で起こっており、また、フィリピン海プレートの上面のスロースリップイベント(注3)の発生間隔も短くなるという現象も発生しました。これらは、東北沖地震による影響と考えられますが、大きな地震のあとによく見られる余効すべり(注4)が、太平洋プレートの上面に沿って拡大したという考えだけでは説明できない現象です。
 本研究では、陸のプレート(オホーツクプレート)とフィリピン海プレートの間の境界(浅部プレート境界、図1)とフィリピン海プレートと太平洋プレートの間の境界(深部プレート境界、図1)で発生するくり返し地震(注5)を用いて、その境界での断層の非地震的なすべりの速さおよび方向の時間変化を推定しました。その結果、東北沖地震後、深部プレート境界では、それまでの2.4-6.6倍、浅部プレート境界ではそれまでの1.3-6.2 倍(図3)の速さですべっていることがわかりました。さらに、すべり方向の変化についてみると、深部プレート境界で東北沖地震前後に4度を超える方向の変化はなかったことがわかりました。これはまるで、ビデオの早回しのように、それまでと同じようなプレートの沈み込みが速さだけ増加したことを示します。
 以上の結果から、東北沖地震を境とする首都圏の地震活動の増加は、沈み込む2枚の海洋プレートの動きが、関東地方下で加速したことが主な原因と考えられます。このようなプレートの動きには、東北沖地震による太平洋プレートやその周囲の物質のゆっくりとした動きに加え、関東地方下のプレートの間の相互作用が関わっていると考えられます。また、今回、地域的な沈み込み速度の増加が推定された浅部のプレート境界は、200-400年間隔でくり返している関東地震(最近は1923年)の深部延長にあたり、この地震の震源域にも影響を与えた可能性もあります。



参考図

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図2. 東北地方太平洋沖地震前後の関東地方の地震数の推移

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図3. フィリピン海プレートと陸のプレートの間(浅部プレート境界)でのすべり量の推移と変位速度


発表雑誌


Uchida, N., Asano, Y. and Hasegawa, A. (2016) Acceleration of regional plate subduction beneath Kanto Japan, after the 2011 Tohoku-oki earthquake, Geophysical Research Letters, doi:10.1002/2016GL070298.
※ 本研究は、JSPS科研費(15K05260)および文部科学省 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の助成を受けたものです。



用語解説


(注1)フィリピン海プレート
日本付近では関東地方および西日本に沈み込むプレート(岩盤)。関東地方では、太平洋プレートと陸のプレートの間に挟み込まれるように存在する。このプレートの沈み込みが、相模トラフに近い場所で、1923年の関東地震を発生させた。

(注2)太平洋プレート
日本付近では北海道~関東地方に沈み込むプレート。2011年の東北沖地震は、このプレートと陸のプレートの境界で起きた。

(注3)スロースリップイベント
断層の両側の岩石が、人間が感じるような地震波を放出せずに、ゆっくりとずれ動く現象。通常の地震と同一の断層上で発生し、スロースリップと地震の間には密接な相互作用があると考えられている。

(注4)余効すべり
地震のあとに震源域あるいはその周囲で発生するゆっくりとしたすべり。

(注5)くり返し地震
断層上の同じ場所のくり返し破壊。固着が強い場所が局所的に存在し、その周辺が非地震的にすべることで発生すると考えられる。くり返し地震のすべりを積算することで、周囲の非地震性すべりの量を推定することができる。



お問い合わせ先


東北大学大学院理学研究科
地震・噴火予知研究観測センター
准教授 内田 直希(うちだ なおき)
電話 022-795-3917
E-mail:naoki.uchida.b6[at]tohoku.ac.jp

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