東北大学 大学院理学研究科・理学部

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「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」を発刊
砂浜海岸に生息する生物に親しむための自然ガイドブックを無料配布

発表のポイント

● 仙台湾は砂浜海岸に囲まれていますが、東日本大震災以後は訪れる人が少なくなりました。

● 仙台湾の砂浜海岸に海を栄養源としたたくさんの生物が生息していることを明らかにしました。

● この仙台湾の自然豊かな砂浜海岸に足を運び親しんでもらうため、海浜植物や砂浜動物を紹介する一般向けの無料小冊子(ポケットブック)を作成しました。

● 荒浜の海辺の図書館と閖上の名取トレイルセンターにて無料配布します。

□ 東北大学ウェブサイト



概要

100万都市仙台には砂浜海岸がたくさんありますが、2011年の東日本大震災以後は、防潮堤などの工事のため、海岸に訪れる人が少なくなりました。砂浜海岸は、釣り、サーフィン、海水浴の場だけではなく、様々な生物の生活場所です。一方で、海岸には沢山のゴミなどが漂着します。

東北大学大学院生命科学研究科水圏生態分野の占部城太郎教授らの研究チームは、総合地球環境研究所や民間企業と共同で砂浜海岸に生息する生物やゴミの漂着量などを調べ、その成果の一部を「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」という一般向けの小冊子にまとめました。このポケットブックは、仙台湾の砂浜海岸に生息する生物や漂着物を紹介するとともに、震災前の2003年に市民団体が作成した、福島県新地から雄勝町に至る仙台湾沿岸の自然を俯瞰する、仙台湾沿岸海岸絵巻も収録しています。仙台湾の砂浜海岸を訪ね、自然を観察したり散歩したりする際のガイドブックとして、1000部限定で無料配布いたします。



詳細な説明

研究の背景

仙台湾は砂浜に囲まれています。100万都市仙台には砂浜海岸が沢山ありますがその生態系の特徴については良く分かっていませんでした。砂浜海岸は、釣り、サーフィン、海水浴の場だけではなく、海浜植物や小動物など様々な生物の生活場所です。その詳細を明らかにするため、東北大学大学院生命科学研究科水圏生態分野の占部城太郎教授らの研究チームは、総合地球環境研究所と共同で砂浜海岸に生息する生物やその生活を支えている栄養基盤について調べました。その結果、砂浜海岸に生活している昆虫や甲殻類などの小動物では、その生活に必要な栄養源の20~50%は海から打ち上げられる海藻に由来していることが分かりました。この結果は、砂浜と海は一続きの生態系であり、海岸に生息する多様な生物は、仙台湾の豊かな自然の恵みに依存して生活していることを物語っています。

生物調査と合わせて、研究チームは、民間企業と共同でドローンによる空撮写真からゴミの漂着量も調べました。その成果、仙台湾新浜での海岸漂着物の7割は流木や海藻でしたが、3割はペットボトルや空き缶などの漂着ゴミであることが分かりました。

仙台湾沿岸には、東日本大震災後に7.2mの防潮堤が建設されました。このため、海岸に近寄りがたいと感じている市民もいます。しかし、仙台湾砂浜海岸での研究から、砂浜には漂着海藻などの海からの恵みにより昆虫や甲殻類などの多様な小動物が海浜植物とともに生活していることがわかりました。この豊かな自然を再発見し、生息生物や海岸漂着ゴミに広く関心を持ってもらうため、研究チームは民間企業と共同で「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」という一般向けの小冊子を作成しました。多くの方に仙台湾の砂浜海岸を探訪し親しんでもらうため、このポケットブックには、震災前の2003年に市民団体 「名取ハマボウフウの会"」が作成した、福島県新地町から宮城県雄勝町(現石巻市)に至る仙台湾沿岸の自然や生息生物の様子を俯瞰する、仙台湾沿岸海岸絵巻も収録しています。

「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」は、砂浜海岸の自然を楽しむガイドブックです。1000部まで、下記にて無料で配布いたします。ただし部数に限りがあるため、ポケットブックはなくなり次第配布終了となります。

配布場所: 

仙台市若林区荒浜 海辺の図書館
名取市閖上 みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンター



今後の展開

この小冊子の発行・配布を契機に、仙台湾の砂浜海岸に足を運び、生息生物や漂着ゴミなどに関心を持っていただく方が増え、仙台湾の自然豊かな砂浜生態系が保全されることを期待しています。

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図1:仙台湾の砂浜生物ポケットブックには、砂浜海岸に生息している植物や動物の写真や解説の他、漂着物なども紹介しています。


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図2:ポケットブックに収録されている、2003年に作成された仙台湾沿岸海岸絵巻(抜粋)



謝辞

「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」は名取ハマボウフウの会の協力と株式会社復建技術コンサルタントの研究助成により発行されました。またポケットブックの基礎となった砂浜生態系研究は、住友財団環境研究助成及び総合地球環境研究所同位体環境学共同研究助成により行われました。



参考論文

「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」の基礎となった研究

タイトル:砂浜生態系における栄養基盤としての海起源と陸起源有機物の相対的重要性
著者:塩澤直人・柚原剛*・由水千景・冨樫博幸・陀安一郎・占部城太郎
*筆頭著者:東北大学大学院生命科学研究科 研究員 柚原剛
掲載誌応用生態工学, 25(2) 115-128 (2023)

タイトル:UAV(ドローン)を用いた調査により明らかとなった仙台湾南部海岸における漂着物の時空間動態について
著者:鷲田なぎさ・佐藤高広*・鈴木碩通・占部城太郎
*筆頭著者:株式会社復建技術コンサルタント 環境部 部長 佐藤高広
掲載誌応用生態工学, 25(2) 129-140 (2023)



問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科[web
兼担 東北大学理学部生物学科
教授 占部 城太郎(うらべ じょうたろう)
TEL:022-795-6681
E-mail: urabe[at]tohoku.ac.jp

<冊子の配布に関すること>
株式会社復建技術コンサルタント
「仙台湾の砂浜生物ポケットブック」係
担当:環境部 佐藤
TEL:022-262-1234
E-mail: info[at]sendai.fgc.co.jp

<報道に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋 さやか(たかはし さやか)
TEL: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr[at]grp.tohoku.ac.jp
*[at]を@に置き換えてください



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