東北大学 大学院理学研究科・理学部

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中央アフリカ楯状地の地史を復元 〜最古(約19億年前)の超大陸の成長記録とその後の変遷〜

発表のポイント

● 最古の巨大な大陸(超大陸)(注1)の一部をなした中央アフリカ楯状地の地史を復元した

● タンザニア西端の花こう岩地帯は、約19億年前の最古の超大陸(コロンビア大陸)の縁で成長し、約6億年前に再び超大陸(ゴンドワナ大陸)の一部として安定化した

□ 東北大学ウェブサイト



概要

約46億年の地球の歴史において、約19億年前以降、巨大な大陸(超大陸)が複数回形成され、分裂と集合を繰り返してきました。超大陸の離合集散の過程を復元することは地球のダイナミックな動態を紐解く糸口になります。

東北大学大学院理学研究科地学専攻博士課程後期3年のガンバット アリアンセッセグさんと同東北アジア研究センター(兼務 理学研究科地学専攻)の辻森 樹教授らの国際研究チームは、地球上で最初に出現した超大陸「コロンビア(ヌーナ)超大陸」の一部を構成した中央アフリカ楯状地(コンゴ地塊)の成長の歴史を明らかにしました(図1)。約19億年前の花こう岩を作った大規模なマグマ活動の記録は日本列島の一部も含むユーラシア大陸東部にも顕著に残っており、現在複数の大陸に散らばる最古の超大陸の構成要素の紐付けを大きく前進させるものです。

本成果は、2021年1月27日Gondwana Research誌電子版にオープンアクセス論文として掲載されました。



参考図

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図1:約19億年前の最古の超大陸「コロンビア超大陸」の縁で大量の花こう岩を作った大規模なマグマ活動とその後の変遷を示したモデル。研究地域(タンザニア西端)の様子、約19億年前に形成した花こう岩の標本、年代測定したジルコンの電子顕微鏡写真も示した。



詳細な説明

地球の歴史において、超大陸の分裂と集合は地球表層付近の環境に大きな影響を与えてきました。約20億年前以降、少なくともコロンビア(ヌーナ)、ロディニア、ゴンドワナ、パンゲアの超大陸の存在が知られており、約2億年後の将来には現在の東アジアを中心とした超大陸が形成されることが予想されています。過去に存在した超大陸のなかでも、地球上で最初に出現したコロンビア超大陸の形成史を紐解く鍵は、世界の主要な大陸に存在する21〜17億年前の造山帯の地質と岩石に記録されており、主要大陸の楯状地(先カンブリア時代(注2)の基盤岩類が広く地表に分布する地域)で研究が進められてきました。主要大陸の一部に残る太古代(40〜25億年前)の基盤岩の多くは、かつて最古の超大陸の一部を構成していたと考えられていますが、アフリカ大陸中央の楯状地については、分厚い堆積物の被覆と、約6億年前の世界最大規模の造山運動による上書きの影響を受け、研究が十分に進んでいませんでした。

今回、東北大学大学院理学研究科地学専攻博士課程後期3年のガンバット アリアンセッセグさん、同東北アジア研究センター(兼務 同大学院理学研究科地学専攻)の辻森 樹教授、同学際科学フロンティア研究所助教のパストルガラン ダニエル助教(兼務 同大学院理学研究科地学専攻)らは、ダルエスサラーム大学のボニフェイス ネルソン教授、秋田大学大学院国際資源学研究科の青木翔吾助教、岡山理科大学基盤教育センターの青木一勝准教授との国際共同研究により、タンザニア西端タンガニーカ湖東部の高地の地質調査で採取された花こう岩の化学組成と年齢(ジルコンのウラン・鉛局所年代測定(注3)に基づく)を系統的に調べた結果、約19億年前から約6億年前までの地史が復元されました(図1)。また、従来バングウェウル地塊とウベンディアン造山帯として区別されてきた先カンブリア時代の基盤岩類の化学組成と年齢(約19億年前)が両者で共通すること、約19億年前のコロンビア超大陸縁辺のマグマ活動でバングウェウル地塊が大きく成長したこと、バングウェウル地塊が約6億年前のゴンドワナ超大陸を形成する際にタンザニア地塊に衝突し、中央アフリカ楯状地(コンゴ地塊)が安定化したこと、さらに約6億年前の造山運動の影響が局所的にしか残っていないこと、を明らかにしました。これらの結果は、アクセスの困難さからその規模に対して、他の世界の楯状地と比べてもっとも理解が遅れていた楯状地の1つである中央アフリカ楯状地の理解を進めました。さらに、約19億年前の花こう岩を作った大規模なマグマ活動の記録は日本列島の一部も含むユーラシア大陸東部にも顕著に残っており、現在複数の大陸に散らばる最古の超大陸の構成要素の紐付けを大きく前進させるものです。

本研究で得られた花こう岩試料の化学組成のデータは、最古の超大陸縁辺域のマグマ活動で大規模に成長した花こう岩(大陸地殻物質)の化学組成とその組成傾向を代表しうるデータとして参照が期待されます。近年、地球惑星科学のいわゆる岩石学・地球化学の分野でも、岩石に含まれる複数の元素の情報を数理・統計科学の手法でタイプ分けや成因・構造場の予想を行う試みが急速に広まっており、今後、花こう岩の化学組成を用いた成因解釈や大陸成長のパターン認識のためのデータ駆動型解析において、良質なリファレンスデータとして活用されることも期待されます。



用語の説明

(注1)超大陸
地球表層のほぼ全ての大陸が1つに集まってできる巨大な大陸。地球の歴史のなかの約19億年前以降、超大陸の形成と分裂が複数回繰り返されている。


(注2)先カンブリア時代
地球の歴史なかで顕生代カンブリア紀がはじまる5億4,100万年前以前の期間を指す地質時代。


(注3)ジルコンのウラン・鉛局所年代測定
岩石に含まれるジルコンという造岩鉱物に細い径(0.01−0.03 mm程度)に絞ったレーザーやイオンビームを当て、ウランと鉛の同位体の比を質量分析することでジルコンが成長した年齢を決定する方法。



助成

本研究はJSPS科研費JP15H05212、JP18H01299、JP19K04043の助成・支援を受けたものです。



論文情報

雑誌名:Gondwana Research

論文タイトル:Crustal evolution of the Paleoproterozoic Ubendian Belt (SW Tanzania) western margin: A Central African Shield amalgamation tale

URL :https://doi.org/10.1016/j.gr.2020.12.009

著 者:Ariuntsetseg Ganbat1, Tatsuki Tsujimori1,2, Nelson Boniface4, Daniel Pastor-Galán1,2,3, Shogo Aoki5,6, Kazumasa Aoki6

1 Department of Earth Science, Tohoku University, Aoba, Sendai 980-8578, Japan
2 Center for Northeast Asian Studies, Tohoku University, Aoba, Sendai 980-8576, Japan
3 Frontier Research Institute for Interdisciplinary Sciences, Tohoku University, Aoba, Sendai 980-8578, Japan
4 University of Dar es Salaam, Geology Department, P.O. Box 35052, Dar es Salaam, Tanzania
5 Graduate School of International Resource Sciences, Akita University, Akita 010-8502, Japan
6 Center for Fundamental Education, Okayama University of Science, Okayama 700-0005, Japan



問い合わせ先


東北大学東北アジア研究センター
担当 辻森 樹・パストルガラン ダニエル
電話 022-795-3614
E-mail tatsukix[at]tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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