東北大学 大学院理学研究科・理学部

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地震活動に関連した大気中ラドン濃度の異常を検出

発表のポイント

● 地震活動に関連した大気中ラドン濃度の異常を抽出した。

● 大気中ラドン濃度異常と地震活動の関連性を定量化した。

● 東北地方太平洋沖地震前の地下水位変動や地殻変動と大気中ラドン濃度変動の関連を明らかにした。



概要


東北大学大学院理学研究科地学専攻の岩田大地(博士課程後期2年、東北大学学際高等研究教育院博士研究教育院生2年)、長濱裕幸教授、武藤潤准教授と、神戸薬科大学の安岡由美准教授による合同研究グループは、地震活動と関連する大気中ラドン濃度の異常変動を検出しました。本研究成果より、大気中ラドン濃度異常変動と地震活動の関連性を定量化する方法が提案されました。今後、本研究成果により地震活動に起因する大気中ラドン濃度異常変動のメカニズムの解明や地震発生リスク評価への貢献が期待されます。この成果は、平成30年8月29日にオープンアクセスジャーナルScientific Reportsにオンライン公開されました。

□ 東北大学ウェブサイト



背景


ラドン(注1)は、地殻に含まれる放射性物質です。地殻に力が加わり、割れ目が発達すると、隙間を通って、地表へ放出されます。これまで、地震発生の前後に大気中のラドン濃度の異常変動が指摘されてきました。しかし、地殻中でのラドンの動態は不明なため、異常変動の定義が曖昧であり、地震活動とどのくらい関連するのかを定量的に明らかにはされてきませんでした。ラドン濃度の変動から地震発生に関する評価をするためには、まず客観的な異常変動の定義・地震活動との関連性の定量化が求められていました。



研究成果


東北大学理学研究科の岩田大地大学院生らは、医科・薬科大学で観測されている大気中ラドン濃度のデータに異常検出のデータ解析手法(特異スペクトル変換法(注2))を適用することで、時系列データの異常部分を客観的に抽出しました(図1,2)。さらに、地震活動を表す積算地震モーメントの時系列データと比較することで(図3)、大気中ラドン濃度の異常変動が地震活動とどの程度関連するかを定量的に明らかにしました。また本研究では、地下水位の変化や地殻変動が観測された時期と同期し大気中ラドン濃度の異常変動が認められたことも指摘しています。



今後の展望


本研究を通して、大気中ラドン濃度と地震活動の関連が定量的に明らかになりました。ラドン濃度を変動させる物理的な過程については未だ不明な点が多くあります。今後は、物理的な過程を明らかにし、地震発生リスクの評価へ貢献するために大気中ラドン濃度の異常変動から地震発生に関する情報を抽出する研究を検討しています。



用語説明


(注1)ラドン
地殻に偏在するラジウムが放射性壊変し、生成する放射線同位元素。自然界に広く存在する無色・無臭の不活性なガスで、半減期は約3.8日。ラドンは地殻中の割れ目などを通って地表から大気中に散逸する。

(注2)特異スペクトル変換法
時系列データの特徴パターンの変化から異常変化の度合いを算出する解析手法。時系列モデルを明示的に与えなくても解析が可能な方法。



論文情報


雑誌名: Scientific Reports
論文タイトル:Non-parametric detection of atmospheric radon concentration anomalies related to earthquakes
著者:Daichi Iwata, Hiroyuki Nagahama, Jun Muto and Yumi Yasuoka
DOI番号:DOI:10.1038/s41598-018-31341-5
URL:www.nature.com/articles/s41598-018-31341-5



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図1. 大気中ラドン濃度観測点(観測点1,2)と地震データ解析領域(領域1, 2)。
e1-e14は大気中ラドン濃度の異常変動と関連していると考えられる(図2参照)地震の震央位置を表す(e8:マグニチュードM8.3, e9:マグニチュードM8.1)。

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図2. 大気中ラドン濃度と積算地震モーメント時系列からの異常抽出の結果。 地震発生(e1-e14)に前後して大気中ラドン濃度の異常度(生データより算出)が高い値を示す傾向がある(図中b, f).e8, e9, e13は、規模が大きい地震のため、離れた観測点である観測点1へ影響したと考えられる。3σ(図中a, e)は標準偏差の3倍を表す。

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図3. 大気中ラドン濃度と積算地震モーメント時系列の異常度の比較。
(1)地震系列の積算モーメントを計算する。(2)特異スペクトル変換法を用いて異常度を算出。(3)地震系列をランダムに並べ替えて積算モーメントを計算し、同じく異常度を算出する。(4)大気中ラドン濃度の異常度が地震積算モーメント異常度とランダムに並べ替えた地震積算モーメントの異常度のどちらと類似しているかを比較する。



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科 地学専攻
博士課程後期2年 岩田 大地(いわた だいち)
電話:022-795-6625
E-mail:daichi.iwata.r6[at]dc.tohoku.ac.jp

東北大学大学院理学研究科 地学専攻
教授 長濱 裕幸(ながはま ひろゆき)
電話:022-795-7778
E-mail:h-nagahama[at]m.tohoku.ac.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院 理学研究科
特任助教 高橋 亮(たかはし りょう)
電話:022-795-5572、022-795-6708
E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp
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