東北大学 大学院理学研究科・理学部

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隕石衝突でアミノ酸生成 太古の地球と火星では大気主成分を材料として生命分子が生成された!

発表のポイント

● 隕石衝突反応の模擬実験を行い、衝突によって二酸化炭素、窒素、水、隕石鉱物からアミノ酸が生成することを明らかにしました。

● 生命誕生前の地球大気の主成分と海洋の主成分、隕石の主要鉱物から、タンパク質の材料であるアミノ酸が生成することを示したものです。

● 約40億年前の火星でも、衝突によって生命の材料分子が生成していた可能性を示しています。

□ 東北大学ウェブサイト



概要

生命誕生前の地球の大気は二酸化炭素と窒素が主成分と考えられており、そのような環境で生命の材料分子が生成する条件は非常に限定的と考えられてきました。東北大学理学研究科の古川善博准教授らの研究グループは、二酸化炭素、窒素ガスを炭素源と窒素源として、太古の地球に小惑星や隕石が高速で衝突することによって、タンパク質を作るアミノ酸が生成することを明らかにしました(図1)。この研究結果は、地球上において普遍的に存在した大気成分から生命材料が生成したことを示しています。また、約40億年前の火星においても、同様の現象で化学進化(生命誕生までの化学反応)の初期段階であるアミノ酸の生成が起こっていた可能性を示しています。
本研究成果は2020年6月8日(月)公開の英国科学誌Scientific Reportsに掲載されました。

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図1:隕石海洋衝突のモデル図(Credit: Tohoku University/ Yoshihiro Furukawa)



詳細な説明

生命の起源につながる材料は、太古の地球で生成したものと地球外から飛来したものがあると考えられてきました。地球外からの有機物は、隕石や彗星塵に含まれて飛来していたと考えられていますが、その量や種類は定かではありません。地球で生成し得る有機物の種類や量は当時の地球大気の組成が大きく影響します。大気の微量成分である還元的な分子から有機物が生成することは知られていましたが、微量成分の量や組成は理解が進んでいません。一方で、当時の地球の大気で主要成分と考えられている窒素や二酸化炭素から生命の材料となる有機物が生成する可能性については、放電による研究が報告されているのみで、非常に限定的と考えられていました。

東北大学大学院理学研究科の古川善博准教授、竹内悠人(研究当時、博士課程前期2年)、掛川武教授、寺田直樹教授、物質・材料研究機構の小林敬道主幹研究員、北京高圧科学研究センターの関根利守研究員の研究グループは、隕石が地球の海洋に衝突する際に起こる化学反応を実験室で模擬し、窒素と二酸化炭素が、水と隕石に含まれる主要な鉱物と反応することによって、タンパク質の材料であるアミノ酸が生成することを明らかにしました(図2)。衝突によってアンモニアを窒素源としてアミノ酸や核酸塩基が生成することは、本研究グループが2015年に発表していましたが、窒素は当時の地球の大気に大量に存在した成分と考えられており、今回の研究によって、生命誕生前の地球ではこれまで考えられていたものとは異なる、生命の材料分子の生成反応が起こっていたことを示しました。

また、太古の地球と同様に太古の火星も二酸化炭素と窒素を多量に含む大気で覆われ、液体の海が存在し、隕石が大量に衝突していた時期があったと考えられています。今回の研究では、当時の火星でも隕石の衝突によってアミノ酸が生成していた可能性を示しており、太古の火星でもタンパク質の材料が生成するという段階までは、生命誕生に向けた化学進化(生命誕生までの化学反応)が進んでいたことを示唆しています。

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図2:衝突反応模擬実験に使用した一段式火薬銃(NIMS設置)



謝辞

この研究は日本学術振興会科研費補助金(15H02144 and 18H03729)、自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター、東北大学学際科学フロンティア研究所のサポートを受けて行いました。



論文情報

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Impact-induced amino acid formation on Hadean Earth and Noachian Mars
著者:Yuto Takeuchi, Yoshihiro Furukawa*, Takamichi Kobayashi, Toshimori Sekine, Naoki Terada, Takeshi Kakegawa
(*corresponding author)
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-020-66112-8



問い合わせ先


<研究に関すること>
東北大学大学院理学研究科地学専攻
准教授 古川 善博(ふるかわ よしひろ)
電話:022-795-3453
E-mail:furukawa[at]tohoku.ac.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院理学研究科広報・アウトリーチ支援室
E-mail:sci-pr[at]mail.sci.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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