東北大学 大学院理学研究科・理学部

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地球物理学専攻 加納 将行 助教 が 2018年度日本地震学会若手学術奨励賞 を受賞

地球物理学専攻 加納 将行 助教 が 2018年度日本地震学会若手学術奨励賞 を受賞しました。


■受賞者:地球物理学専攻 加納 将行 助教

■賞 名:2018年度日本地震学会若手学術奨励賞

■受賞題目:データ同化に基づく断層すべりの理解・予測と波動場推定の高度化に向けた研究

■受賞理由:
近年、地殻変動・地震観測網の充実や計算機性能の向上はめざましい。しかしながら、従来の地震学では観測データ解析と物理数値モデリングは独立に行われてきた。受賞者は、こういった状況を打破するべく、大気海洋物理分野で開発された両者を融合する4次元データ同化手法を地震学に先駆的に導入し、余効すべりやスロー地震などの沈み込み帯の断層すべりの理解や予測、地震波動場推定の高度化に向けた研究で、データ同化の有用性を示してきた。
受賞者は、沈み込むプレート境界での断層すべりを支配する摩擦特性を、アジョイント法により推定する手法の開発を行った。さらに、2003年十勝沖地震の余効すべり発生域の摩擦特性の空間分布を推定し、余効すべりの予測性能が向上することを示した。この成果は地殻変動データから摩擦特性が推定できることを示すとともに、断層すべりの予測に対するデータ同化の有効性を示している。
受賞者はデータ同化研究以外にも、地震観測データ解析にも取り組み、スロー地震発生場の特徴の抽出にも成功している。四国西部では微動カタログやGNSSデータの解析を行い、スロー地震の発生様式が発生環境で規定され、スロースリップの時間発展がイベントごとに異なることも示した。これらは、データ同化による断層すべりの物理的理解と予測研究への知見となる。
さらに、限られた地震観測点からマルコフ連鎖モンテカルロ法に基づく地震波動場の推定手法の開発も行い、首都圏地震観測網で得られた地震波形への適用を通して、長周期の地震波動場の推定が行えることを示している。この成果は、今後の推定手法の高度化に伴い、地震発生時の即時的な被害推定や二次災害の軽減へ貢献できる可能性を有する。
以上のように、受賞者はデータ同化の手法を地震学に先駆的に取り入れ、今後の地震学におけるデータ同化研究の発展の基礎を確立した。受賞者は、データ同化のみならず、地震観測および測地学的データ解析においても着実に成果を上げている。受賞者が構築に貢献したスロー地震カタログデータベースも、地震学や関連する地球科学全体へのさらなる発展に寄与するものと期待される。

■受賞日:2019年5月29日

■授与機関:公益社団法人 日本地震学会

■関連URL :公益社団法人 日本地震学会 website



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